RICEスコアリング

英語名 RICE Scoring
読み方 ライス スコアリング
難易度
所要時間 30分〜1時間
提唱者 Intercom
目次

ひとことで言うと
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Reach(リーチ)× Impact(インパクト)× Confidence(確信度)÷ Effort(工数) でスコアを算出し、限られたリソースでどの施策を優先すべきかを定量的に判断するフレームワーク。「声の大きい人の意見」や「直感」ではなく、データに基づいた優先順位づけを実現する。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
Reach(リーチ)
一定期間内にその施策が影響を与えるユーザー数のこと。「1四半期あたりの対象ユーザー数」で統一するのが一般的。
Impact(インパクト)
個々のユーザーに対する影響度を5段階(3/2/1/0.5/0.25)で評価した値のこと。ユーザーデータを根拠に判断する。
Confidence(コンフィデンス)
ReachとImpactの見積もりに対する自信の度合いをパーセンテージで表した値のこと。データ裏付けが弱い施策ほど低くなる。
Effort(エフォート)
施策の実現に必要な開発・デザイン・QA等を含む総工数のこと。「人月」や「人週」で見積もる。
RICEスコア(RICE Score)
R×I×C÷Eで算出される施策の優先度を表す数値のこと。絶対値ではなく施策間の相対比較に使う。

RICEスコアリングの全体像
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4要素から算出するRICEスコアの構造
R: Reach影響を受けるユーザー数例: 5,000人/四半期I: Impact個人への影響度5段階で評価3/2/1/0.5/0.25C: Confidence見積もりへの自信の度合い100%/80%/50%/20%E: Effort必要な総工数(人月・人週)例: 3人月××÷RICE スコア= R × I × C ÷ Eスコアが高い施策ほど「少ない工数で多くのユーザーに大きな影響を与えられる」施策A: 5,000×2×80%÷3 = 2,667高工数だがインパクトあり施策B: 10,000×1×50%÷1 = 5,000低工数で高リーチ → 優先
RICEスコアリングの進め方フロー
1
Reach見積もり
対象ユーザー数をアクセスログから算出する
2
Impact評価
ユーザーへの影響度を5段階でチーム合意する
3
Confidence設定
見積もりの確信度をデータ根拠に基づき設定する
4
Effort見積もり
開発・デザイン・QAを含む総工数を人月で算出する
スコア比較&議論
スコア順に並べ、戦略的判断も加味して優先順位を決定する

こんな悩みに効く
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  • やりたい施策が多すぎて、どれから手をつければいいかわからない
  • 機能要望の優先順位が「声の大きい人」の意見で決まってしまう
  • 開発リソースが限られているのに、すべてを同時にやろうとしてしまう

基本の使い方
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ステップ1: R(Reach)リーチを見積もる

一定期間内に、その施策が影響を与えるユーザー数を見積もる。

  • 単位を統一する: 「1四半期あたりのユーザー数」が一般的
  • 実データに基づく: アクセスログ、利用状況データから算出
  • 例: 「検索機能改善」→ 月間で検索機能を使うユーザーが5,000人 → Reach = 5,000/月

ポイント: 「全ユーザーに影響する」と雑に見積もらない。実際にその機能に触れるユーザー数を正確に把握する。

ステップ2: I(Impact)インパクトを評価する

個々のユーザーに対する影響度を5段階で評価する。

  • 3 = Massive: ユーザー体験を根本的に変える
  • 2 = High: 大きな改善
  • 1 = Medium: そこそこの改善
  • 0.5 = Low: 小さな改善
  • 0.25 = Minimal: ほぼ気づかないレベル

この評価は主観が入りやすいので、ユーザーインタビューやアンケートの結果を根拠にする。「自分たちが大事だと思うか」ではなく「ユーザーにとってどれだけ重要か」で判断する。

ステップ3: C(Confidence)確信度を設定する

リーチとインパクトの見積もりに対する自信の度合いをパーセンテージで表す。

  • 100%: データに裏付けられている
  • 80%: おおむね確信がある(一部仮説)
  • 50%: 半々。やってみないとわからない
  • 20%以下: ほぼ勘

確信度が低い施策は、まず小規模な検証(A/Bテスト、ユーザーインタビュー)を行って確信度を上げるという選択肢もある。

ステップ4: E(Effort)工数を見積もり、スコアを算出する

施策に必要な工数を「人月」や「人週」で見積もる。デザイン、開発、QAなどすべて含める。

RICEスコア = (Reach × Impact × Confidence) ÷ Effort

例:

  • 施策A: (5,000 × 2 × 80%) ÷ 3人月 = 2,667
  • 施策B: (10,000 × 1 × 50%) ÷ 1人月 = 5,000
  • 施策C: (2,000 × 3 × 100%) ÷ 6人月 = 1,000

