ひとことで言うと#
価格が上昇トレンドなら買い、下降トレンドなら売るというシンプルなルールに従い、相場予測ではなくモメンタム(勢い)に追随する投資手法。感情を排除し、ルールベースで機械的に売買する。
押さえておきたい用語#
- トレンドフォロー
- 価格が一方向に動き続ける「トレンド」に乗って利益を狙う順張り戦略。「流れに逆らわない」が基本姿勢。
- 移動平均線(Moving Average)
- 過去N日間の平均価格を線で結んだもの。トレンドの方向を視覚化するためのテクニカル指標。
- ゴールデンクロス / デッドクロス
- 短期移動平均線が長期移動平均線を上抜けたら買いシグナル(ゴールデンクロス)、下抜けたら売りシグナル(デッドクロス)。
- ドローダウン
- ピークからの最大下落幅のこと。トレンドフォローはトレンド転換時に一定のドローダウンを許容する設計になっている。
トレンドフォロー戦略の全体像#
こんな悩みに効く#
- 暴落のたびにパニック売りしてしまい、回復後に後悔する
- 「いつ買っていつ売ればいいか」の基準が感覚に頼りきり
- バイ&ホールドだと暴落で資産が半減するリスクに耐えられない
基本の使い方#
最もシンプルな設定は50日移動平均線と200日移動平均線の組み合わせ。
- 買い: 50日MAが200日MAを上抜け(ゴールデンクロス)
- 売り: 50日MAが200日MAを下抜け(デッドクロス)
- 月次チェックでも十分機能する(月末の終値で判断)
長期投資家は10ヶ月移動平均線(約200日に相当)だけを使うシンプル版もある。価格が10ヶ月MAを上回っていれば保有、下回れば売却。
| 対象 | 相性 | 理由 |
|---|---|---|
| 株式指数(S&P500、TOPIX) | ◎ | トレンドが明確に出やすい |
| 金・コモディティ | ○ | 長期トレンドが発生する |
| 個別株 | △ | ノイズが多くダマシが頻発 |
| 短期国債 | × | 値動きが小さすぎてシグナルが出ない |
過去20年のデータでバックテストし、バイ&ホールドとの比較、最大ドローダウンを確認する。
トレンドフォローの最大の敵は「自分自身」。
- シグナルが出たら翌営業日に必ず実行する
- 「もう少し様子を見よう」は禁止。ルール違反の始まり
- 売却後にさらに上がっても気にしない。トレンドフォローは「すべてを取る」戦略ではない
- レンジ相場(横ばい)ではダマシが連発する。ここを耐えられるかが継続のカギ
具体例#
ルール: 月末にS&P500が10ヶ月MAを下回ったら全額売却、上回ったら買い戻す
2007〜2009年のシミュレーション
| 時期 | アクション | S&P500 |
|---|---|---|
| 2007年12月 | 10ヶ月MA下回る → 売却 | 1,468 |
| 2008年(暴落中) | 現金で待機 | 最安値683 |
| 2009年7月 | 10ヶ月MA上回る → 買い戻し | 987 |
バイ&ホールドの場合: 1,468 → 683 → 最終的に回復まで約5年 トレンドフォローの場合: 1,468で売却 → 987で買い戻し → 下落の53%を回避
ただし2008年末の反発(ベアマーケットラリー)で一度買い戻しのダマシが発生し、小さな損失(約4%)を被っている。それでも全体のドローダウンは −15% に抑えられた(バイ&ホールドは−54%)。
ルール: 50日MAと200日MAのクロスで売買。対象はTOPIX連動ETF
2020年コロナショックでの動き
| 日付 | イベント | TOPIX |
|---|---|---|
| 2020年2月28日 | デッドクロス発生 → 売却 | 1,510 |
| 2020年3月19日 | 底値 | 1,236 |
| 2020年6月12日 | ゴールデンクロス → 買い戻し | 1,558 |
売却時1,510 → 買い戻し時1,558で、暴落を回避しつつ小幅なプラスで再参入。バイ&ホールドは2月〜3月に −24% の含み損を抱えた。メンタル面の負荷が圧倒的に違う。
ただし2019年の小幅なダマシ(1回)で −3% のロスが発生しており、レンジ相場ではコストがかかることも確認できた。
ルール: 金ETFの月末価格が10ヶ月MAを上回っていれば保有、下回れば売却し短期国債に退避
2014〜2024年のバックテスト結果
| 指標 | トレンドフォロー | バイ&ホールド |
|---|---|---|
| 年平均リターン | 6.8% | 7.2% |
| 最大ドローダウン | −11% | −21% |
| 市場参加期間 | 全体の68% | 100% |
リターンはバイ&ホールドにやや劣るが、最大ドローダウンが半分。市場に参加していない32%の期間は短期国債で利息を得ている。「大暴落を避けて、程よいリターンを得る」というトレンドフォローの本質がよく表れている結果だ。
やりがちな失敗パターン#
- ダマシが続くと自分でルールを変えてしまう — レンジ相場では3〜5回連続でダマシが出ることがある。ここでルールを変えると、次の本物のトレンドを逃す
- 売却後に上がり続けると「早まった」と後悔する — トレンドフォローは頭と尻尾をくれてやる戦略。天井で売ることは目的ではない
- 個別株に適用してしまう — 個別株はノイズが多く、移動平均のクロスが頻発する。株式指数やETFに使うのが基本
- 短期の移動平均を使いすぎる — 5日×20日のような短期設定はシグナルが多すぎて取引コストがかさむ。月次チェックで十分
まとめ#
トレンドフォロー戦略は 「上がっているものを持ち、下がり始めたら手放す」 という人間の直感に合った手法。移動平均線のクロスという明確なルールがあるため、感情的な売買を排除できる。バイ&ホールドと比べてリターンはやや劣ることが多いが、暴落時のドローダウンを大幅に抑えられるのが最大の強み。ルールを決めたら、ダマシが続いても 「ルール通りに続ける」 ことだけが成功条件になる。