ADDIEモデル

英語名 ADDIE Model
読み方 アディー モデル
難易度
所要時間 1〜3時間(設計全体は数週間)
提唱者 1975年 フロリダ州立大学が米軍向けに開発
目次

ひとことで言うと
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**分析(Analyze)→ 設計(Design)→ 開発(Develop)→ 実施(Implement)→ 評価(Evaluate)**の5ステップで、効果のある学習プログラムを体系的に設計するフレームワーク。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
インストラクショナルデザイン(Instructional Design / ID)
学習の効果・効率・魅力を高めるために、教育を科学的・体系的に設計する分野。ADDIEはIDの代表的なプロセスモデル。
学習目標(Learning Objective)
学習プログラム修了時に「学習者が何をできるようになるか」を具体的・測定可能に記述したゴールを指す。
形成的評価(Formative Evaluation / フォーマティブ エバリュエーション)
プログラムの開発途中で行う評価のこと。完成前に改善点を見つけ、走りながら修正するためのもの。
総括的評価(Summative Evaluation / サマティブ エバリュエーション)
プログラム実施後に行う最終的な効果測定である。投資対効果や目標達成度を判断する。

ADDIEモデルの全体像
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ADDIEモデル:5段階で学習プログラムを設計・改善する
A — 分析誰に・何を・なぜ学習ニーズと現状の把握AnalyzeD — 設計学習目標・評価基準構成と教え方の方針決定DesignD — 開発教材・資料・テストを作成パイロット版でテストDevelopI — 実施実際に学習を実施講師・環境・進行管理ImplementE — 評価形成的評価 + 総括的評価改善点を次のサイクルへEvaluate改善サイクル評価は各段階で随時行う(形成的評価)5段階を回すほど、学習プログラムの精度が上がる
ADDIEモデルの進め方フロー
A
分析
誰に・何を・なぜ教えるか
D
設計
目標・構成・評価方法を決める
D
開発
教材・テスト・環境を作る
I
実施
学習プログラムを実行する
E
評価
効果を測定し次回を改善

こんな悩みに効く
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  • 研修を毎年やっているが、効果があるのかわからない
  • 学習プログラムをどういう手順で作ればいいか迷う
  • 教材は作ったが、受講者の満足度も業績改善も見えない

基本の使い方
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ステップ1: 分析(Analyze)— ニーズと現状を把握する

「なぜこの学習が必要か」を明確にする。

確認すること:

  • 学習者は誰か: 職種、経験年数、現在のスキルレベル
  • ゴールは何か: 研修後に何ができるようになってほしいか
  • ギャップは何か: 現状とゴールの差はどこにあるか
  • 制約は何か: 予算、期間、使える設備

ここを曖昧にすると、すべてのステップがブレる。分析に全体の30%の時間をかけても多すぎない

ステップ2: 設計(Design)— 学びの設計図を描く

分析結果をもとに、プログラムの構造を決める。

決めること:

  • 学習目標: 「○○ができるようになる」を具体的に記述(例:「損益計算書の3つの利益を説明できる」)
  • 評価方法: 目標達成をどう測るか(テスト、実技、レポートなど)
  • 構成: 何をどの順番で、どの方法で教えるか
  • 所要時間: 各パートの時間配分

設計段階で評価方法を先に決めるのがADDIEの特徴。ゴールが明確でないと、良い教材は作れない。

ステップ3: 開発(Develop)— 教材・テストを作成する

設計に基づいて、実際の教材や環境を準備する。

  • スライド、テキスト、動画、eラーニング教材
  • テスト問題、演習課題、ロールプレイのシナリオ
  • 受講者用のワークシート、参考資料

パイロット版を少人数でテストするのが重要。いきなり全員に展開すると、修正コストが跳ね上がる。

ステップ4: 実施(Implement)— プログラムを実行する

開発した教材を使って、実際に学習を行う。

注意点:

  • 講師のトレーニング(教材の使い方、進行の仕方)
  • 学習環境の整備(機材、ネットワーク、座席配置)
  • 受講者のモチベーション管理

実施中も観察と記録を怠らない。受講者の反応、つまずきポイント、時間の過不足は、次の評価で使う。

ステップ5: 評価(Evaluate)— 効果を測定し改善する

2種類の評価を行う。

  • 形成的評価: 各段階で随時行う。「設計どおりに進んでいるか」「教材は理解しやすいか」
  • 総括的評価: 全体終了後に行う。「学習目標は達成されたか」「投資対効果はどうか」

評価結果を次の分析フェーズに戻す。ADDIEは1回で終わりではなく、サイクルとして回すことで精度が上がる。

具体例
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例1:飲食チェーンが新人アルバイト研修を再設計する

状況: 全国50店舗の飲食チェーン。新人アルバイトの早期離職率が45%(3ヶ月以内)。退職理由の上位は「仕事を覚えられない」(38%)と「放置されている感じがする」(27%)。既存の研修は紙のマニュアルを渡すだけだった。

ADDIEの適用:

A(分析): アルバイト120名にヒアリング。「マニュアルが分厚くて読まない」「先輩によって教え方が違う」「最初の3日間が最も不安」という3つの課題を特定。

D(設計): 学習目標を「入店3日目までに基本オペレーション8項目を1人で実行できる」に設定。評価方法は実技チェックリスト(8項目×3段階)。

D(開発): 動画マニュアル(1本3分×8項目)+実技チェックリスト+「質問カード」(わからないことを書いて店長に渡す仕組み)を作成。パイロット版を3店舗で実施。

