ひとことで言うと#
1日のたんぱく質・脂質・炭水化物の**目標量(マクロ)**さえ守れば、食べるものは自由に選んでよいという栄養管理アプローチ。「鶏むね肉しかダメ」のような食品の良し悪しではなく、数値で判断する。
押さえておきたい用語#
- マクロ栄養素(Macronutrients)
- たんぱく質(P)・脂質(F)・炭水化物(C)の3大栄養素。体に必要なエネルギーの大部分を供給する。
- TDEE(Total Daily Energy Expenditure)
- 1日の総消費カロリー。基礎代謝+活動代謝+食事誘発性熱産生の合計で、マクロ設定の出発点になる。
- PFCバランス
- たんぱく質(Protein)・脂質(Fat)・炭水化物(Carbohydrate)の摂取割合を指す。IIFYMではグラム単位で管理する。
- フレキシブルダイエティング
- 特定の食品を禁止せず、マクロ栄養素の数値目標に沿って食事を組み立てる考え方。IIFYMの別名として使われる。
- カロリー収支
- 摂取カロリーと消費カロリーの差。減量にはマイナス収支(摂取<消費)が必須である。
IIFYMの全体像#
こんな悩みに効く#
- 「あれもダメ、これもダメ」の食事制限でストレスが溜まり、リバウンドを繰り返す
- ダイエット中でも好きなものを食べたいが、無計画だと痩せられない
- 筋トレをしているが、食事管理が厳しすぎて続かない
基本の使い方#
具体例#
28歳男性、体重78kg、身長172cm。週3回のジム通いを始めたが食事管理が分からず、体重が3か月間変わらなかった。
TDEE 2,400kcalと算出し、−400kcalの2,000kcalを目標に設定。PFC配分は以下の通り。
| 栄養素 | 目標量 | カロリー換算 |
|---|---|---|
| たんぱく質 | 150g | 600kcal |
| 脂質 | 55g | 495kcal |
| 炭水化物 | 226g | 905kcal |
「昼食にラーメンを食べても、夕食で調整すれば問題ない」という柔軟さが気持ちを楽にし、12週間で体重78kg → 72.5kg、体脂肪率22% → 17.8%。ベンチプレスは5kg伸びた。
34歳女性、管理栄養士。産後8か月で授乳中。専門知識はあるが「食べてはいけないもの」を気にしすぎてストレスが増し、夜中の間食が止まらなくなっていた。
授乳中のTDEE 2,100kcalに対し、緩やかな−200kcalの1,900kcalで設定。たんぱく質は体重55kg × 1.8g = 100g、脂質53g、炭水化物235g。「好きなパンも菓子もマクロに収まればOK」とルールを切り替えたところ、夜間の過食衝動が週5回 → 週1回に減少。
8週間で体重は2.4kg減り、母乳の量にも変化なし。本人いわく「禁止を手放したら逆にジャンクフードへの執着が薄れた」。
部員42名の公立高校硬式野球部。従来は「白米をたくさん食べろ」の一辺倒で、たんぱく質不足と体脂肪過多が課題だった。
外部トレーナーがIIFYMの考え方を導入し、選手ごとにPFC目標を設定。体重75kgの選手なら「P 135g / F 65g / C 350g」を目安とし、学食・コンビニ・自宅食を組み合わせて達成する方針にした。
| 指標 | 導入前 | 6か月後 |
|---|---|---|
| チーム平均体脂肪率 | 19.2% | 15.8% |
| チーム平均除脂肪体重 | 58.1kg | 60.4kg |
| 30m走タイム平均 | 4.38秒 | 4.21秒 |
食事の自由度が高いため選手の離脱はゼロ。「コンビニのサラダチキンでPを稼いで、残りの枠で好きなもの食べていい」という分かりやすさが高校生に刺さった。
やりがちな失敗パターン#
- マクロさえ合えば栄養は無視してよいと誤解する — PFCが揃っていてもビタミン・ミネラル・食物繊維が不足すれば体調は崩れる。8割はホールフード(加工度の低い食品)から摂るのが現実的。
- たんぱく質の設定が低すぎる — 体重×1.0g程度では減量時に筋肉が落ちやすい。トレーニングしているなら最低1.6g/kgを確保する。
- 毎日の数字に一喜一憂する — 1日のズレは問題にならない。週平均でマクロに収まっていればOK。日ごとの±10%の振れは許容範囲。
- 食事記録を数週間で止めてしまう — 記録が面倒になったら、全食品でなく「たんぱく質だけ記録」に簡略化する。完全にやめるとカロリー過剰に戻りやすい。
まとめ#
IIFYMは 「何を食べるか」 ではなく 「どれだけ食べるか」 を数値で管理するアプローチであり、食品の禁止リストを作らないことが最大の特徴である。たんぱく質→脂質→炭水化物の順に目標グラム数を設定し、週単位で体重変化を評価・調整するサイクルを回す。柔軟性が高いぶん継続率に優れるが、微量栄養素の確保は別途意識する必要がある。