プレトタイピング

英語名 Pretotyping
読み方 プレトタイピング
難易度
所要時間 数時間〜数日
提唱者 Alberto Savoia (Google)
目次

ひとことで言うと
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作る前に「そもそも人は欲しがるのか?」を最小コストで検証する手法。プロトタイプ(試作品)よりもさらに手前の段階で、フェイクや簡易的な仕掛けを使って需要の有無をデータで確かめる。Google出身のAlberto Savoia(アルベルト・サヴォイア)が提唱した。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
Pretotype(プレトタイプ)
製品を実際に作らず、需要があるかを検証するための疑似体験や仕掛けのこと。「Pre(前の)+ Prototype(試作品)」を組み合わせた造語。
XYZ仮説
X%の人がYの状況でZをする」という形式で需要仮説を定量化する書き方。曖昧な「ニーズがある」を具体的な数値目標に変換する手法。
スキン・イン・ザ・ゲーム(Skin in the Game)
ユーザーが時間・お金・個人情報など何らかのコストを払う行為を指す。「いいね」や「興味ある」ではなく、実際に身銭を切る行動こそが需要の証拠になるという考え方。
YODA(Your Own Data)
自分自身のデータ。他社の成功事例や市場レポートではなく、自分のターゲットから直接集めた一次データで判断すべきという原則。

プレトタイピングの全体像
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プレトタイピング:作る前に需要を検証する4つのステップ
プレトタイピングの領域アイデア「こんな製品どうだろう?」まだ思いつきの段階XYZ仮説を立てるX%の人がYの状況でZをするだろうプレトタイプで検証フェイク・簡易な仕掛けで需要を行動データで計測YODA ─ 自分のデータ「いいね」ではなく身銭を切った行動で判断Go / No-Go 判断データが基準を超えたら開発へ超えなければピボットか撤退Build it beforeyou build it← ここからプロトタイプ →
プレトタイピングの進め方フロー
1
XYZ仮説
需要を定量的な仮説に変換する
2
プレトタイプ設計
最小コストで検証できる仕掛けを選ぶ
3
実験実行
行動データを集める(口先の感想ではなく)
Go / No-Go
データで判断し、進むか撤退か決める

こんな悩みに効く
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  • 新しいアイデアに自信があるが、本当に需要があるのか確信が持てない
  • プロトタイプを作る時間もお金もないのに、上司から「データで示せ」と言われている
  • 過去に「完成させてからローンチ → 誰にも使われなかった」を経験した

基本の使い方
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XYZ仮説を立てる

「いいアイデアだと思う」を定量的な仮説に変換する。

  • X: ターゲット層のうち何%が反応するか(例: 20%)
  • Y: どんな状況・文脈で(例: ランチタイムにオフィス近くで)
  • Z: どんな行動をとるか(例: 予約ボタンを押す)

悪い仮説: 「このアプリはニーズがある」 良い仮説: 「オフィスワーカーの**15%**がランチ前に弁当予約ボタンを押す」

ポイントは、行動で書くこと。「欲しいと思う」「興味を示す」ではなく「クリックする」「メールアドレスを登録する」「お金を払う」。

プレトタイプの種類を選んで設計する

アイデアに合った検証手法を選ぶ。代表的な手法は以下のとおり。

手法やり方向いている場面
フェイクドア存在しない機能のボタンやLPを作り、クリック率を計測Web・アプリ系の新機能
メカニカルターク裏側を人力でまかないつつ、表面上は完成品のように見せる自動化サービスの需要検証
ピノキオ機能しないモックアップを作り、反応を観察物理プロダクト
ワンナイトスタンド一夜限りの限定イベントとして実施飲食・体験型サービス
インフィルトレーター既存のプラットフォームに載せてテストマーケットプレイス型

コストは数千円〜数万円に抑える。作り込みすぎたら、それはもうプロトタイプ。

実験を実行してYODAを集める

設計したプレトタイプを実際に展開し、行動データ(YODA)を集める。

集めるべきは「スキン・イン・ザ・ゲーム」のあるデータ。

強いシグナル(信頼できる)弱いシグナル(あてにならない)
お金を払った「買いたい」と言った
メールアドレスを登録した「便利そう」と言った
予約した・注文したSNSで「いいね」した
友人に紹介したアンケートで「使いたい」に丸をつけた

