エキセントリックトレーニング

英語名 Eccentric Training
読み方 エキセントリック トレーニング
難易度
所要時間 30〜45分(1セッション)
提唱者 エルリング・アスミュッセン(1953年、エキセントリック収縮の研究)
目次

ひとことで言うと
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「下ろす動作(ネガティブ)」をゆっくり丁寧に行うトレーニング法。筋肉には「縮む(コンセントリック)」と「伸ばされる(エキセントリック)」の2つの動きがあり、エキセントリック局面の方がより大きな力を発揮でき、筋繊維への刺激も強い。「持ち上げる」だけでなく「下ろす」を意識するだけで、トレーニング効果が劇的に変わる。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
エキセントリック収縮(伸張性収縮)
筋肉が引き伸ばされながら力を発揮する収縮様式のこと。ベンチプレスでバーベルを胸に下ろす動作がこれにあたり、コンセントリックより約40%大きな力を出せる。
コンセントリック収縮(短縮性収縮)
筋肉が縮みながら力を発揮する収縮様式のこと。ベンチプレスでバーベルを押し上げる動作がこれにあたる。
DOMS(遅発性筋肉痛)
トレーニング後24〜72時間に現れる筋肉痛のこと。エキセントリックトレーニングでは通常より強く出やすいため、初回は控えめに始める必要がある。
テンポトレーニング
各動作の速度を秒数で指定してコントロールするトレーニング法のこと。「4-1-2-0」のように表記し、エキセントリック局面の秒数を意図的に長くする。

エキセントリックトレーニングの全体像
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3つの筋収縮タイプとエキセントリックの優位性
コンセントリック筋肉が縮む(上げる)発揮できる力: 100%バーベルを押し上げるアイソメトリック筋長が変わらない(止める)発揮できる力: 120%バーベルを途中で止めるエキセントリック筋肉が伸びる(下ろす)発揮できる力: 140%バーベルをゆっくり下ろす「下ろす」を丁寧にするだけでトレーニング効果が劇的に変わる
エキセントリックトレーニングの実践フロー
1
3つの収縮を理解
コンセントリック・アイソメトリック・エキセントリック
2
テンポコントロール
下ろす動作を3〜5秒かける
3
オーバーロード活用
MAX超の重量でネガティブレップ
4
筋力・腱の強化
停滞打破・腱障害リハビリにも有効

こんな悩みに効く
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  • 同じ重量でトレーニングを続けて伸び悩んでいる
  • アキレス腱や膝蓋腱の痛みがなかなか治らない
  • 筋トレの動作が雑で、効いている感覚がない

基本の使い方
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ステップ1: 3つの筋収縮を理解する

筋肉の動きには3種類ある。

収縮タイプ動きベンチプレスでの例発揮できる力
コンセントリック(短縮性)筋肉が縮むバーベルを押し上げる100%
アイソメトリック(等尺性)筋肉の長さ変わらずバーベルを途中で止める120%
エキセントリック(伸張性)筋肉が伸ばされるバーベルを胸に下ろす140%

エキセントリックは通常のコンセントリックより40%も大きな力を出せる。 つまり、持ち上げられない重量でもゆっくり下ろすことは可能。この特性を活かすのがエキセントリックトレーニング。

ステップ2: テンポコントロールで実践する

既存のトレーニングの「下ろす局面」を意識的にゆっくり行う。

テンポ表記の読み方(例: 4-1-2-0):

  • 4秒: エキセントリック(下ろす)
  • 1秒: ボトムで静止
  • 2秒: コンセントリック(上げる)
  • 0秒: トップで休まず

主要種目のエキセントリック強調テンポ:

種目通常テンポエキセントリック強調テンポ
ベンチプレス2-0-1-04-1-2-0
スクワット2-0-1-04-1-2-0
懸垂2-0-1-05-1-1-0
ルーマニアンデッドリフト2-0-1-04-1-2-0

初めてなら、まず「下ろす動作を3秒かける」から始める。 いきなり5秒は筋肉痛がひどくなりすぎることがある。

ステップ3: エキセントリック・オーバーロードを活用する

より上級者向け。通常のMAX以上の重量で「下ろすだけ」のトレーニングを行う。

方法1: ネガティブ・レップ(パートナー必須)

  1. 1RMの105〜120%の重量を設定
  2. パートナーに持ち上げるのを手伝ってもらう
  3. 自分は5秒かけてゆっくり下ろすだけ
  4. 3〜5レップ × 2〜3セット

方法2: エキセントリック重視のドロップ

  1. 通常の重量でセットを行う
  2. コンセントリックが限界に来たら
  3. 重量を20%減らして、3秒ネガティブだけを3レップ追加

方法3: 片脚/片腕エキセントリック

  • 両足でジャンプして台に上がり、片足でゆっくり下りる
  • 両手で持ち上げ、片手でゆっくり下ろす

頻度: エキセントリック・オーバーロードは筋肉への負担が大きいため、同部位で週1回まで

ステップ4: 腱のリハビリにも活用する

エキセントリックトレーニングは腱障害(アキレス腱炎、膝蓋腱炎など)のリハビリに最も効果的。

アキレス腱炎のエキセントリックプロトコル(アルフレッドソン法):

