ひとことで言うと#
「やらないこと」を明文化して、時間とエネルギーの流出を止めるフレームワーク。ToDoリストが増え続けるなら、先にNot-ToDoリストを作るほうが効く。
押さえておきたい用語#
- Not-ToDoリスト(ノット トゥードゥー リスト)
- 自分が意識的にやらないと決めたことの一覧。ToDoリストの逆で、「削る」ことに焦点を当てる。
- コミットメントデバイス
- 将来の自分が誘惑に負けないよう、事前に選択肢を制限する仕組みを指す。アンチToDoリストそのものがこれに該当する。
- デフォルト効果
- 人は現状維持を好み、明示的にやめると決めない限り惰性で続けてしまう心理傾向。
- パーキンソンの法則
- 仕事は与えられた時間をすべて満たすまで膨張するという経験則。やることを減らさない限り、時間はいくらあっても足りない。
アンチToDoリストの全体像#
こんな悩みに効く#
- ToDoリストが長くなるばかりで、いつまでも終わらない
- 頼まれたことを全部引き受けてしまい、自分の時間がない
- 毎日忙しいのに、振り返ると何も進んでいない気がする
基本の使い方#
まず1週間の行動を振り返り、時間を使っているものをすべてリストアップする。
- 仕事: 会議、メール返信、報告書、雑談、SNSチェック…
- プライベート: ニュース巡回、通知確認、ダラダラ動画視聴…
- コツ: スマホのスクリーンタイムや手帳を見返すと漏れが減る
書き出した項目を一つずつ問いかける。
- 「これをやめたら、3ヶ月後に困るか?」→ 困らないなら候補
- 「義務感だけでやっていないか?」→ 義務感だけなら候補
- 「他の人に任せられないか?」→ 任せられるなら候補
仕分けた結果を「やらないことリスト」として明文化する。
- 目につく場所に貼る(デスク横、スマホのロック画面など)
- 具体的に書く: 「SNSを減らす」ではなく「12時〜13時以外にSNSを開かない」
- 月に1回は見直して、新たな「やめること」を追加する
具体例#
状況: 広告代理店の営業(32歳)。毎日2時間の残業が常態化し、帰宅後は疲れて何もできない。
棚卸しの結果(1週間の行動ログ)
| 行動 | 週あたり時間 | やめられる? |
|---|---|---|
| 社内会議(出なくていいものを含む) | 8時間 | 一部可 |
| CCメールを全部読む | 3時間 | 可 |
| 提案書の体裁を完璧に整える | 4時間 | 可 |
| 同僚の仕事を「ついでに」引き受ける | 3時間 | 可 |
作ったアンチToDoリスト
- 自分が発言しない定例会議には出ない(チャットで議事録を確認)
- CCメールは件名だけ見て、自分宛て以外は読まない
- 提案書は70%の完成度で一度見せる(完璧主義をやめる)
- 「ちょっとお願い」と言われたら「今週は厳しいです」をデフォルトにする
週10時間が浮き、うち5時間を新規顧客開拓に、残り5時間を早く帰ることに充てた。翌月の新規アポ数は 4件 → 9件 に増加。
状況: SIer勤務のエンジニア(28歳)。平日夜と土日に個人開発をしたいが、毎回「今日もできなかった」で終わる。
1週間のスクリーンタイム分析
- SNS(X、Instagram): 1日平均82分
- ニュースアプリ: 1日平均35分
- YouTube: 1日平均55分
- 個人開発: 1日平均12分
アンチToDoリスト
- 平日はSNSアプリをホーム画面から削除(週末だけ戻す)
- ニュースは朝の通勤電車内だけ。帰りは技術書を読む
- YouTubeは「あとで見る」に入れて、金曜夜にまとめて見る
- 「調べてから始めよう」をやめる。まず30分手を動かす
スクリーンタイムは1日172分から58分に減った。浮いた 約2時間/日 を個人開発に充てた結果、3ヶ月で個人アプリをリリースできた。
状況: フリーランスのWebデザイナー(36歳・子ども2歳)。保育園の送迎があり、稼働は1日5時間。なのに案件を断れず毎月赤字寸前。
今受けている仕事の一覧
| 案件 | 単価 | 工数 | 時給換算 |
|---|---|---|---|
| コーポレートサイト制作 | 30万円 | 40時間 | 7,500円 |
| バナー量産(月20枚) | 5万円 | 15時間 | 3,333円 |
| 知人のLP(友人価格) | 3万円 | 20時間 | 1,500円 |
| SNS運用代行 | 3万円 | 10時間 | 3,000円 |
アンチToDoリスト
- 時給5,000円を下回る案件は受けない
- 「友人価格」の依頼は丁寧に断る(紹介で返す)
- 修正回数無制限の契約は受けない(上限3回を明記)
- 夜21時以降のクライアント対応はしない
バナー量産とSNS代行を手放し、月の稼働を85時間から50時間に。空いた時間でコーポレートサイト案件をもう1件取り、月収は 41万円 → 60万円 に上がった。稼働時間が減って収入が増える、引き算の効果はこういうところに出る。
やりがちな失敗パターン#
- 「やらないこと」が抽象的すぎる — 「無駄な時間を減らす」では行動が変わらない。「Xのタイムラインを1日3回以上見ない」のように具体的に書くこと
- 一気にやめすぎる — 最初から20項目も挙げると反動が来る。まず3〜5個に絞って、1ヶ月続いたら次を追加する
- 人に宣言しない — 自分だけの秘密にすると、なし崩しで元に戻る。チームや家族に「これはやめます」と伝えたほうが継続率は上がる
- 見直しをしない — 環境が変われば「やらないこと」も変わる。月1回の棚卸しを習慣にすること
まとめ#
ToDoリストを足し算で管理していると、いつまでも時間は足りない。アンチToDoリストは「やらないこと」を決める引き算の技術で、忙しさの根本原因に手を打てる。まず1週間の行動ログを取って、惰性でやっていることを3つ見つけるところから始めてみるといい。