ひとことで言うと#
収益不動産の年間純収益(NOI)を物件価格で割った利回りがキャップレート(還元利回り)。物件の収益力を1つの数字で比較でき、逆算すれば「この収益ならいくらで買うべきか」の適正価格もわかる。
押さえておきたい用語#
- キャップレート(Cap Rate)
- Capitalization Rateの略で、NOI÷物件価格で算出する利回り指標。高いほど収益性が良いが、リスクも高い傾向がある。
- NOI(Net Operating Income)
- 年間の賃料収入から運営経費(管理費・修繕費・保険・固定資産税など)を差し引いた純収益。ローン返済は含めない。
- 表面利回り(グロス利回り)
- 経費を差し引く前の年間賃料÷物件価格で計算する利回り。キャップレートより高く出るため、比較には不向き。
- 還元法
- NOI÷キャップレートで物件の理論価格を逆算する手法。周辺エリアの相場キャップレートがわかれば、物件の適正価格を推定できる。
不動産キャップレート分析の全体像#
こんな悩みに効く#
- 不動産の「表面利回り10%」に飛びつきそうだが、本当の収益力がわからない
- 複数の投資物件を客観的に比較したい
- いくらまでなら買っていいのか、適正価格の基準がない
基本の使い方#
表面利回りではなく、実際の手残りを計算する。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年間賃料(満室想定) | 600万円 |
| 空室損失(5%想定) | −30万円 |
| 管理費・修繕積立 | −60万円 |
| 固定資産税 | −40万円 |
| 保険料 | −10万円 |
| その他経費 | −20万円 |
| NOI | 440万円 |
表面利回り(600万÷物件価格)と実質利回り(440万÷物件価格)では 1.5〜2% の差が出る。
キャップレート = NOI ÷ 物件価格 × 100
物件価格8,000万円、NOI 440万円なら、キャップレートは 5.5%。
同エリアの相場が5%であれば、この物件は相場より0.5%高い利回り → 「割安」の可能性がある。ただしキャップレートが高い理由(空室リスク、築年数、立地の問題)がないか確認する。
適正価格 = NOI ÷ エリア相場キャップレート
NOI 440万円、エリア相場5%なら適正価格は 440万 ÷ 0.05 = 8,800万円。売出価格8,000万円であれば800万円の安全余裕がある。
具体例#
物件: 築15年、木造2階建て、6室、地方都市の駅徒歩10分
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売出価格 | 2,800万円 |
| 年間賃料(満室) | 336万円(月4.7万×6室) |
| 空室率10% | −33.6万円 |
| 運営経費合計 | −65万円 |
| NOI | 237.4万円 |
キャップレート: 237.4万 ÷ 2,800万 = 8.5%
地方アパートの相場(8〜10%)の範囲内。ただし築15年の木造は今後10年で大規模修繕(屋根・外壁で200〜300万円)が必要。修繕費を毎年積み立てる前提でNOIを再計算すると、実質キャップレートは 7.2% まで下がる。この数字で判断すべきだ。
| 項目 | 物件A(築10年・港区) | 物件B(築25年・板橋区) |
|---|---|---|
| 売出価格 | 3,500万円 | 1,800万円 |
| 年間賃料 | 156万円(月13万) | 96万円(月8万) |
| 空室率 | 3% | 5% |
| 運営経費 | 35万円 | 28万円 |
| NOI | 116.3万円 | 63.2万円 |
| キャップレート | 3.3% | 3.5% |
キャップレートはほぼ同じだが、港区は資産価値の下落リスクが低く、出口(売却)で有利。板橋区は築25年のため今後の修繕費リスクが高い。キャップレートが同等なら、立地の強さで物件Aを選ぶ判断になった。
物件: 築20年、延床面積300坪、テナント4社入居中
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年間賃料(現況) | 1,800万円 |
| 空室(1フロア空き) | −400万円 |
| 運営経費 | −280万円 |
| NOI | 1,120万円 |
現況のキャップレートで逆算すると、エリア相場6%の場合、物件価格は 1,120万 ÷ 0.06 = 約1億8,700万円。
空きフロアをリーシング(入居付け)して満室にすれば NOI = 1,520万円 → 物件価格 約2億5,300万円。空室を埋めるだけで物件の評価額が 6,600万円アップ する。売却前にリーシングに注力すべきか、現況で早期売却すべきか。リーシングに6ヶ月かかるなら、機会コストと比較して判断する。
やりがちな失敗パターン#
- 表面利回りをキャップレートと混同する — 表面利回りは経費を引いていない。実際の手残り(NOI)ベースで計算しないと、収益力を過大評価する
- キャップレートが高い物件を「お得」と即断する — キャップレートが高い理由(空室リスク、立地の弱さ、老朽化)を必ず確認する。高利回り=高リスクであることが多い
- 空室率を甘く見積もる — 満室想定のNOIは非現実的。エリアの平均空室率(通常5〜10%)を加味する
- 将来の修繕費を考慮しない — 築年数が古い物件は修繕費が増加する。大規模修繕の積立を経費に含めた「実質NOI」で判断する
まとめ#
キャップレートは 「NOI÷物件価格」 という単純な式で不動産の収益力を数値化できる強力なツール。表面利回りに惑わされず、経費を引いた実質的な収益で判断すること、エリア相場と比較して割安・割高を見極めることがポイント。逆算すれば適正価格もわかるため、「いくらなら買うか」 の基準線としても機能する。