PERMAモデル(学習意欲)

英語名 PERMA Model for Wellbeing
読み方 パーマモデル
難易度
所要時間 1〜2時間(自己評価)+ 継続的な実践
提唱者 Martin Seligman(2011年)
目次

ひとことで言うと
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PERMAは、ポジティブ心理学の創始者マーティン・セリグマンが提唱した持続的な幸福を構成する5つの要素。Positive Emotion(快の感情)、Engagement(没頭)、Relationships(良い関係性)、Meaning(意味・目的)、Accomplishment(達成)の頭文字を取ったもので、この5つをバランスよく満たすことで、単なる「楽しい」を超えた深い充実感と学習意欲が生まれる。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
P:Positive Emotion(ポジティブ感情)
喜び・感謝・安心・希望といった心地よい感情を日常的に経験すること。快楽主義ではなく、日々の中に小さなポジティブ体験を意識的に見つけるアプローチ。
E:Engagement(エンゲージメント)
活動に深く没頭している状態。チクセントミハイの「フロー」に近い概念で、時間を忘れるほど集中している瞬間が該当する。
R:Relationships(関係性)
他者とのポジティブなつながり。支え合い、信頼し、互いの成長を喜べる関係が幸福の土台になる。
M:Meaning(意味)
自分よりも大きな何かに貢献している実感。「なぜこれをやるのか」に自分なりの答えを持てている状態。
A:Accomplishment(達成)
目標を達成し、自分の成長を実感すること。結果だけでなく、挑戦のプロセスそのものも含まれる。

PERMAモデルの全体像
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PERMAモデルの5要素
P快の感情喜び・感謝安心・希望E没頭フロー状態時間を忘れる集中R関係性信頼・支え合い良いつながりM意味貢献の実感「なぜ」への答えA達成目標の実現成長の実感5つの要素をバランスよく満たす1つだけ突出しても持続的な幸福にはならない — 弱い要素を底上げするのが鍵持続的な幸福を構成する5つの柱
PERMAモデルの活用ステップ
1
5要素を自己評価
各要素を10点満点でスコアリング
2
最も低い要素を特定
ボトルネックとなっている要素に注目
3
小さなアクションを設計
弱い要素を底上げする日常行動を決める
充実感と意欲が安定
5要素のバランスが整い持続的に機能する

こんな悩みに効く
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  • 仕事で成果は出ているが、なぜか充実感がない
  • 学習や自己投資を始めても、すぐにやる気が切れる
  • チームの生産性は高いが、メンバーの表情が暗い

基本の使い方
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5要素を10点満点で自己評価する

まずは現在地を知る。直感で構わないので、各要素に点数をつける。

  • P(快の感情):日常でポジティブな気分になる瞬間がどれくらいあるか
  • E(没頭):時間を忘れるほど集中できる活動があるか
  • R(関係性):信頼できる人とのつながりを感じているか
  • M(意味):自分の仕事や活動に意味を見出しているか
  • A(達成):最近、何かを成し遂げた実感があるか
  • 合計点ではなく、5つのバランスを見ることがポイント
最も低い要素を1つ選び、底上げするアクションを決める

全部を同時に改善しようとしない。最も低い1要素にフォーカスする。

  • Pが低い → 毎晩「今日良かったこと3つ」を書く(Three Good Things)
  • Eが低い → 週に1回、好きな活動に30分だけ没頭する時間を確保する
  • Rが低い → 週に1人、感謝のメッセージを送る
  • Mが低い → 「この仕事は誰の役に立っているか?」を書き出してみる
  • Aが低い → 達成可能な小さな目標を1つ設定し、1週間以内に完了する
月に1回、再評価して変化を確認する

アクションを続けた結果、スコアがどう変化したかを定期的にチェックする。

  • 同じ5要素を再度10点満点で評価する
  • スコアが上がった要素のアクションは継続、変化がない場合はアクションを見直す
  • 1つの要素が安定したら、次に低い要素にシフトする
  • チームで活用する場合は、匿名アンケートで全体の傾向を把握する