→ 施策B > 施策A > 施策C の順に優先度が高い。

スコアは絶対的な答えではなく、議論のための材料。スコアの大小だけで機械的に決めず、戦略的な判断も加味する。

具体例
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例1:タスク管理SaaSの次の四半期のロードマップを決める

チームが検討中の4つの施策をRICEスコアで比較する。

施策Reach(月)ImpactConfidenceEffort(人月)RICEスコア
モバイルアプリ対応8,000280%43,200
Slack連携3,0003100%24,500
ダッシュボード刷新10,000150%31,667
CSV一括インポート5002100%0.52,000

結果: Slack連携(4,500)が最優先。モバイルアプリ対応(3,200)が次点。

議論のポイント:

  • ダッシュボード刷新はReachは最大だがConfidenceが低い → まずユーザーインタビューで確信度を上げてから再評価
  • CSV一括インポートは少数だが確実なニーズ。工数が少ないので「ついでにやる」候補
  • モバイルアプリは戦略的に重要(競合が対応済み)なので、スコア以外の要素も考慮して優先度を上げる判断もあり

RICEスコアだけで自動的に決まるわけではないが、「なぜこの順番なのか」を数字で説明できることが最大の価値

例2:ECサイトのグロースチームが施策を絞り込む

月商8,000万円のファッションECサイト。グロースチーム3名で次月の施策を5つの候補から2つに絞る。

施策Reach(月)ImpactConfidenceEffort(人週)RICEスコア
商品レコメンド改善120,000280%632,000
チェックアウトUI改善45,000390%340,500
お気に入りリスト共有15,000150%23,750
配送日時指定機能80,0000.5100%140,000
サイズレコメンドAI30,000230%82,250

結果: チェックアウトUI改善(40,500)と配送日時指定(40,000)が僅差でトップ2に。

サイズレコメンドAIの判断: スコアは最低だが、Confidenceが30%と低いことが原因。技術検証(PoC)を2週間で実施し、Confidenceが80%以上に上がれば来四半期に再評価する方針とした。

**整理すると、スコアだけでなく「Confidenceを上げるアクション」を次ステップとして定義できるのがRICEの強み。数字が低い=やらない、ではなく「まず検証する」という選択肢が生まれる

例3:地方の医療予約システムで開発優先順位を整理する

従業員12名のヘルスケアスタートアップ。クリニック向け予約システムの改善要望が30件以上溜まり、開発チーム4名のリソースを最適配分する必要があった。

上位5施策のRICEスコア:

施策Reach(月)ImpactConfidenceEffort(人月)RICEスコア
LINE予約連携2,000380%22,400
予約リマインド自動化3,5002100%17,000
電子カルテ連携800350%5240
患者ポータル1,500260%4450
待ち時間表示4,000190%0.57,200

結果: 待ち時間表示(7,200)と予約リマインド自動化(7,000)を優先実施。

ステークホルダーとの合意: 院長から強い要望があった電子カルテ連携は、スコア表を見せて「Confidenceが50%なので、まずPoC(2週間)で技術的実現性を確認しましょう」と提案。「声の大きいステークホルダー」に対して数字で対話できた

3ヶ月後: 待ち時間表示導入後、患者のクリニック滞在時間の体感不満が42%減少。予約リマインドで無断キャンセル率が15%→4%に低下。小さな工数で大きな効果を出す施策から手をつけた結果、顧客満足度が急速に向上した

やりがちな失敗パターン
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  1. Impactを全部「High」にする — 自分が推したい施策のインパクトを高く見積もりがち。ユーザーデータやフィードバックを根拠にし、チームで合意して評価する
  2. Effortを過小評価する — 開発だけでなく、デザイン・QA・ドキュメント・サポート対応の工数も含める。「思ったより大変だった」を防ぐ
  3. スコアを神聖視する — RICEはあくまで意思決定の補助ツール。戦略的な重要性、技術的負債の解消、法規制対応など、スコアに反映されない要素も考慮する
  4. 一度評価したら更新しない — 市場環境やユーザーデータは変わる。四半期ごとにRICE値を再評価し、Confidenceが上がった施策は優先度を引き上げる運用ルールを設ける

まとめ
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RICEスコアリングは「Reach × Impact × Confidence ÷ Effort」というシンプルな式で、施策の優先順位を定量的に比較するフレームワーク。完璧な数字を出すことが目的ではなく、「なぜこれを先にやるのか」をチームで議論し、合意するための共通言語を提供する。直感に頼らない意思決定の第一歩として、バックログ整理の場で試してみよう。