実験期間は1〜2週間が目安。短すぎるとデータ不足、長すぎると時間の無駄になる。

データで Go / No-Go を判断する

XYZ仮説で設定した基準値と実データを比較し、次のアクションを決める。

  • 基準を超えた → Go: プロトタイプ開発に進む
  • 基準に届かない → ピボットか撤退: 仮説を修正して再実験するか、アイデアを捨てる
  • 判断がつかない → 実験を改善して再実行: サンプルサイズが足りない、検証方法が甘い可能性

ここで大事なのは、感情ではなくデータで決めること。「せっかく考えたのに…」という気持ちは横に置く。

具体例
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例1:個人のパン屋がグルテンフリー商品の需要を探る

東京・世田谷で個人経営のパン屋を営むオーナーが「グルテンフリーのパンを出したい」と考えた。ただし、米粉の仕入れコストは小麦粉の3倍。売れなければ赤字になる。

XYZ仮説: 「来店客の**10%**が、グルテンフリーパンの価格(1個480円)を見ても注文する」

プレトタイプ(フェイクドア方式): 店頭のメニューボードに「グルテンフリー食パン 480円」を追加。注文が入ったら「すみません、今日は売り切れです。入荷したらLINEで通知しますか?」とLINE登録を促す。

結果: 2週間で来店客約400人のうち52人(13%)が注文を試み、うち38人がLINE登録した。仮説の10%を超えたため、米粉の仕入れと試作に着手。LINE登録者に先行販売したところ、初週で74個を販売した。

例2:SaaS企業が新機能の開発可否を判断する

従業員120名のプロジェクト管理SaaS企業で、PMが「AIによるタスク自動振り分け機能」を提案。開発には4人月かかる見込み。CTOは「需要がわからないものに4人月は出せない」と回答。

XYZ仮説: 「既存ユーザーの**5%**が、AI自動振り分け機能のベータ版に申し込む」

プレトタイプ(フェイクドア方式): ダッシュボードに「AIタスク振り分け(β)」ボタンを追加。クリックすると「現在開発中です。ベータテスターに登録しますか?」というフォームが表示される。

結果: 3週間でDAU 2,800人中312人(11.1%)がボタンをクリック。ベータ登録は189人(6.7%)。仮説の5%を超えたため、まず2人月で簡易版を開発する方針に切り替えた。フルスペック版を作らなかったことで、2人月分のリソースを別機能に回せた。

例3:地方の温泉旅館がワーケーションプランを試す

群馬県の温泉旅館(客室18室)の若女将が、平日稼働率32%を改善するためにワーケーションプランを検討。ただしWi-Fi増強とコワーキングスペース設置に350万円の投資が必要になる。

XYZ仮説: 「都内IT企業の担当者の**8%**が、1泊2日ワーケーション体験プランに申し込む」

プレトタイプ(ワンナイトスタンド方式): Wi-Fi増強の代わりにポケットWi-Fiを5台レンタル(月額1.5万円)。宴会場の一角にテーブルと電源タップを並べた仮設コワーキングスペースを設置。Peatixで「温泉ワーケーション体験会 1泊2食付き9,800円」を限定10名で募集。

結果: SNSでの告知リーチ約600人に対し、申込23人(3.8%)。定員の2倍以上が集まったため追加開催を実施。参加者アンケートでは「月1で来たい」が78%、「会社の福利厚生として提案したい」が65%。若女将はまず350万円のうちWi-Fi増強の80万円だけを先行投資し、コワーキングスペースは仮設のまま3か月間のデータを集めることにした。

やりがちな失敗パターン
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  1. プレトタイプなのに作り込みすぎる — 検証に3か月かけたら本末転倒。プレトタイプは数日〜2週間で結果が出るものにする。完璧な仕掛けは必要ない
  2. 口先のフィードバックを信じる — 「欲しい!」「使いたい!」という声は当てにならない。メールアドレス登録、事前注文、クリックなど行動データだけを根拠にする
  3. 基準値を決めずに実験を始める — 「反応が良かったら進める」では、何をもって良いとするかが曖昧になり、結局感覚で判断してしまう。XYZ仮説で数値目標を先に決める

まとめ
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プレトタイピングは、製品を作る前に「そもそも需要はあるのか」を最小コストで検証する手法。XYZ仮説で基準値を定め、フェイクドアやワンナイトスタンドといった手法で行動データを集め、データに基づいてGo/No-Goを判断する。「作ったのに誰も使わなかった」という最大の失敗を防ぐために、プロトタイプよりも手前のこのステップを踏むことが、結果的に時間とコストの節約になる。