トレンドフォロー戦略

英語名 Trend Following Strategy
読み方 トレンド フォローイング ストラテジー
難易度
所要時間 1〜2時間
提唱者 リチャード・ドンチャン(1960年代)、タートルズ(1983年)
目次

ひとことで言うと
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価格が上昇トレンドなら買い、下降トレンドなら売るというシンプルなルールに従い、相場予測ではなくモメンタム(勢い)に追随する投資手法。感情を排除し、ルールベースで機械的に売買する。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
トレンドフォロー
価格が一方向に動き続ける「トレンド」に乗って利益を狙う順張り戦略。「流れに逆らわない」が基本姿勢。
移動平均線(Moving Average)
過去N日間の平均価格を線で結んだもの。トレンドの方向を視覚化するためのテクニカル指標。
ゴールデンクロス / デッドクロス
短期移動平均線が長期移動平均線を上抜けたら買いシグナル(ゴールデンクロス)、下抜けたら売りシグナル(デッドクロス)
ドローダウン
ピークからの最大下落幅のこと。トレンドフォローはトレンド転換時に一定のドローダウンを許容する設計になっている。

トレンドフォロー戦略の全体像
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トレンドフォロー:移動平均のクロスでエントリーとイグジットを判断
買いシグナル短期MA(50日)が長期MA(200日)を上抜け→ ゴールデンクロスで購入上昇トレンド開始の目安売りシグナル短期MA(50日)が長期MA(200日)を下抜け→ デッドクロスで売却下降トレンド開始の目安買い売り短期MA長期MAトレンドに乗り、転換で降りる。予測ではなくルールに従う
トレンドフォロー戦略の実行フロー
1
ルールを決定
移動平均の期間とクロス条件を設定
2
シグナルを監視
週次 or 月次でクロスを確認
3
機械的に売買
シグナルが出たら感情に関係なく実行
ルールの遵守
例外を作らず、ルール通りに続ける

こんな悩みに効く
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  • 暴落のたびにパニック売りしてしまい、回復後に後悔する
  • 「いつ買っていつ売ればいいか」の基準が感覚に頼りきり
  • バイ&ホールドだと暴落で資産が半減するリスクに耐えられない

基本の使い方
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移動平均のパラメータを決める

最もシンプルな設定は50日移動平均線と200日移動平均線の組み合わせ。

  • 買い: 50日MAが200日MAを上抜け(ゴールデンクロス)
  • 売り: 50日MAが200日MAを下抜け(デッドクロス)
  • 月次チェックでも十分機能する(月末の終値で判断)

長期投資家は10ヶ月移動平均線(約200日に相当)だけを使うシンプル版もある。価格が10ヶ月MAを上回っていれば保有、下回れば売却。

対象資産を選び、バックテストで確認する
対象相性理由
株式指数(S&P500、TOPIX)トレンドが明確に出やすい
金・コモディティ長期トレンドが発生する
個別株ノイズが多くダマシが頻発
短期国債×値動きが小さすぎてシグナルが出ない

過去20年のデータでバックテストし、バイ&ホールドとの比較、最大ドローダウンを確認する。

ルールに忠実に実行する

トレンドフォローの最大の敵は「自分自身」。

  • シグナルが出たら翌営業日に必ず実行する
  • 「もう少し様子を見よう」は禁止。ルール違反の始まり
  • 売却後にさらに上がっても気にしない。トレンドフォローは「すべてを取る」戦略ではない
  • レンジ相場(横ばい)ではダマシが連発する。ここを耐えられるかが継続のカギ

具体例
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例1:S&P500の10ヶ月移動平均でリーマンショックを回避できたか

ルール: 月末にS&P500が10ヶ月MAを下回ったら全額売却、上回ったら買い戻す

2007〜2009年のシミュレーション

時期アクションS&P500
2007年12月10ヶ月MA下回る → 売却1,468
2008年(暴落中)現金で待機最安値683
2009年7月10ヶ月MA上回る → 買い戻し987

バイ&ホールドの場合: 1,468 → 683 → 最終的に回復まで約5年 トレンドフォローの場合: 1,468で売却 → 987で買い戻し → 下落の53%を回避

ただし2008年末の反発(ベアマーケットラリー)で一度買い戻しのダマシが発生し、小さな損失(約4%)を被っている。それでも全体のドローダウンは −15% に抑えられた(バイ&ホールドは−54%)。

例2:日本株投資家がTOPIXにトレンドフォローを適用する

ルール: 50日MAと200日MAのクロスで売買。対象はTOPIX連動ETF

2020年コロナショックでの動き

日付イベントTOPIX
2020年2月28日デッドクロス発生 → 売却1,510
2020年3月19日底値1,236
2020年6月12日ゴールデンクロス → 買い戻し1,558

売却時1,510 → 買い戻し時1,558で、暴落を回避しつつ小幅なプラスで再参入。バイ&ホールドは2月〜3月に −24% の含み損を抱えた。メンタル面の負荷が圧倒的に違う。

ただし2019年の小幅なダマシ(1回)で −3% のロスが発生しており、レンジ相場ではコストがかかることも確認できた。

例3:金(ゴールド)のトレンドフォローで10年運用した結果

ルール: 金ETFの月末価格が10ヶ月MAを上回っていれば保有、下回れば売却し短期国債に退避

2014〜2024年のバックテスト結果

指標トレンドフォローバイ&ホールド
年平均リターン6.8%7.2%
最大ドローダウン−11%−21%
市場参加期間全体の68%100%

リターンはバイ&ホールドにやや劣るが、最大ドローダウンが半分。市場に参加していない32%の期間は短期国債で利息を得ている。「大暴落を避けて、程よいリターンを得る」というトレンドフォローの本質がよく表れている結果だ。

やりがちな失敗パターン
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  1. ダマシが続くと自分でルールを変えてしまう — レンジ相場では3〜5回連続でダマシが出ることがある。ここでルールを変えると、次の本物のトレンドを逃す
  2. 売却後に上がり続けると「早まった」と後悔する — トレンドフォローは頭と尻尾をくれてやる戦略。天井で売ることは目的ではない
  3. 個別株に適用してしまう — 個別株はノイズが多く、移動平均のクロスが頻発する。株式指数やETFに使うのが基本
  4. 短期の移動平均を使いすぎる — 5日×20日のような短期設定はシグナルが多すぎて取引コストがかさむ。月次チェックで十分

まとめ
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トレンドフォロー戦略は 「上がっているものを持ち、下がり始めたら手放す」 という人間の直感に合った手法。移動平均線のクロスという明確なルールがあるため、感情的な売買を排除できる。バイ&ホールドと比べてリターンはやや劣ることが多いが、暴落時のドローダウンを大幅に抑えられるのが最大の強み。ルールを決めたら、ダマシが続いても 「ルール通りに続ける」 ことだけが成功条件になる。