リカバリースコア

英語名 Recovery Score
読み方 リカバリー スコア
難易度
所要時間 5〜10分(毎朝)
提唱者 WHOOP, Oura Ring 等のウェアラブルデバイスの普及とともに体系化
目次

ひとことで言うと
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心拍変動(HRV)・睡眠の質・主観的体調の3つの指標を毎朝スコア化し、その日のトレーニング強度を「追い込む・通常・軽め・休む」の4段階で判断する仕組み。WHOOPやOura Ringなどのウェアラブルデバイスの普及とともに広まったが、デバイスなしでも簡易版を実践できる。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
HRV(Heart Rate Variability / 心拍変動)
心拍の間隔のばらつきのこと。副交感神経が優位なほどばらつきが大きく、値が高いほど回復が進んでいるサイン。
rMSSD
HRVの代表的な指標で、連続する心拍間隔の差の二乗平均平方根。ウェアラブルデバイスが多く採用する計測値。
睡眠効率(Sleep Efficiency)
ベッドにいた時間のうち、実際に眠っていた割合。85%以上が良好とされる。
RPE(Rating of Perceived Exertion)
運動の主観的きつさを1〜10で評価する尺度。リカバリースコアと組み合わせて負荷管理に使う。
スーパーコンペンセーション(超回復)
適切な負荷と回復のサイクルにより、トレーニング前より高いレベルにパフォーマンスが上がる現象。

リカバリースコアの全体像
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リカバリースコア:3指標を統合して今日の行動を決める
3指標 → リカバリースコア → 行動判断HRV(心拍変動)起床直後に測定個人平均より高い→回復◎個人平均より低い→回復△睡眠の質と量睡眠時間+睡眠効率7h以上+効率85%↑→◎6h未満 or 効率75%↓→△主観的体調気分・筋肉痛・食欲5段階で自己評価3以上→◎ / 2以下→△リカバリースコア0〜100(3指標の加重平均)0〜33: 休む完全休養 or 軽い散歩34〜55: 軽め低強度の有酸素運動56〜79: 通常計画通りのメニュー80〜100: 追込み高強度・PR挑戦OKスコアに応じて強度を自動調整 → オーバートレーニングを予防しながら成長を最大化※ウェアラブルデバイスがなくても、簡易版(後述)で実践可能
リカバリースコアの活用フロー
1
起床直後に測定
HRV・睡眠データ・主観を記録
2
スコアを算出
3指標を加重平均して0〜100に変換
3
行動を決定
スコアに応じて強度を4段階で選択
週次トレンド確認
7日平均で疲労蓄積を早期発見

こんな悩みに効く
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  • 疲労が溜まっているのに「サボっている気がして」休めない
  • トレーニングの強度を感覚で決めていて、追い込みすぎたり甘すぎたりする
  • オーバートレーニングで体調を崩した経験がある
  • ウェアラブルデバイスの数値をどう活用すればいいかわからない

基本の使い方
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毎朝3つの指標を記録する

起床後5分以内に以下を記録する。

  • HRV: ウェアラブルデバイスの値を記録(デバイスがない場合は安静時心拍数で代用。低いほど回復◎)
  • 睡眠: 睡眠時間と睡眠効率(デバイスの自動記録、またはベッドイン〜起床の差分)
  • 主観: 気分・筋肉痛・食欲・モチベーションを1〜5の5段階で自己評価
スコアを算出する

3指標をそれぞれ0〜100に変換し、加重平均する。

  • HRV(40%): 個人の7日平均を基準に、±の偏差でスコア化。平均以上=70〜100、やや下=40〜69、大幅下=0〜39
  • 睡眠(35%): 7時間以上+効率85%以上=80〜100、6〜7時間=50〜79、6時間未満=0〜49
  • 主観(25%): 5段階評価を0〜100に変換(1=0, 2=25, 3=50, 4=75, 5=100)
  • デバイスなしの簡易版: 主観を50%に、安静時心拍を30%に、睡眠時間を20%に配分
スコアに基づいて行動を選ぶ

算出したスコアで今日の運動強度を決定する。

  • 80〜100(グリーン): 高強度OK。HIIT、重量挙げのPR挑戦、インターバル走など
  • 56〜79(イエロー): 通常強度。計画通りのメニューを実施
  • 34〜55(オレンジ): 軽め。Zone2の有酸素、ヨガ、軽いストレッチ
  • 0〜33(レッド): 完全休養または散歩程度。身体の回復を最優先
週次でトレンドを確認する

