VARK学習スタイル

英語名 VARK Learning Styles Model
読み方 ヴァーク ラーニング スタイルズ モデル
難易度
所要時間 15〜30分(診断と学習設計)
提唱者 ニール・フレミング(ニュージーランドの教育者、1987年)
目次

ひとことで言うと
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人には情報を受け取りやすい「チャンネル」がある。見る(Visual)・聴く(Aural)・読み書き(Read/Write)・体験する(Kinesthetic)の4タイプから自分の傾向を知り、学習法を最適化するモデル。同じ内容でも、伝え方を変えるだけで理解度が劇的に変わる。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
マルチモーダル(Multimodal)
複数の学習チャンネルを組み合わせて情報を処理する傾向のこと。VARKでは約60%の人がマルチモーダルとされ、1タイプに限定されない。
学習選好(Learning Preference)
情報を受け取るときに無意識に選びやすいチャンネルの傾向のこと。能力ではなく好みであり、訓練で他のチャンネルも強化できる。
視覚型(Visual)
図・グラフ・チャート・マインドマップなど空間的・視覚的な表現で理解が進むタイプのこと。テキストではなく「見てわかる」情報を好む。
体験型(Kinesthetic)
実践・ハンズオン・実験・ロールプレイなど身体を動かす経験を通じて理解が進むタイプのこと。座学だけでは集中が続きにくい。

VARK学習スタイルの全体像
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VARK:4つの情報チャンネルで学習を最適化する
VARKの4つの学習チャンネルV — Visual(視覚型)図・グラフ・チャートで理解・マインドマップで整理・色分けノート・動画教材・図解「見てわかる」が得意A — Aural(聴覚型)講義・ディスカッションで理解・セミナー・勉強会・ポッドキャスト・声に出して説明「聴いてわかる」が得意R — Read/Write(読み書き型)テキスト・リスト・メモで理解・要約をノートに書く・リスト化で整理・ブログ・日記に書く「読み書きでわかる」が得意K — Kinesthetic(体験型)実践・ハンズオンで理解・実際にやってみる・ケーススタディ・フィールドワーク「やってみてわかる」が得意Multimodal
1
診断
4タイプのうち自分の強い傾向を把握する
2
学習法選択
傾向に合ったインプット方法を選ぶ
3
マルチモーダル設計
教える側は4タイプすべてに対応
4
効果検証
理解度・定着率を測定して方法を調整

こんな悩みに効く
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  • 教科書を読んでも頭に入らないが、動画だとわかる(逆も)
  • 研修で同じ説明をしても、理解度にメンバー間で差がある
  • 自分に合った勉強法が見つからず、色々試して疲弊している

基本の使い方
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ステップ1: 4つのタイプを理解する

VARKの4タイプは、情報の入力チャンネルの好みを表す。

V — Visual(視覚型)

  • 図、グラフ、チャート、マインドマップで理解が進む
  • 「見てわかる」が最も得意
  • 口頭だけの説明では頭に入りにくい

A — Aural(聴覚型)

  • 講義、ディスカッション、ポッドキャストで理解が進む
  • 「聴いてわかる」が最も得意
  • 静かに読むより、誰かに説明してもらう方が効果的

R — Read/Write(読み書き型)

  • テキスト、リスト、メモ、マニュアルで理解が進む
  • 「読んで書いてわかる」が最も得意
  • 情報をノートにまとめることで理解が深まる

K — Kinesthetic(体験型)

  • 実践、ハンズオン、実験、ロールプレイで理解が進む
  • 「やってみてわかる」が最も得意
  • 座学だけでは退屈で集中が続かない

多くの人は複数のタイプを持つ(マルチモーダル)。 1つに限定する必要はない。

ステップ2: 自分のタイプを診断する

以下の質問で自分の傾向を探る。

新しい家電の使い方を覚えるとき、あなたは?

  • 図解やイラストを見る → V
  • 誰かに口頭で教えてもらう → A
  • マニュアルを読む → R
  • とりあえず触ってみる → K

道を覚えるとき、あなたは?

  • 地図やナビの画面を見る → V
  • 「2つ目の信号を右」と口頭で聞く → A
  • テキストの道順メモを読む → R
  • 実際に歩いて覚える → K

より正確に知りたい場合: VARK公式サイト(vark-learn.com)で無料診断ができる。

大切なのは「自分はこのタイプだから」と決めつけず、傾向として理解すること。

ステップ3: タイプに合った学習法を選ぶ

自分の強いタイプに合わせて学習方法を選ぶ。

Vタイプの学習法:

  • マインドマップで情報を整理
  • 色分けしたノートを作る
  • 動画教材を活用する
  • フローチャートや図解を描く

Aタイプの学習法:

  • 講義やセミナーに参加する
  • 学んだことを声に出して説明する
  • ポッドキャストやオーディオブックを活用
  • 勉強会やディスカッションに参加する

Rタイプの学習法:

  • テキストを読んで要約を書く
  • リスト化して情報を整理する
  • ブログや日記に学んだことを書く
  • 参考書やマニュアルを読み込む

Kタイプの学習法:

  • 実際にやってみる(ハンズオン)
  • ケーススタディやシミュレーション
  • 歩きながら暗記する
  • 実物に触れて学ぶ(フィールドワーク)
ステップ4: 教える側はマルチモーダルで設計する

研修やプレゼンを全タイプに対応できるよう設計する。

設計のポイント:

  • V向け: スライドに図解・グラフを入れる
  • A向け: 説明とディスカッションの時間を設ける
  • R向け: 配布資料やテキストを用意する
  • K向け: ワークショップやハンズオンを組み込む

例: 「新しいツールの研修」

  1. デモ動画を見せる(V)
  2. 機能を口頭で解説する(A)
  3. マニュアルを配布する(R)
  4. 実際に触って練習する時間を設ける(K)

4タイプすべてに対応すると、参加者全員の理解度が底上げされる。

具体例
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例1:プログラミング研修をVARK対応に改善

IT企業の新人研修。従来はテキストベースの講義形式で、理解度にばらつきがあった。VARKモデルで研修を再設計。

Before(Rタイプ偏重):

  • テキスト資料を配布
  • 講師が資料を読み上げながら説明
  • 演習は「資料を見ながら写経」 → Rタイプは理解できるが、V/A/Kタイプは置いていかれる

After(マルチモーダル設計):

午前: 概念理解パート

  • コードの動きをアニメーションで可視化(V)
  • 講師がなぜそう書くのかを口頭で解説 + 質疑応答(A)
  • チートシート(要点テキスト)を配布(R)

午後: 実践パート

  • ペアプログラミングで実際にコードを書く(K)
  • 書いたコードの動きを図で確認(V)
  • ペアでお互いに説明し合う(A + K)
  • 学んだことを自分の言葉でまとめる(R)

結果: 研修後テストの平均点が68点→85点に上昇。「わかりやすかった」の回答が55%→92%に改善。特にKタイプの新人の理解度が大幅に向上し、全員の底上げに成功

例2:英語学習に伸び悩んだ社会人がVARK診断で突破

対象: TOEIC 500点台で1年間停滞していた30代営業職。

VARK診断結果: A(聴覚型)が突出して高く、R(読み書き型)は低い。

Before(Rタイプ中心の学習):

  • 文法書を3周読み込み: 効果なし
  • 単語帳を書いて暗記: 1週間で忘れる
  • 週10時間の勉強 → 半年でTOEIC +30点(500→530)

After(Aタイプ中心に切替):

学習内容方法週の時間
シャドーイングポッドキャストを聴きながら復唱3時間
オンライン英会話講師とディスカッション2時間
音読テキストを声に出して読む2時間
リスニング教材通勤中にオーディオブック3時間

結果: 同じ週10時間の勉強で、半年後にTOEIC 530→680に上昇(+150点)。自分に合ったチャンネルに切り替えただけで、学習効率が5倍に向上

例3:小学校の算数授業をマルチモーダルで改善した教師

対象: 小学4年生の算数「分数」の単元。クラス30名の理解度テスト平均が62点と低迷。

マルチモーダル授業設計:

  • V: 分数をピザの図で可視化。1/2、1/4、3/4を円グラフで表示
  • A: 「1枚のピザを4人で分けると?」と声に出して考えさせる。グループで話し合い
  • R: 分数の計算ルールをノートに書かせる。例題を3問解いて書く
  • K: 実際の紙を折って分数を体感。色画用紙を1/2、1/4に切る活動

結果: 同じ単元のテスト平均が62点→81点に上昇。特にKタイプの児童(座学が苦手な層)の平均が48点→76点と劇的に改善。「算数が楽しい」と答えた児童が40%→75%に増加

やりがちな失敗パターン
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  1. 「自分はVタイプだから」と1つに固定する — VARKは傾向であり、ラベルではない。場面によって使い分ける柔軟さが大切。特に複合的なスキルの習得には複数のチャンネルを使う方が効果的
  2. 教える側が自分のタイプだけで設計する — Rタイプの講師がテキスト中心の研修を作ると、他タイプの学習者が取り残される。受講者の多様性を前提に、マルチモーダルで設計する
  3. VARKだけで学習の全てを説明しようとする — VARKは情報の入力チャンネルの好みであり、学習の全体像ではない。動機づけ、難易度設計、復習サイクルなど他の要素も合わせて考える
  4. 診断結果を鵜呑みにして苦手チャンネルを完全に避ける — 苦手なチャンネルも補助的に使うことで理解が深まる。得意チャンネル70%+苦手チャンネル30%の配分がバランスとして有効

まとめ
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VARKモデルは、情報の受け取り方の好み(Visual・Aural・Read/Write・Kinesthetic)を理解し、学習法を最適化するシンプルなフレームワーク。自分のタイプに合った学習法を選ぶことで効率が上がり、教える側はマルチモーダル設計で全員の理解度を底上げできる。まずは自分のVARKタイプを診断してみよう。