  1. 階段のステップに前足部で立つ
  2. 両足で持ち上げる
  3. 痛い方の足だけでゆっくり5秒かけて踵を下げる
  4. 15回 × 3セット × 1日2回
  5. 12週間継続

注意: 軽い痛みは許容するが、強い痛みが出る場合は医師に相談。

具体例
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例1:エキセントリックに集中したらベンチプレスが10kg伸びた30代男性

状況: ベンチプレスMAX 90kgで半年停滞。重いセットになるとバーを「落とすように」下ろしてしまい、バウンドさせて上げるクセがあった。

エキセントリック改善プログラム(6週間):

  • 週2回のベンチプレスのうち1回をエキセントリック重視に変更
  • セット1-3: 75kg × 5回(テンポ4-1-2-0。下ろしに4秒)
  • セット4: 95kg × 3回ネガティブのみ(パートナーのサポートで上げ、4秒で下ろす)

変化:

  • 2週目: 筋肉痛がこれまでと明らかに違う箇所に出た
  • 4週目: 90kg × 1回がスムーズになった(下ろしが安定)
  • 6週目: 100kg × 1回成功(+10kg)

「下ろす動作」を丁寧にしたら、「上げる力」も伸びた。バーのコントロール力が根本的に変わった。

例2:アキレス腱炎がエキセントリックプロトコルで完治した45歳ランナー

状況: 週4回ランニング。半年前からアキレス腱に痛みが出始め、走り始めの1kmが特に辛い。整形外科で「アキレス腱炎」と診断され、安静を勧められたが改善しない。

アルフレッドソン法の導入:

  • 階段のステップで片足エキセントリック・ヒールドロップを開始
  • 15回 × 3セット × 1日2回(朝・夜)
  • 最初の2週間は体重のみ。3週目からリュック(3kg)を背負って負荷を追加
  • ランニングは痛みレベル3/10以下なら継続OK

12週間後:

  • 痛みレベル: 走り始め7/10 → 1/10(ほぼ無痛)
  • ランニング距離: 週15km(痛みで制限) → 週35km(制限なし)
  • 10kmレース復帰、タイムはケガ前と同等

安静だけでは治らなかったアキレス腱炎が、「負荷をかけながら治す」エキセントリックで完治。腱は適度な負荷で強くなる。

例3:60代女性がエキセントリック・スクワットで階段の昇降が楽になった

状況: 65歳女性。膝の変形性関節症で、階段の下りが特に辛い。筋力低下を実感し、椅子からの立ち上がりにも手すりが必要。整形外科で「筋力をつけましょう」と言われたが、普通のスクワットは膝が痛い。

エキセントリック・スクワット導入:

  • 椅子の前に立ち、5秒かけてゆっくり座る(下ろすだけのスクワット)
  • 立ち上がりは手すりを使ってOK
  • 10回 × 2セット × 週3回
  • 4週目から椅子の高さを低くして負荷を増加

8週間後:

  • 大腿四頭筋の筋力(レッグプレス): 20kg → 32kg(+60%)
  • 階段の下り: 「一段ずつゆっくり」→ 「普通に下りられる」
  • 椅子からの立ち上がり: 手すり必須 → 手すりなしで可能
  • 膝の痛み(VAS): 6/10 → 3/10

「上げる」ことが難しくても「下ろす」ことはできる。エキセントリックは高齢者やリハビリ中の人にこそ有効な方法。

やりがちな失敗パターン
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  1. 筋肉痛を甘く見る — エキセントリック後の筋肉痛(DOMS)は通常より強い。初回は控えめに始め、回復に3〜4日かかることを想定する
  2. 毎セットをエキセントリック強調にする — エキセントリック・オーバーロードは週1回の特定セットだけで十分。毎回やると回復が間に合わない
  3. 重すぎる重量でコントロールを失う — ネガティブ・レップで重量が重すぎると関節を痛める。「ゆっくり下ろせる重量」が適切な重量
  4. 「下ろす」だけに偏りすぎる — エキセントリックは強力だが、コンセントリックも筋力発達に必要。通常のトレーニングの一部としてエキセントリックを追加するのが正解

まとめ
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エキセントリックトレーニングは 「下ろす動作」 に注目するだけで、トレーニング効果を大幅に高める方法。既存の種目で下ろしに3〜4秒かけるだけの簡単な変更から始められる。筋力・筋肥大の停滞打破、腱のリハビリにも科学的に効果が実証されている。「上げること」だけに集中していた人こそ、「下ろすこと」の価値に気づくはず。