毎週末に7日分のスコア推移を振り返る。

  • 7日平均が50を下回り続けている場合は慢性疲労のサイン。1週間のディロード(負荷軽減)を検討
  • 逆に7日平均が80以上なら、トレーニング負荷を上げる余地がある
  • スコアの推移と体重・パフォーマンスの変化を照合し、スコアリングの精度を検証する

具体例
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例1:週4回トレーニングする会社員がオーバートレーニングを防ぐ

35歳、週4回の筋トレ。Oura Ringを使用。先月から記録が右肩下がりだった。

ある週のリカバリースコア推移:

曜日HRV(ms)睡眠主観スコア行動
52(平均)7.2h/88%472通常:上半身の筋トレ
38(低い)5.8h/72%235軽め:軽い散歩30分
45(やや低)7.5h/90%358通常:下半身の筋トレ
55(高い)7.8h/92%585追込み:デッドリフトPR
35(低い)6.2h/78%232休養:完全オフ
48(平均)8.0h/91%472通常:有酸素+軽い筋トレ
50(平均)7.5h/89%470軽め:ヨガ

火曜日にスコアが急落したのは、月曜の筋トレ後に睡眠が短くなったため。以前はここで「予定だから」と通常強度でやっていたが、スコアに従って軽めに変更。結果、木曜にスコア85で追い込み日を確保でき、デッドリフトで5kgの自己記録を更新できた。

例2:マラソンランナーがレース4週前のテーパリングを最適化する

42歳、フルマラソンのタイム目標は3時間30分。レース4週前からテーパリング(練習量を減らす)に入るが、どこまで減らすかの判断基準がなかった。

リカバリースコアを使ったテーパリング:

週平均スコア走行距離強度調整
4週前5560km通常:ポイント練習は維持
3週前6245kmやや軽め:ロング走を15kmに短縮
2週前7035km軽め:ジョグ中心
1週前8220km軽め+REST:刺激入れのみ
レース当日88最高の状態でスタート

4週前はスコアが低かったため、強度を落とすタイミングが1週早いことを検知。3週前から意図的に距離を減らした結果、レース当日のスコアが88まで回復。目標を上回る3時間24分でフィニッシュできた。

例3:デバイスなしの簡易版で体調管理を始めた50代

52歳、運動初心者。ウェアラブルデバイスは持っていないが、健康のために週3回のウォーキングとジムを始めた。

簡易版リカバリースコア(10点満点):

  • 安静時心拍(指で15秒測定×4): 平均以下=3点、平均=2点、平均以上=1点
  • 睡眠時間: 7h以上=3点、6〜7h=2点、6h未満=1点
  • 主観(気分+筋肉痛+やる気の平均): 良好=4点、普通=3点、不調=1〜2点

スコアと行動:

  • 8〜10点: ジムで筋トレ+有酸素30分
  • 5〜7点: ウォーキング30〜45分
  • 1〜4点: ストレッチのみ or 完全休養

3か月間のデータを蓄積した結果:

  • 週3回の運動が**週2.5回(月10回)**に自動調整された
  • 「体調が悪い日は休む」を数値で判断できるようになり、罪悪感なく休養を取れるようになった
  • 始めた当初は安静時心拍76bpmだったのが、3か月後に68bpmに低下。回復力の改善が数値で確認できた

やりがちな失敗パターン
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  1. スコアが低くても「予定だから」とトレーニングする — スコアに基づいて強度を変える柔軟性がないと、リカバリースコアを導入する意味がない。「計画は目安、スコアが判断基準」の原則を守る
  2. HRVだけで判断する — HRVは強力な指標だが、睡眠不足や精神的ストレスを拾えないこともある。必ず3指標を組み合わせる
  3. 他人の数値と比較する — HRVの絶対値は個人差が大きい。大事なのは自分の7日平均からの偏差。他人のスコアと比べて一喜一憂しない
  4. データを記録するだけで行動を変えない — スコアを見るだけで満足し、実際のトレーニングに反映しないのは記録の浪費。「スコア→行動変更」を必ずセットにする

まとめ
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リカバリースコアは、HRV・睡眠・主観の3指標を毎朝スコア化し、今日のトレーニング強度を客観的に判断する仕組みだ。高スコアの日に追い込み、低スコアの日に休む――この当たり前のことを「数値」で裏付けることで、オーバートレーニングを防ぎながら超回復を最大化できる。デバイスがなくても安静時心拍と主観評価で簡易版を作れるため、まずは2週間記録をつけて自分のベースラインを知ることから始めたい。