カスタマージャーニーマップ

英語名 Customer Journey Map
読み方 カスタマー ジャーニー マップ
難易度
所要時間 2〜4時間
提唱者 サービスデザインの領域で発展
目次

ひとことで言うと
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顧客が商品やサービスを認知→検討→購入→利用→推奨するまでの一連の体験を、時系列で1枚のマップにまとめるフレームワーク。各段階での行動・思考・感情を可視化することで、改善すべきポイントが明確になる。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
ペルソナ(Persona)
ターゲット顧客を具体的な人物像として描いた架空のプロフィールのこと。年齢・職業・課題・動機を具体化し、チーム全員の顧客理解を揃える。
タッチポイント(Touchpoint)
顧客が企業やブランドと接触するすべてのチャネルや場面のこと。広告・Webサイト・店舗・SNS・メールなどが含まれる。
ペインポイント(Pain Point)
顧客が体験の中で感じる不満・ストレス・障壁のこと。ペインポイントの解消が顧客体験改善の最優先事項になる。
モーメント・オブ・トゥルース(Moment of Truth)
顧客がブランドの印象を決定づける重要な瞬間のこと。この瞬間の体験が良ければファンに、悪ければ離脱につながる。
エモーションカーブ(Emotion Curve)
顧客の感情の起伏を時系列でグラフ化したもののこと。感情が大きく下がるポイントが最優先の改善箇所になる。

カスタマージャーニーマップの全体像
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5つのフェーズと各フェーズで記載する要素
カスタマージャーニーの5フェーズ各フェーズで「行動・思考・感情・タッチポイント・課題」を記載する認知存在を知る行動: SNSで広告を見る思考: 気になるかも感情: 興味半分タッチポイントSNS広告口コミ検索結果検討情報収集・比較行動: 口コミを検索思考: 他と比べて?感情: 迷い・不安タッチポイント比較サイト口コミサイト公式サイト購入申込み・決済行動: 無料体験→入会思考: 続けられそう感情: 期待タッチポイント申込フォーム決済画面確認メール利用体験・定着行動: 初回利用思考: 難しい…?感情: 不安↓タッチポイントアプリ・製品サポート窓口コミュニティ推奨リピート・口コミ行動: 友人に推薦思考: 始めてよかった感情: 満足↑タッチポイントSNS投稿口コミサイト紹介プログラム各フェーズで記載する5要素行動タッチポイント思考感情課題・ペイン感情が下がっているポイント = 最優先の改善チャンス想像ではなく、実際の顧客の声とデータで埋める
ジャーニーマップ作成フロー
1
ペルソナ設定
具体的な人物像を1人設定
2
フェーズ定義
認知〜推奨の各段階を設定
3
要素の記入
行動・思考・感情を書き出す
改善アクション
感情低下ポイントを優先改善

こんな悩みに効く
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  • 顧客がどこで離脱しているのかわからない
  • 社内の各部門がバラバラに顧客対応していて一貫性がない
  • 「顧客目線で考えろ」と言われるけど、具体的にどうすればいいかわからない

基本の使い方
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ステップ1: ペルソナを設定する

まず「誰の旅」を描くのかを明確にする。

  • 具体的な人物像を1人設定する(年齢、職業、課題、動機)
  • 複数のペルソナがいる場合は、最も重要な顧客セグメントから1つ選ぶ
  • 想像ではなく、実際の顧客インタビューやデータをベースにする

ポイント: 「30代男性会社員」では粗すぎる。「32歳、IT企業のプロジェクトマネージャー、育児と仕事の両立に悩んでいる」くらいの解像度が必要。

ステップ2: フェーズを定義する

顧客の体験を時系列のフェーズに分ける。一般的には以下の5つ。

  1. 認知: 商品・サービスの存在を知る
  2. 検討: 情報を集め、比較する
  3. 購入: 実際に申し込み・購入する
  4. 利用: 使い始め、体験する
  5. 推奨: 満足してリピート・口コミする(or 不満で離脱する)

業種やサービスに合わせてフェーズはカスタマイズしてOK。

ステップ3: 各フェーズの要素を埋める

フェーズごとに以下の要素を書き出す。

  • 行動: 顧客は何をしているか?(検索、来店、問い合わせなど)
  • タッチポイント: どのチャネルで接触しているか?(SNS、Webサイト、店舗、メールなど)
  • 思考: 何を考えているか?(「本当に効果あるのかな」「他と比べてどうだろう」)
  • 感情: どう感じているか?(期待、不安、満足、不満)
  • 課題・ペインポイント: 何に困っているか?何がストレスか?

