メイク・オア・バイ分析

英語名 Make or Buy Decision
読み方 メイク オア バイ ディシジョン
難易度
所要時間 1〜3日(見積り・比較含む)
提唱者 経営学・調達管理の古典的手法
目次

ひとことで言うと
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ある業務・機能・部品を**自社で作るか(Make)、外部から買うか(Buy)**を、コスト・品質・スピード・戦略的重要性の4つの視点で比較し、最適な選択を導く意思決定フレームワーク。「安いから外注」「コアだから内製」という短絡的な判断ではなく、総合的なメリット・デメリットを見える化して決める。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
Make(内製)
自社のリソース(人材・設備・時間)を使って社内で開発・製造する選択肢。ノウハウが蓄積されるが、固定費が増える。
Buy(外注・調達)
外部のベンダーやサプライヤーから購入・委託する選択肢。立ち上がりが早いが、依存リスクが生じる。
総所有コスト(TCO)
購入価格だけでなく、導入・運用・保守・廃棄までを含めたライフサイクル全体のコスト。外注の「見えないコスト」を可視化するために使う。
コアコンピタンス
自社の競争優位の源泉となる核心的な能力。コアに関わる領域は内製が原則、非コアは外注候補になる。

メイク・オア・バイ分析の全体像
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メイク・オア・バイ分析:4つの評価軸
Make or Buy?4軸で総合判断する1. コストTCO(総所有コスト)で比較する2. 品質・柔軟性仕様変更への対応力品質管理のしやすさ3. スピード市場投入までの時間立ち上がりの早さ4. 戦略的重要性コアコンピタンスか競争優位に直結するかコストだけでなく、4つの軸の総合評価で意思決定する
メイク・オア・バイ判断のプロセス
1
対象の特定
内製/外注を検討する業務・機能を明確にする
2
4軸で評価
コスト・品質・スピード・戦略性を比較
3
リスク評価
依存リスク・ノウハウ流出・契約リスクを確認
4
判断と実行
Make/Buyを決定し移行計画を策定

こんな悩みに効く
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  • 新機能の開発を自社でやるかSaaSを導入するかで、チーム内の意見が割れている
  • 外注コストが年々上がっているが、内製に切り替えるべきか判断できない
  • 「コアだから内製」と言われるが、本当にコアかどうかの基準が曖昧

基本の使い方
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内製と外注それぞれのコストをTCOで比較する

初期費用だけでなく、運用・保守・人件費・機会費用を含めた総コストで比較する。

  • 内製コスト: 開発人件費+設備投資+保守運用+教育訓練+管理コスト
  • 外注コスト: 契約費用+導入・移行費用+カスタマイズ費用+コミュニケーションコスト+ベンダーロックインのリスクコスト
  • 3〜5年のスパンで比較するのが原則(初年度だけの比較は判断を誤る)
品質・スピード・戦略的重要性を加味する

コストが同程度の場合、他の3軸で判断が分かれる。

  • 品質: 仕様変更に素早く対応できるのはどちらか。品質基準を自社でコントロールできるか
  • スピード: 市場投入までの時間はどちらが短いか。特にスタートアップでは「間に合うかどうか」が最優先の場合がある
  • 戦略的重要性: その領域は自社の差別化の源泉か。コアコンピタンスに直結するなら内製、非コアなら外注が基本方針
リスクを評価し最終判断する

Make/Buyそれぞれのリスクを洗い出し、許容できるかどうかで最終決定する。

  • 内製のリスク: 開発の遅延、技術的負債の蓄積、人材の離脱
  • 外注のリスク: ベンダー依存、ノウハウのブラックボックス化、契約終了時の移行コスト
  • 判断は白黒ではない。「コア部分は内製、周辺は外注」というハイブリッドも有力な選択肢

具体例
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例1:飲食チェーンの予約システム内製 vs SaaS導入

