ひとことで言うと#
投資でどれだけリスクを取れるかを「気持ち」ではなく年齢・収入・資産・家族構成・投資期間などの客観的条件から評価するフレームワーク。「リスク許容度(取りたいリスク)」と「リスク容量(取れるリスク)」を分けて考える。
押さえておきたい用語#
- リスク容量(Risk Capacity)
- 経済的な状況から客観的に取れるリスクの上限。収入の安定性、資産額、投資期間、負債の有無で決まる。
- リスク許容度(Risk Tolerance)
- 投資家本人が心理的に耐えられるリスクの程度を指す。同じ経済状況でも、性格によって許容度は異なる。
- リスクの必要性(Risk Required)
- 目標リターンを達成するために最低限取る必要があるリスクのこと。老後資金の目標額から逆算して求める。
- アセットアロケーション
- 株式・債券・現金などの資産配分比率。リスクアセスメントの結果に基づいて決定する。
リスク許容度アセスメントの全体像#
こんな悩みに効く#
- 「自分にはどれくらいの株式比率が適切なのか」がわからない
- 暴落で怖くなって全部売ってしまった経験がある
- ネットの情報で「若いなら株式100%でOK」と言われたが本当に大丈夫か不安
基本の使い方#
以下の5項目でスコアリングする(各1〜5点、合計で判定)。
| 項目 | 高スコア(リスク取れる) | 低スコア(リスク取れない) |
|---|---|---|
| 年齢 | 25〜35歳 | 55歳以上 |
| 収入の安定性 | 公務員・大企業正社員 | フリーランス・非正規 |
| 緊急予備資金 | 生活費12ヶ月以上 | 3ヶ月未満 |
| 投資期間 | 20年以上 | 5年以内 |
| 負債 | なし | 住宅ローン+教育ローン |
合計20点以上: 株式70〜90%可、15〜19点: 株式50〜70%、14点以下: 株式30〜50%
過去の行動が最も信頼できる指標。
- 2020年3月(コロナショック)に投資していた場合、どう行動したか?
- 全部売った → 許容度:低
- 何もしなかった → 許容度:中
- 買い増した → 許容度:高
- 「投資額が30%下がっても5年間待てるか?」に即答でYesと言えるかどうか
リスク容量・許容度・必要性のうち、最も低いものに合わせるのが原則。
| ケース | 判断 |
|---|---|
| 容量>許容度>必要性 | 許容度に合わせる。無理なリスクは継続できない |
| 必要性>容量 | 目標を下げるか、積立額を増やす。リスクを無理に取らない |
| 容量>必要性>許容度 | まず少額で投資を始め、経験を積んで許容度を上げる |
具体例#
リスク容量の評価
| 項目 | スコア | 理由 |
|---|---|---|
| 年齢 | 5 | 28歳、投資期間30年以上 |
| 収入安定性 | 4 | メーカー正社員 |
| 緊急予備資金 | 2 | 貯蓄60万円(生活費3ヶ月分) |
| 投資期間 | 5 | 定年まで32年 |
| 負債 | 4 | 奨学金残り50万円のみ |
| 合計 | 20点 | 株式70〜90%が可能 |
リスク許容度: 投資経験ゼロ、株が30%下がる想像をすると不安 → 低〜中
判断: リスク容量は高いが許容度が低い。まず**株式60%・債券40%**でスタートし、1年間の値動きを体験してから比率を見直す。最初から株式90%にすると、暴落で退場するリスクが高い。
リスク容量の評価
| 項目 | スコア | 理由 |
|---|---|---|
| 年齢 | 3 | 45歳、投資期間15〜20年 |
| 収入安定性 | 2 | フリーランス、収入変動大 |
| 緊急予備資金 | 4 | 貯蓄500万円(生活費18ヶ月分) |
| 投資期間 | 3 | 65歳まで20年 |
| 負債 | 5 | なし |
| 合計 | 17点 | 株式50〜70%が適切 |
リスクの必要性: 現在の運用資産800万円、月5万円積立、20年で3,000万円 → 必要リターン年 5.5% → 株式比率60%以上が必要
判断: 容量と必要性がほぼ一致。**株式60%・債券30%・現金10%**で設計。ただしフリーランスは収入減リスクが高いため、生活費12ヶ月分の現金は投資に回さない鉄則を守る。
リスク容量の評価
| 項目 | スコア | 理由 |
|---|---|---|
| 年齢 | 2 | 58歳、退職まで2年 |
| 収入安定性 | 3 | 大企業だが定年間近 |
| 緊急予備資金 | 5 | 預金800万円 |
| 投資期間 | 2 | 使い始めるまで5〜7年 |
| 負債 | 3 | 住宅ローン残り500万円 |
| 合計 | 15点 | 株式30〜50%が適切 |
現在の配分: 株式80%(3,200万円中2,560万円)。年齢に対して明らかにリスク過大。
退職直後にリーマンショック級(株式−50%)が来ると、2,560万円が1,280万円に。取り崩し計画が大幅に狂う。株式40%・債券45%・現金15% に段階的に移行し、退職前にリスクを下げておくべきだ。移行は一度にやらず、3〜6ヶ月かけて毎月リバランスする。
やりがちな失敗パターン#
- リスク容量だけで判断して許容度を無視する — 「若いから株100%」は計算上は正しくても、暴落で売却してしまえば最悪の結果になる。続けられる配分が正解
- リスク許容度を高く自己申告する — 実際に暴落を経験するまでは自分の許容度はわからない。過去の行動(暴落時にどうしたか)の方が信頼できる
- 退職直前まで高リスク配分のまま放置する — 退職後に暴落が来ると回復する時間がない。50歳を過ぎたら徐々にリスクを下げる「グライドパス」を意識する
- 定期的に見直さない — 結婚・出産・転職・昇進などでリスク容量は変わる。年1回は再評価する
まとめ#
リスク許容度アセスメントは 「どれだけリスクを取れるか」 を主観と客観の両面から評価し、自分に合った資産配分を導くフレームワーク。ポイントはリスク容量(取れるリスク)と許容度(耐えられるリスク)と必要性(取るべきリスク)の3つを分けて考え、最も低いものに合わせること。暴落時に退場しない配分が、長期的には最も良い結果をもたらす。