RPEスケール(主観的運動強度)

英語名 Rating of Perceived Exertion Scale
読み方 アールピーイー スケール
難易度
所要時間 1分(各セットの判断)
提唱者 グンナー・ボルグ(1970年代、ボルグスケール開発)
目次

ひとことで言うと
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「今のセット、10段階でどのくらいキツかった?」を数値化する方法。心拍計やパワーメーターがなくても、自分の体感で運動強度を正確に管理できる。筋トレでは「あと何回できたか」で判断する修正版RPEが主流。シンプルだが、プロアスリートも愛用する実用的なツール。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
RPE(Rating of Perceived Exertion)
運動中の主観的なきつさを数値化したスケールのこと。筋トレでは1〜10の10段階が一般的。
RIR(Reps In Reserve)
セット終了時の**「あと何回できたか」を示す余力回数**のこと。RPE8ならRIR2(あと2回できた)に相当する。
ボルグスケール
元祖RPEスケールで、有酸素運動向けに6〜20の段階でキツさを評価する方法のこと。数値×10が概算心拍数になる。
オートレギュレーション
事前に決めた重量に固執せず、その日の体調に合わせてRPEで重量を自動調整するトレーニング手法を指す。

RPEスケールの全体像
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体感で強度を数値化し、目的に応じたRPEゾーンで止める
RPE 8〜9(メインセット)あと1〜2回で限界フォームが崩れない最大強度筋力向上・筋肥大に最適成長の核心ゾーンRPE 5〜7(補助・回復)あと3〜5回の余裕テクニック練習・ウォームアップディロード週に使用回復と準備のゾーンRPEをログに記録同じ重量でRPEが下がった=成長の証拠
RPEベースのトレーニング調整フロー
1
目標RPEを設定
メインはRPE8、補助はRPE7
2
セット後に体感確認
あと何回できたかで判定
3
次セットで重量調整
低すぎれば+2.5kg、高すぎれば-2.5kg
ログに記録
重量×回数×RPEで成長を可視化

こんな悩みに効く
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  • 筋トレで毎回どのくらいの重さを持てばいいかわからない
  • がんばりすぎてケガをしたり、逆に手を抜いてしまう
  • 体調が日によって違うのに、同じメニューをこなそうとして辛い

基本の使い方
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ステップ1: RPEスケールを理解する

筋トレで最もよく使われる「修正RPE(RIR方式)」を覚える。

RPE意味あと何回できる?(RIR)
10限界(もう1回も無理)0回
9ほぼ限界あと1回
8かなりキツいあと2回
7きついあと3回
6やや余裕ありあと4回以上
5以下ウォームアップ程度楽にできる

RIR = Reps In Reserve(余力回数)。RPE8なら「あと2回はできたが、やらなかった」という意味。

ステップ2: 目的に応じたRPEで止める

毎セットを限界まで追い込む必要はない。目的に応じてRPEを使い分ける。

推奨RPE:

  • 筋力向上(メインセット): RPE 8〜9
  • 筋肥大(ボリュームセット): RPE 7〜8
  • テクニック練習: RPE 5〜6
  • デロード週: RPE 5〜6

ポイント: メインセットをRPE 8に設定すると、フォームが崩れない範囲で最大の刺激を与えられる。

ステップ3: RPEで重量を自動調整する

RPEを使えば、その日の体調に合わせて重量を柔軟に変えられる。

実践方法:

  1. 今日のメニュー: ベンチプレス 5回 × 3セット @ RPE 8
  2. まず前回の重量(例: 80kg)でスタート
  3. 5回やってみて体感を確認
  4. 「あと3回はいけた」→ RPE 7 → 次セットで2.5kg増やす
  5. 「あと1回がギリギリ」→ RPE 9 → 次セットで2.5kg減らす

日によって同じ5回でも80kgだったり75kgだったりする。それでいい。 体調に合わせるのがRPEの真髄。

ステップ4: トレーニングログに記録する

RPEを記録することで、長期的な傾向が見える。

記録例:

日付種目重量回数RPE
3/1スクワット100kg5回8
3/8スクワット100kg5回7
3/15スクワット102.5kg5回8

同じ100kg×5回でもRPEが下がった = 筋力が伸びている証拠。重量を上げるタイミングがわかる。

具体例
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例1:RPEベースに切り替えて6週間でベンチプレス停滞を突破

状況: ベンチプレス80kg×5回を3ヶ月間やり続けているが、82.5kgに上がらない。毎回限界までやって疲弊している。

RPEベースに変更:

  • セット1: 80kg × 5回 @ RPE 7(余裕がある)
  • セット2: 82.5kg × 5回 @ RPE 8(ちょうどいい)
  • セット3: 80kg × 5回 @ RPE 8(疲労を考慮して戻す)
  • 補助種目はRPE 7で3セット

6週間後:

  • 82.5kg × 5回 @ RPE 8が安定
  • 85kgに初挑戦して成功
  • ケガなし、関節の痛みも消えた

毎回限界まで追い込むのをやめたら、かえって伸びた。RPEで「戦略的に余力を残す」ことの効果を実感。

例2:体調不良の日にRPEで重量を下げて怪我を回避した40代トレーニー

状況: いつもスクワット100kg×5回@RPE8で行う。しかしこの日は睡眠4時間で体が重い。

RPEなしの場合(従来):

  • 「100kgと決めたから100kgでやる」→ RPE10(限界超え)→ フォーム崩壊 → 腰を痛める可能性

RPEありの場合(実際の対応):

  • ウォームアップで80kgがRPE7に感じる(いつもならRPE5)
  • 本番を90kgに変更 → 5回 @ RPE 8に収まった
  • 体を壊さずにトレーニングを完遂

結果:

  • 翌週には100kg@RPE8に戻れた
  • 無理をして3週間休むより、10kg軽くして1日乗り切るほうが長期的に得

「RPEは『今日の自分に合った最適解』を毎回導いてくれる保険。」

例3:チーム全員にRPEを導入したラグビー部でケガが40%減少

状況: 大学ラグビー部30人。トレーニング中のケガが年間15件。全員が同じ重量・回数のメニューをこなしていた。

RPE導入後の変更:

  • 全メニューに目標RPEを設定(メインRPE8、補助RPE7)
  • 選手ごとに重量が異なるのを許容
  • 毎セット後にRPEをシートに記録
  • コーチが週次でRPEの推移をチェック

1シーズン(6ヶ月)後:

  • トレーニング中のケガ: 15件 → 9件(40%減)
  • チーム全体のスクワット平均1RM: 120kg → 132kg(+10%)
  • 「いつもRPE9以上」で回復が追いつかない選手を早期発見し介入できた

「全員同じ重量」をやめただけで、安全性とパフォーマンスの両方が向上した。

やりがちな失敗パターン
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  1. 自己評価がズレている — 初心者はRPE 8のつもりがRPE 6だったりする。最初の1ヶ月は「限界まで」のセットを経験して基準を作る
  2. 毎セットRPE 10まで追い込む — 限界まで毎回やると回復が追いつかず停滞する。メインセットはRPE 8〜9に抑えるのが長期的に伸びるコツ
  3. 記録しない — RPEは記録して初めてトレンドが見える。「今日はキツかった」だけでは改善につながらない
  4. RPE 10を恐れすぎる — テスト日や1RMチャレンジではRPE 10が必要。普段は8で止め、ここぞという日に10を出すメリハリが大事

まとめ
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RPEスケールは 「自分の体に聞く」 技術。心拍計もパワーメーターも不要で、数秒で判断できる。筋トレではRPE 8(あと2回できるところで止める)を基本にし、体調に合わせて重量を柔軟に調整する。記録を続ければ成長の可視化にもなる。シンプルだが、これを使うだけでトレーニングの質が大きく変わる。