感情は曲線で描くと、体験のアップダウンが一目でわかる。

ステップ4: 改善アクションを特定する

マップ全体を俯瞰し、優先的に改善すべきポイントを見つける。

  • 感情が大きく下がっているポイント → 最優先で改善
  • タッチポイントが抜けている箇所 → 新しい接点を設計
  • 競合に負けているフェーズ → 差別化施策を検討

具体例
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例1:オンライン学習サービスが初期離脱を防ぐ

ペルソナ: 田中さん(28歳、営業職、プログラミングを学んでキャリアチェンジしたい)

フェーズ行動タッチポイント思考感情
認知SNSで「未経験からエンジニア転職」の広告を見るInstagram広告「自分でもできるのかな」興味半分、不安半分
検討複数のスクールを比較、口コミを検索Google検索、口コミサイト、YouTube「料金が高い…。でも独学は挫折しそう」迷い、不安
購入無料体験レッスンに参加、入会を決める公式サイト、Zoomレッスン「メンターがいるなら続けられそう」期待
利用(初期)最初の教材に取り組む、質問する学習アプリ、Slackコミュニティ「思ったより難しい…ついていけるか不安」不安
利用(中期)簡単なアプリを自分で作れるようになる学習アプリ、成果物「おお、動いた!」達成感
推奨友人に勧める、SNSで学習の進捗を投稿Twitter、対面「あのとき始めてよかった」満足

改善アクション:

  • 利用(初期)の感情低下が最大のリスク → 初月は毎日メンターから声かけメッセージを自動送信、小さな達成を褒めるバッジ機能を追加
  • 検討フェーズの不安が大きい → 無料体験の前に「5分でわかるカリキュラム動画」を用意して、心理的ハードルを下げる

結果: 初月離脱率が42%→28%に改善。受講完了率が1.4倍に向上し、口コミによる新規入会が月15件増加

例2:BtoB SaaSが導入後の定着率を改善する

ペルソナ: 山本さん(38歳、中堅メーカーの経理部長、月末の集計作業を効率化したい)

フェーズ行動ペインポイント
認知展示会でデモを見る多すぎるブースの中から自社を見つけてもらえない
検討社内稟議のための比較資料を作成競合との違いがWebサイトだけでは判断できない
購入上司の承認を得て契約稟議書に書けるROI試算データがない
利用(初期)経理チーム5名で使い始めるマニュアルが多すぎて読む時間がない
利用(定着)月次決算で本格運用既存のExcelとの二重管理が発生

改善施策:

  • 検討フェーズ: 「導入企業が使った社内稟議テンプレート」を無料配布。ROI計算シートも同封
  • 利用(初期): マニュアルを廃止し、「7日間ステップバイステップメール」に置き換え。初日は1機能だけ使う
  • 利用(定着): Excel連携機能を優先開発し、二重管理を解消

結果: 契約後90日時点の利用定着率が58%→81%に改善。解約率が月次2.8%→1.4%に半減し、ARRベースで年間3,200万円の解約防止効果

例3:D2Cコスメブランドが購入後のリピートを増やす

ペルソナ: 佐藤さん(25歳、事務職、肌荒れに悩んでおり自分に合うスキンケアを探している)

ジャーニーマップの発見:

  • 購入フェーズ: 初回購入のCVRは3.2%と良好(口コミ効果)
  • 利用フェーズ: 商品到着後14日以内に使い始める人は65%(35%は箱を開けていない)
  • 推奨フェーズ: 2回目購入率はわずか18%。3回購入した人のリピート率は72%

感情低下ポイント: 購入→利用の間に「使い方がわからない」「効果を実感できない」の壁がある

改善施策:

  • 商品同梱物を刷新: 「初めての方への7日間使い方ガイド」カード封入
  • 購入3日後にLINEで「使い始めましたか?」メッセージ送信。未使用者には使い方動画を配信
  • 購入14日後に「肌の変化を感じ始める頃です」メッセージ+レビュー依頼
  • 購入30日後にリピート割引15%OFFクーポン配信

結果: 商品到着後14日以内の使用開始率が65%→88%に改善。2回目購入率が18%→31%に向上し、年間売上が1.7倍に成長

やりがちな失敗パターン
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  1. 社内の都合で作ってしまう — 「自社のプロセス」ではなく「顧客の体験」を描くのがカスタマージャーニー。営業フロー図にならないように注意
  2. 想像だけで埋める — 実際の顧客の声やデータに基づかないマップは、ただの願望。インタビューやアンケート、行動データを必ず使う
  3. 作って満足する — マップを壁に貼って終わりでは意味がない。改善アクションを具体化し、効果測定まで追いかけること
  4. 全フェーズを均等に改善しようとする — リソースは有限。感情が最も低下しているフェーズに集中投資し、最大のインパクトを狙うのが鉄則

まとめ
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カスタマージャーニーマップは、顧客の体験を「認知から推奨まで」一枚の地図にして、改善すべきポイントを見つけるフレームワーク。ポイントは「顧客の感情の浮き沈み」を可視化すること。感情が下がっている箇所こそ、最大の改善チャンス。作るプロセス自体が、チーム全員の顧客理解を深める効果もある。