I(実施): 全50店舗に展開。初日に動画を視聴→2日目に先輩と一緒に実践→3日目にチェックリストで確認。

E(評価): パイロット3店舗のフィードバックで動画2本を撮り直し。本展開後も月次で離職率とチェックリスト通過率をモニタリング。

指標導入前6ヶ月後
3ヶ月以内の離職率45%22%
基本オペレーション習得日数平均12日平均4日
研修にかかるコスト/人約3.2万円約1.1万円

習得日数が3分の1になり、離職率も半減。マニュアルの内容ではなく「どう学ばせるか」の設計が問題だった。

例2:製造業の品質管理研修をeラーニング化する

状況: 自動車部品メーカー(従業員500名)。品質管理研修を年4回、集合研修(2日間×4回)で実施。1回あたりの費用は講師料・会場費・参加者の移動費で約180万円(年間720万円)。しかし研修後の品質テスト平均点は62点で、合格ライン(80点)に届かない受講者が**40%**いた。

ADDIEの適用:

A(分析): 過去3年分のテスト結果を分析。「統計的品質管理(SQC)」と「工程能力指数(Cp/Cpk)」の2分野で正答率が35%以下。受講者ヒアリングで「2日間詰め込みすぎ」「実務との接点が見えない」が判明。

D(設計): 弱点2分野に集中した設計に変更。学習目標は「自部署のデータを使ってCp値を算出し、工程改善提案を作成できる」。オンライン(基礎知識)+対面(実践演習)のブレンド型に。

D(開発): eラーニング教材(15分×12モジュール)を内製。各モジュール末に確認テスト(合格するまで次に進めない)。対面研修は1日に短縮し、自社データを使った演習に特化。

I(実施): eラーニングを2週間で受講→対面研修1日→2週間後にフォローアップテスト+改善提案提出。

E(評価): eラーニングのモジュール別離脱率を分析し、離脱率25%超の3モジュールを改訂。

指標導入前(集合研修)導入後(ブレンド型)
品質テスト平均点62点81点
合格率(80点以上)60%89%
研修コスト/年720万円290万円
実際の工程改善提案数年12件年47件

年間430万円のコスト削減と同時に、テスト合格率も改善提案数も大幅に向上。「何を教えるか」だけでなく「どう教えるか」を科学的に設計した成果が数字に表れている。

例3:地方自治体が住民向けデジタル講座を企画する

状況: 人口8万人の地方自治体。マイナンバーカードの電子証明書更新やオンライン確定申告の問い合わせが窓口に殺到し、職員の残業が月平均32時間増加。住民向けデジタル講座を開催したが、参加者は毎回8〜12名で、65歳以上の参加率はわずか3%

ADDIEの適用:

A(分析): 窓口の問い合わせ内容を1ヶ月分(832件)分類。上位3項目は「マイナポータルのログイン方法」(28%)「確定申告のe-Tax操作」(22%)「コンビニ交付の使い方」(15%)。対象は65歳以上の住民(約2.1万人)。既存の講座に来ない理由をアンケート調査: 「会場が遠い」(41%)「内容が難しそう」(33%)。

D(設計): 学習目標を「マイナポータルにログインして自分の情報を確認できる」に絞り込み。1回30分、公民館で開催。評価方法は「目の前で操作を完了できるか」の実技確認。

D(開発): スマートフォン操作を1ステップずつ写真で示した紙のガイド(A4両面1枚)+拡大表示した操作画面のポスター。パイロット版を2公民館で実施し、文字サイズと用語を修正。

I(実施): 市内12公民館で月2回開催。民生委員と連携して声かけ。「お茶を飲みながらスマホ教室」として開催し心理的ハードルを下げる。

E(評価): 参加者の操作完了率と窓口問い合わせ件数を月次で追跡。

指標導入前6ヶ月後
講座参加者数/月8〜12名85〜110名
65歳以上の参加率3%18%
窓口問い合わせ件数/月832件490件
職員の残業時間+32時間/月+11時間/月

問い合わせが**41%**減り、職員の負担も大幅に軽減された。「デジタル講座」と銘打つのをやめて「お茶を飲みながらスマホ教室」にしたことが参加者増の転機になった。分析フェーズで「来ない理由」を調べたことが、すべての起点になっている。

やりがちな失敗パターン
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  1. 分析をスキップしていきなり教材を作る — 「とりあえずスライドを作ろう」から始めると、学習者のニーズとずれた教材ができあがる。分析フェーズを省くと、残りの4段階すべてが空回りする
  2. 評価を最後だけで行う — 形成的評価(途中チェック)を省いて最後の総括的評価だけにすると、手戻りが大きくなる。開発途中で少人数テストを挟むだけで、大きな修正を防げる
  3. 1回回して終わりにする — ADDIEはサイクルとして設計されている。1回目の評価結果を2回目の分析に戻さないと、同じ問題が繰り返される。最低3サイクル回してようやく精度が安定する

まとめ
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ADDIEモデルは分析→設計→開発→実施→評価の5段階で学習プログラムを体系的に設計するフレームワーク。最大のポイントは、教材を作る前に「誰に・何を・なぜ」を徹底的に分析すること、そして評価結果を次のサイクルに戻して改善し続けること。「良い研修」は直感ではなく、設計の精度で決まる。