カスタマーエフォートスコア(CES)

英語名 Customer Effort Score
読み方 カスタマー エフォート スコア
難易度
所要時間 1〜2時間(設計)+ 継続的に計測
提唱者 マシュー・ディクソン他(CEB/Gartner)
目次

ひとことで言うと
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顧客に**「この操作/問い合わせはどれくらい簡単でしたか?」と1問だけ聞き、体験の「楽さ」を7段階で測定する指標。NPS(推奨度)よりも解約予測の精度が高い**ことが研究で示されており、「感動させる」より「苦労させない」ことの重要性を教えてくれる。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
CES(Customer Effort Score)
顧客が特定の体験で感じた労力の大きさを7段階で測定する指標。スコアが高いほど「簡単だった」ことを意味する。
NPS(Net Promoter Score)
「このプロダクトを友人に勧めますか?」と聞く推奨度指標。CESとは異なり、全体的なロイヤルティを測るが改善ポイントの特定には弱い。
タッチポイント
顧客とプロダクトが接触するすべての接点のこと。サインアップ、初期設定、サポート問い合わせなど、CES測定の対象となる。
CSAT(Customer Satisfaction Score)
特定の体験に対する満足度を測る指標。CESが「楽さ」を測るのに対し、CSATは「満足感」を測る。CESと併用すると多角的な分析が可能。

カスタマーエフォートスコアの全体像
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CES:タッチポイント別に労力を測定し、摩擦ポイントを改善するプロセス
CES調査「この操作は簡単でしたか?」7段階スコア分析低スコアの接点を特定セグメント別に比較摩擦削減ステップ数削減セルフサービス強化継続モニタリング週次で推移を追跡新機能リリース後に計測1〜3 要改善4〜5 改善余地あり6〜7 良好
1
CES質問を設計
体験直後に「どれくらい簡単でしたか?」の1問を7段階で聞く
2
スコアを分析
タッチポイント別・セグメント別にスコアを比較し、摩擦ポイントを特定
3
労力を減らす施策を実行
ステップ数削減、情報の事前入力、セルフサービス強化などで摩擦を除去
継続的にモニタリング
週次で推移を追い、新機能リリース後にも測定。CES 6.0以上を目標に改善を回す

こんな悩みに効く
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  • NPSは測っているが、具体的に何を改善すればいいかわからない
  • サポート対応後の満足度が低いが原因がつかめない
  • プロダクトの使い勝手が悪いと言われるが、どこが悪いか特定できない

基本の使い方
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ステップ1: CESの質問を設計する

CESの基本形はシンプルな1問。

質問文: 「〇〇はどれくらい簡単でしたか?」

7段階スケール:

  1. 非常に難しい
  2. 難しい
  3. やや難しい
  4. どちらでもない
  5. やや簡単
  6. 簡単
  7. 非常に簡単

測定タイミング: 特定の体験の直後に聞く。後日聞くと記憶が薄れて精度が下がる。

主な測定ポイント:

  • サインアップ完了後
  • 初期設定完了後
  • サポート問い合わせ解決後
  • 主要機能の初回利用後
  • 支払い・プラン変更後
ステップ2: スコアを計算して分析する

CESスコアの計算と解釈。

計算方法: 全回答の平均値(7点満点)

  • 6.0以上: 優秀。体験がスムーズ
  • 5.0〜5.9: 普通。改善余地あり
  • 5.0未満: 要改善。摩擦が大きい

深掘り分析:

  • スコアが低い接点を特定: どのタッチポイントでスコアが低いか
  • セグメント別に比較: 新規 vs 既存、プラン別、デバイス別
  • 自由記述を併用: 「何が大変でしたか?」の1問を追加すると具体的な改善点が見える

CESと解約の関係: スコアが1〜3(難しい)と回答した顧客の96%は将来的に不誠実な行動(解約・悪い口コミ)を取るという研究結果がある。

ステップ3: 「労力を減らす」施策を実行する

CESが低いタッチポイントに対して、顧客の労力を減らす改善を行う。

労力を減らす典型的な施策:

  • ステップ数の削減: 5クリック必要だった操作を2クリックに
  • 情報の事前入力: 過去の入力内容を自動補完
  • セルフサービスの充実: FAQやヘルプセンターで自己解決できるようにする
  • チャネルの統一: 問い合わせ時に「別の窓口に転送」されないようにする
  • 待ち時間の削減: チャットボットで即時回答できる質問を自動化

重要な発見: 顧客ロイヤルティの向上には「期待を超える感動体験」より「期待を下回らないスムーズな体験」のほうが効果的。苦労させない=最大の顧客体験戦略。

ステップ4: 継続的にモニタリングする

CESは一度測って終わりではなく、継続的にトラッキングする。

運用のコツ:

  • 週次でダッシュボードを確認: スコアの推移を追う
  • 新機能リリース後に必ず測定: 新機能がユーザーの労力を増やしていないか検証
  • サポートチームと共有: CESが低い問い合わせパターンを改善の優先課題に
  • NPS・CSATと組み合わせる: CES(労力)+ NPS(推奨度)+ CSAT(満足度)の3指標で多角的に測定

目標設定: 「全タッチポイントのCESを6.0以上にする」のような数値目標を設定する。

具体例
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例1:SaaSのサポート体験CES改善

クラウド会計ソフト(月額利用者8,000社)が「サポート問い合わせ後のCESが3.8」と低い問題を改善した事例。

CES調査結果:

タッチポイントCES判定
サインアップ6.2良好
初期設定4.5要改善
日常利用5.8普通
サポート問い合わせ3.8深刻
プラン変更5.5普通

サポートCESが低い原因(自由記述分析):

  • 「チャットで問い合わせたのにメールで返信が来た。2日後」(40%)
  • 「同じ説明を3回した。担当者が変わるたびに最初から」(25%)
  • 「FAQの記事が古くて画面と合っていない」(20%)

施策:

  1. チャットで問い合わせたらチャットで回答を徹底(チャネル統一)
  2. 問い合わせ履歴を担当者間で共有(引き継ぎ改善)
  3. FAQを最新版に更新し、検索精度を向上(セルフサービス強化)

結果(2ヶ月後):

  • サポートCES: 3.8 → 5.9
  • 問い合わせ後の解約率: 12% → 4%
  • サポート対応時間: 平均24時間 → 平均3時間

「チャネルを統一する」だけで解約率が1/3に。感動体験より摩擦の除去がロイヤルティを作った。

例2:フィットネスアプリの初期設定CES改善

月間アクティブユーザー15万人のフィットネスアプリ。初期設定のCESが3.2と深刻で、登録後3日以内の離脱率が65%。

原因分析:

設定ステップ離脱率CES
アカウント作成8%5.9
プロフィール入力(12項目)28%3.0
目標設定15%4.2
デバイス連携22%2.8
初回メニュー作成12%4.5

施策:

  1. プロフィール入力を12項目→4項目に削減(残りは利用中に段階的に収集)
  2. デバイス連携を「後からでもOK」にし、連携なしでも使える設計に変更
  3. 初回メニューをAIが自動生成(目標から逆算して提案)

結果(6週間後):

  • 初期設定CES: 3.2 → 6.1
  • 登録後3日以内の離脱率: 65% → 32%
  • 7日目継続率: 22% → 41%

「後からでもOK」という選択肢を増やしただけで、初期の摩擦が劇的に減った。

例3:自治体オンライン手続きのCES導入

人口25万人の地方自治体が、住民のオンライン手続きにCESを導入した事例。窓口の混雑緩和のためにオンライン化を進めたが、利用率が12%と低迷。

全手続きのCES調査結果(n=1,200):

手続きCESオンライン利用率
住民票の写し請求5.835%
税証明書の取得4.115%
転入届2.95%
各種届出の予約6.342%

転入届CESが低い原因:

  • 入力項目が48個あり、PCで30分以上かかる
  • マイナンバーカードの読み取りエラーが頻発
  • 途中保存ができず、最初からやり直しになる

施策:

  1. 入力フォームを4ページ分割+進捗バー表示+途中保存機能を追加
  2. マイナンバーカード読み取りの代替手段としてSMS認証を導入
  3. 事前入力された項目の自動補完(住所から郵便番号など)

結果(3ヶ月後):

  • 転入届CES: 2.9 → 5.4
  • オンライン利用率: 5% → 28%
  • 窓口来庁者数: 月間340件 → 月間210件(38%削減)

行政サービスこそCESが効く。住民は「感動」を求めていない。「面倒でない」だけで十分。

やりがちな失敗パターン
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  1. NPSだけ測ってCESを無視する — NPSは「推奨するか」を聞くが、具体的に何を改善すべきかがわからない。CESは特定のタッチポイントの改善点を直接示してくれる
  2. 良いスコアのタッチポイントに投資する — CESが高い場所をさらに良くするより、低い場所を底上げするほうがROIが高い。最も苦労しているポイントに集中する
  3. 測定するだけで改善しない — CESを測っても改善アクションに繋げなければ意味がない。スコアが5.0未満のタッチポイントは即座に改善プロジェクトを立ち上げる
  4. 測定タイミングが遅すぎる — 体験から3日後にアンケートを送っても記憶が薄れている。体験直後(30秒以内)に聞くのが鉄則。画面内のポップアップやチャット内アンケートが最適

まとめ
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カスタマーエフォートスコアは「顧客を感動させる」のではなく「苦労させない」ことの重要性を教えてくれる指標。特定の体験の直後に1問だけ聞き、摩擦の大きいポイントを特定して改善する。「簡単だった」と言ってもらえる体験の積み重ねが、最も強いロイヤルティを生む。