リスク許容度アセスメント

英語名 Risk Capacity Assessment
読み方 リスク キャパシティ アセスメント
難易度
所要時間 30分〜1時間
提唱者 現代ポートフォリオ理論とファイナンシャルプランニング実務の統合
目次

ひとことで言うと
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投資でどれだけリスクを取れるかを「気持ち」ではなく年齢・収入・資産・家族構成・投資期間などの客観的条件から評価するフレームワーク。「リスク許容度(取りたいリスク)」と「リスク容量(取れるリスク)」を分けて考える。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
リスク容量(Risk Capacity)
経済的な状況から客観的に取れるリスクの上限。収入の安定性、資産額、投資期間、負債の有無で決まる。
リスク許容度(Risk Tolerance)
投資家本人が心理的に耐えられるリスクの程度を指す。同じ経済状況でも、性格によって許容度は異なる。
リスクの必要性(Risk Required)
目標リターンを達成するために最低限取る必要があるリスクのこと。老後資金の目標額から逆算して求める。
アセットアロケーション
株式・債券・現金などの資産配分比率。リスクアセスメントの結果に基づいて決定する。

リスク許容度アセスメントの全体像
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リスクアセスメント:3つの視点でリスクの適正水準を決める
リスク容量客観的に取れる上限年齢・収入・資産・期間上限を超えてはいけないリスク許容度心理的に耐えられる範囲性格・投資経験・価値観夜眠れるかが目安リスクの必要性目標達成に必要な最低限目標額・期間・積立額下回ると目標未達適正リスク水準 → 資産配分を決定3つの中で最も低いものが実際のリスク上限リスク容量>許容度の場合 → 許容度に合わせる(無理しない)
リスクアセスメントの実施フロー
1
リスク容量の評価
経済状況からリスクの上限を客観的に算出
2
リスク許容度の確認
心理テストや過去の行動から耐性を把握
3
必要リスクの算出
目標額に到達するために必要なリターン率を逆算
資産配分の決定
3つの評価を統合して株式比率を決める

こんな悩みに効く
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  • 「自分にはどれくらいの株式比率が適切なのか」がわからない
  • 暴落で怖くなって全部売ってしまった経験がある
  • ネットの情報で「若いなら株式100%でOK」と言われたが本当に大丈夫か不安

基本の使い方
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リスク容量を客観的に評価する

以下の5項目でスコアリングする(各1〜5点、合計で判定)。

項目高スコア(リスク取れる)低スコア(リスク取れない)
年齢25〜35歳55歳以上
収入の安定性公務員・大企業正社員フリーランス・非正規
緊急予備資金生活費12ヶ月以上3ヶ月未満
投資期間20年以上5年以内
負債なし住宅ローン+教育ローン

合計20点以上: 株式70〜90%可、15〜19点: 株式50〜70%、14点以下: 株式30〜50%

リスク許容度を心理面から評価する

過去の行動が最も信頼できる指標。

  • 2020年3月(コロナショック)に投資していた場合、どう行動したか?
    • 全部売った → 許容度:低
    • 何もしなかった → 許容度:中
    • 買い増した → 許容度:高
  • 「投資額が30%下がっても5年間待てるか?」に即答でYesと言えるかどうか
3つの評価を統合して資産配分を決める

リスク容量・許容度・必要性のうち、最も低いものに合わせるのが原則。

ケース判断
容量>許容度>必要性許容度に合わせる。無理なリスクは継続できない
必要性>容量目標を下げるか、積立額を増やす。リスクを無理に取らない
容量>必要性>許容度まず少額で投資を始め、経験を積んで許容度を上げる

具体例
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例1:28歳の新社会人が初めての資産運用を設計する

リスク容量の評価

項目スコア理由
年齢528歳、投資期間30年以上
収入安定性4メーカー正社員
緊急予備資金2貯蓄60万円(生活費3ヶ月分)
投資期間5定年まで32年
負債4奨学金残り50万円のみ
合計20点株式70〜90%が可能

リスク許容度: 投資経験ゼロ、株が30%下がる想像をすると不安 → 低〜中

判断: リスク容量は高いが許容度が低い。まず**株式60%・債券40%**でスタートし、1年間の値動きを体験してから比率を見直す。最初から株式90%にすると、暴落で退場するリスクが高い。

例2:45歳のフリーランスが老後資金3,000万円を目指す

リスク容量の評価

項目スコア理由
年齢345歳、投資期間15〜20年
収入安定性2フリーランス、収入変動大
緊急予備資金4貯蓄500万円(生活費18ヶ月分)
投資期間365歳まで20年
負債5なし
合計17点株式50〜70%が適切

リスクの必要性: 現在の運用資産800万円、月5万円積立、20年で3,000万円 → 必要リターン年 5.5% → 株式比率60%以上が必要

判断: 容量と必要性がほぼ一致。**株式60%・債券30%・現金10%**で設計。ただしフリーランスは収入減リスクが高いため、生活費12ヶ月分の現金は投資に回さない鉄則を守る。

例3:58歳の夫婦が退職前に資産配分を見直す

リスク容量の評価

項目スコア理由
年齢258歳、退職まで2年
収入安定性3大企業だが定年間近
緊急予備資金5預金800万円
投資期間2使い始めるまで5〜7年
負債3住宅ローン残り500万円
合計15点株式30〜50%が適切

現在の配分: 株式80%(3,200万円中2,560万円)。年齢に対して明らかにリスク過大。

退職直後にリーマンショック級(株式−50%)が来ると、2,560万円が1,280万円に。取り崩し計画が大幅に狂う。株式40%・債券45%・現金15% に段階的に移行し、退職前にリスクを下げておくべきだ。移行は一度にやらず、3〜6ヶ月かけて毎月リバランスする。

やりがちな失敗パターン
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  1. リスク容量だけで判断して許容度を無視する — 「若いから株100%」は計算上は正しくても、暴落で売却してしまえば最悪の結果になる。続けられる配分が正解
  2. リスク許容度を高く自己申告する — 実際に暴落を経験するまでは自分の許容度はわからない。過去の行動(暴落時にどうしたか)の方が信頼できる
  3. 退職直前まで高リスク配分のまま放置する — 退職後に暴落が来ると回復する時間がない。50歳を過ぎたら徐々にリスクを下げる「グライドパス」を意識する
  4. 定期的に見直さない — 結婚・出産・転職・昇進などでリスク容量は変わる。年1回は再評価する

まとめ
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リスク許容度アセスメントは 「どれだけリスクを取れるか」 を主観と客観の両面から評価し、自分に合った資産配分を導くフレームワーク。ポイントはリスク容量(取れるリスク)と許容度(耐えられるリスク)と必要性(取るべきリスク)の3つを分けて考え、最も低いものに合わせること。暴落時に退場しない配分が、長期的には最も良い結果をもたらす。