具体例
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例1:中堅エンジニアの「燃え尽き」からの回復

状況: 35歳のバックエンドエンジニア。昇進して技術リードになったが、コードを書く時間が激減し、会議とレビューばかりの日々。成果は出ているが「楽しくない」と感じている

PERMAスコア(自己評価): P:4 E:2 R:6 M:5 A:7 → Eが圧倒的に低い

改善アクション:

  • 毎週金曜の午後2時間を「コーディングタイム」として確保し、技術的な改善タスクに没頭する
  • レビューの一部を後輩に移管し、自分の手を動かす時間を捻出
  • 週末に個人プロジェクトを1つ再開(趣味のOSSコントリビュート)

2ヶ月後: Eのスコアが2→7に回復。「金曜のコーディングタイムがあるから平日の会議も頑張れる」。連動してPのスコアも4→6に上昇。仕事全体への満足度が戻り、退職を考えていた気持ちが消えたと本人は語っている。

例2:看護師チームのウェルビーイング向上プログラム

状況: 総合病院の病棟看護師15名。慢性的な人手不足で離職率が年間25%。「やりがいはあるが、心身ともに限界」という声が多い

PERMAスコア(チーム平均): P:3 E:5 R:4 M:8 A:4 → Pが最も低く、Rも低い

改善アクション:

  • P向上:休憩室にお菓子コーナーを設置し、「今日ありがとうカード」を導入(手書きで同僚に渡す)
  • R向上:月1回・30分のペアトーク(業務外の話OK)を勤務時間内に設定
  • A向上:「今月のナイスプレー」を朝礼で共有し、小さな成功を見える化

6ヶ月後: チームのPERMAスコアが全要素で平均1.5ポイント上昇。離職率が25%→12%に低下。「ありがとうカード」は当初形式的だったが、3ヶ月目から自然にやりとりされるようになり、休憩室の雰囲気が明るくなった。

例3:大学生が学習意欲の低下を立て直す

状況: 大学3年生。1〜2年は成績も良かったが、3年になり専門科目が難しくなって勉強への意欲が急落。授業をサボりがちになり、将来への不安も募っている

PERMAスコア(自己評価): P:4 E:3 R:5 M:2 A:3 → Mが最も低い

改善アクション:

  • M向上:ゼミの教授に「この研究は社会でどう役立つのか」を直接聞きに行った
  • M向上:専門分野で働く社会人のインタビュー記事を週に1本読む
  • A向上:「今週1章分の教科書を理解する」という達成可能な目標を毎週設定

3ヶ月後: Mのスコアが2→6に上昇。「材料工学は環境問題の解決に直結する」という教授の言葉で学ぶ意味が腹落ちした。授業出席率が65%→95%に回復。達成目標を毎週クリアすることでAも3→6に上がり、学習が「こなす作業」から「自分の成長」に変わったと本人は感じている。

やりがちな失敗パターン
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  1. 合計スコアの高さだけを追う — PERMAは合計点ではなくバランスが重要。Aだけ10点でもRが1点なら持続的な幸福にはならない
  2. すべての要素を同時に改善しようとする — 5つ全部に手を出すと散漫になる。最も低い1つにフォーカスして底上げするのが効果的
  3. PERMAを「楽しさ」の指標と誤解する — PERMAが目指すのは「快楽」ではなく「充実」。MやAのように、困難を伴うが意味のある活動も含まれる
  4. 一度の評価で満足する — PERMAスコアは生活環境や仕事の変化で動く。月に1回の定点観測で、変化を早期に察知することが大切

まとめ
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PERMAモデルが教えてくれるのは、幸福は単一の要素では成り立たないという事実だ。成果を出しても人間関係が貧しければ充実しないし、楽しいだけでは意味の欠乏に気づく。5つの要素を自己評価し、最も弱い柱を1本ずつ強化していく。この地道なプロセスが、一時的なモチベーションではなく持続的な充実感をもたらす。今の自分のスコアを5つ書き出すところから、始めてみてほしい。