状況: 15店舗を展開する飲食チェーン。紙の予約台帳をデジタル化したい。SaaS(月額1店舗5,000円)を使うか、自社で予約システムを開発するかで迷っている

4軸評価:

評価軸Make(内製)Buy(SaaS)
コスト(3年TCO)開発費500万+保守年120万=860万円月7.5万×36ヶ月=270万円
品質・柔軟性自社の業務フローに完全対応汎用的で一部機能が合わない
スピード開発に6ヶ月即日導入可能
戦略的重要性予約管理はコア業務ではない

判断: Buy(SaaS導入)。コストが3分の1以下で即日使えるうえ、予約管理は差別化の源泉ではない。ただし、将来的に顧客データを活用したマーケティングが重要になるなら、データのエクスポート条件を契約で確保した。

例2:SaaS企業の課金基盤をどう作るか

状況: ARR 5億円のBtoB SaaS。サブスクリプションの課金処理をStripe(外部サービス)に依存しているが、取引額の2.5%が手数料として出ていく。年間1,250万円

4軸評価:

評価軸Make(自社課金基盤)Buy(Stripe継続)
コスト(3年)開発1,500万+保守年300万=2,400万円手数料1,250万×3年=3,750万円
品質・柔軟性複雑な料金体系にも対応可能標準的な課金モデルなら十分
スピード8ヶ月既に稼働中
戦略的重要性課金は事業の根幹だがコア技術ではない

判断: ハイブリッド。Stripeをベースに使い続けつつ、独自の請求管理レイヤーだけを内製する。手数料は許容するが、課金ロジック(プラン変更・按分計算・請求書発行)は自社でコントロール。3年TCOは2,000万円程度で、フルMakeよりも安く、フルBuyよりも柔軟性がある。

例3:地方の製造業が検査工程を自動化するケース

状況: 従業員60名の金属加工工場。目視検査を行う熟練工が2名いるが、1名が来年定年退職。画像認識AIによる自動検査を導入したい

4軸評価:

評価軸Make(自社AI開発)Buy(検査AI SaaS)
コスト(3年)AIエンジニア採用+開発=3,000万円超年間480万×3年=1,440万円
品質・柔軟性自社製品に完全最適化できる汎用モデルで精度90%。自社データで追加学習可能
スピードエンジニア採用から1年以上3ヶ月で稼働
戦略的重要性品質は差別化の源泉だが、AI技術自体はコアではない

判断: Buy。AI技術は自社のコアコンピタンスではなく、採用の難易度も高い。SaaSの精度90%を起点に、自社データの追加学習で95%まで改善する方針とした。熟練工の退職前に稼働を間に合わせることが最優先で、スピードの観点からもBuyが合理的だった。

やりがちな失敗パターン
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  1. 初期コストだけで比較する — SaaSの月額は安く見えるが3年で積み上がると高額になることもある。逆に内製の初期投資は高く見えるが長期で回収できる場合もある。必ずTCOで比較する
  2. 「全部内製」にこだわる — 技術力の高いチームほど「自分たちで作りたい」と考えがちだが、非コア領域まで内製するとリソースが分散する。コアに集中するための外注という発想が重要
  3. 外注のリスクを過小評価する — ベンダーが値上げしてきた、サービスが終了した、仕様変更に対応してくれない——外注は「依存」のリスクと隣り合わせであることを忘れない
  4. 一度決めたら見直さない — 事業規模や技術環境は変化する。外注で始めたものを規模拡大後に内製に切り替える、あるいはその逆のタイミングを定期的に検討する

まとめ
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メイク・オア・バイの判断でもっとも危険なのは、1つの軸(たいていはコスト)だけで決めてしまうことだ。コスト・品質・スピード・戦略的重要性の4軸で評価し、さらにリスクを加味することで、納得感のある意思決定ができる。迷ったときの原則は「コアコンピタンスに直結する領域は内製、それ以外は外注」。そして白か黒かではなく、ハイブリッドという第三の選択肢も常に検討に入れておくとよい。