ひとことで言うと#
「今のセット、10段階でどのくらいキツかった?」を数値化する方法。心拍計やパワーメーターがなくても、自分の体感で運動強度を正確に管理できる。筋トレでは「あと何回できたか」で判断する修正版RPEが主流。シンプルだが、プロアスリートも愛用する実用的なツール。
押さえておきたい用語#
- RPE(Rating of Perceived Exertion)
- 運動中の主観的なきつさを数値化したスケールのこと。筋トレでは1〜10の10段階が一般的。
- RIR(Reps In Reserve)
- セット終了時の**「あと何回できたか」を示す余力回数**のこと。RPE8ならRIR2(あと2回できた)に相当する。
- ボルグスケール
- 元祖RPEスケールで、有酸素運動向けに6〜20の段階でキツさを評価する方法のこと。数値×10が概算心拍数になる。
- オートレギュレーション
- 事前に決めた重量に固執せず、その日の体調に合わせてRPEで重量を自動調整するトレーニング手法を指す。
RPEスケールの全体像#
こんな悩みに効く#
- 筋トレで毎回どのくらいの重さを持てばいいかわからない
- がんばりすぎてケガをしたり、逆に手を抜いてしまう
- 体調が日によって違うのに、同じメニューをこなそうとして辛い
基本の使い方#
筋トレで最もよく使われる「修正RPE(RIR方式)」を覚える。
| RPE | 意味 | あと何回できる?(RIR) |
|---|---|---|
| 10 | 限界(もう1回も無理) | 0回 |
| 9 | ほぼ限界 | あと1回 |
| 8 | かなりキツい | あと2回 |
| 7 | きつい | あと3回 |
| 6 | やや余裕あり | あと4回以上 |
| 5以下 | ウォームアップ程度 | 楽にできる |
RIR = Reps In Reserve(余力回数)。RPE8なら「あと2回はできたが、やらなかった」という意味。
毎セットを限界まで追い込む必要はない。目的に応じてRPEを使い分ける。
推奨RPE:
- 筋力向上(メインセット): RPE 8〜9
- 筋肥大(ボリュームセット): RPE 7〜8
- テクニック練習: RPE 5〜6
- デロード週: RPE 5〜6
ポイント: メインセットをRPE 8に設定すると、フォームが崩れない範囲で最大の刺激を与えられる。
RPEを使えば、その日の体調に合わせて重量を柔軟に変えられる。
実践方法:
- 今日のメニュー: ベンチプレス 5回 × 3セット @ RPE 8
- まず前回の重量(例: 80kg)でスタート
- 5回やってみて体感を確認
- 「あと3回はいけた」→ RPE 7 → 次セットで2.5kg増やす
- 「あと1回がギリギリ」→ RPE 9 → 次セットで2.5kg減らす
日によって同じ5回でも80kgだったり75kgだったりする。それでいい。 体調に合わせるのがRPEの真髄。
RPEを記録することで、長期的な傾向が見える。
記録例:
| 日付 | 種目 | 重量 | 回数 | RPE |
|---|---|---|---|---|
| 3/1 | スクワット | 100kg | 5回 | 8 |
| 3/8 | スクワット | 100kg | 5回 | 7 |
| 3/15 | スクワット | 102.5kg | 5回 | 8 |
同じ100kg×5回でもRPEが下がった = 筋力が伸びている証拠。重量を上げるタイミングがわかる。
具体例#
状況: ベンチプレス80kg×5回を3ヶ月間やり続けているが、82.5kgに上がらない。毎回限界までやって疲弊している。
RPEベースに変更:
- セット1: 80kg × 5回 @ RPE 7(余裕がある)
- セット2: 82.5kg × 5回 @ RPE 8(ちょうどいい)
- セット3: 80kg × 5回 @ RPE 8(疲労を考慮して戻す)
- 補助種目はRPE 7で3セット
6週間後:
- 82.5kg × 5回 @ RPE 8が安定
- 85kgに初挑戦して成功
- ケガなし、関節の痛みも消えた
毎回限界まで追い込むのをやめたら、かえって伸びた。RPEで「戦略的に余力を残す」ことの効果を実感。
状況: いつもスクワット100kg×5回@RPE8で行う。しかしこの日は睡眠4時間で体が重い。
RPEなしの場合(従来):
- 「100kgと決めたから100kgでやる」→ RPE10(限界超え)→ フォーム崩壊 → 腰を痛める可能性
RPEありの場合(実際の対応):
- ウォームアップで80kgがRPE7に感じる(いつもならRPE5)
- 本番を90kgに変更 → 5回 @ RPE 8に収まった
- 体を壊さずにトレーニングを完遂
結果:
- 翌週には100kg@RPE8に戻れた
- 無理をして3週間休むより、10kg軽くして1日乗り切るほうが長期的に得
「RPEは『今日の自分に合った最適解』を毎回導いてくれる保険。」
状況: 大学ラグビー部30人。トレーニング中のケガが年間15件。全員が同じ重量・回数のメニューをこなしていた。
RPE導入後の変更:
- 全メニューに目標RPEを設定(メインRPE8、補助RPE7)
- 選手ごとに重量が異なるのを許容
- 毎セット後にRPEをシートに記録
- コーチが週次でRPEの推移をチェック
1シーズン(6ヶ月)後:
- トレーニング中のケガ: 15件 → 9件(40%減)
- チーム全体のスクワット平均1RM: 120kg → 132kg(+10%)
- 「いつもRPE9以上」で回復が追いつかない選手を早期発見し介入できた
「全員同じ重量」をやめただけで、安全性とパフォーマンスの両方が向上した。
やりがちな失敗パターン#
- 自己評価がズレている — 初心者はRPE 8のつもりがRPE 6だったりする。最初の1ヶ月は「限界まで」のセットを経験して基準を作る
- 毎セットRPE 10まで追い込む — 限界まで毎回やると回復が追いつかず停滞する。メインセットはRPE 8〜9に抑えるのが長期的に伸びるコツ
- 記録しない — RPEは記録して初めてトレンドが見える。「今日はキツかった」だけでは改善につながらない
- RPE 10を恐れすぎる — テスト日や1RMチャレンジではRPE 10が必要。普段は8で止め、ここぞという日に10を出すメリハリが大事
まとめ#
RPEスケールは 「自分の体に聞く」 技術。心拍計もパワーメーターも不要で、数秒で判断できる。筋トレではRPE 8(あと2回できるところで止める)を基本にし、体調に合わせて重量を柔軟に調整する。記録を続ければ成長の可視化にもなる。シンプルだが、これを使うだけでトレーニングの質が大きく変わる。