ひとことで言うと#
リーマン・ショックやコロナショックなど過去の暴落シナリオを自分のポートフォリオに当てはめ、最悪時にいくら減るかを事前にシミュレーションすることで、リスク許容度と資産配分の妥当性を検証する手法。
押さえておきたい用語#
- ストレスシナリオ
- 過去の金融危機や仮想的な極端な市場変動を定義したテスト条件。リーマン・ショック(−50%)、ITバブル崩壊(−78%)などが代表例。
- 最大ドローダウン(Max Drawdown)
- 資産のピークからボトムまでの最大下落幅のこと。ポートフォリオの「最悪の瞬間」を定量化する指標。
- 回復期間(Recovery Period)
- ドローダウンから元の水準に戻るまでにかかった期間。回復期間が長いほど、精神的にも資金計画的にも厳しくなる。
- 相関崩壊(Correlation Breakdown)
- 平常時には低相関だった資産が、危機時に一斉に下落する現象を指す。分散投資の効果が最も必要な場面で効きにくくなる。
ポートフォリオ・ストレステストの全体像#
こんな悩みに効く#
- 自分のポートフォリオが暴落時にいくら減るのか具体的にイメージできない
- 「リスク許容度に合った配分」と言われるが、自分の許容度がそもそもわからない
- 過去の暴落を経験していないため、本当に耐えられるか不安
基本の使い方#
具体例#
保有資産400万円の33歳が、全世界株式80%・先進国債券20%のシンプルな配分でテスト実施。
| シナリオ | 株式320万 | 債券80万 | 合計損失 | 残高 |
|---|---|---|---|---|
| リーマン級 | −160万 | −4万 | −164万円 | 236万 |
| コロナ級 | −106万 | +2.4万 | −103万円 | 297万 |
| 全資産−20% | −64万 | −16万 | −80万円 | 320万 |
リーマン級で 164万円の含み損。月の生活費22万円の7.5ヶ月分に相当する。「半年以上分の生活費が消えるのはさすがにきつい」と判断し、株式比率を65%に下げて再テスト。リーマン級の損失が 121万円(5.5ヶ月分)になり、「この程度なら耐えられる」と納得できた。
従業員80名の建設会社が、退職給付信託3,500万円の運用を見直す。現在の配分は国内株式40%・国内債券40%・外国債券20%。
ストレステスト結果:
| シナリオ | 損失額 | 残高 | 判断 |
|---|---|---|---|
| リーマン級 | −742万円 | 2,758万 | 年間退職金支払い600万円に対して危険水域 |
| 金利急騰(+2%) | −350万円 | 3,150万 | ギリギリ許容範囲 |
| 同時下落−20% | −700万円 | 2,800万 | 積立不足が発生、追加拠出が必要 |
リーマン級で積立不足が発生する可能性があることが判明。株式比率を25%に下げ、短期債券と現金を20%追加した配分で再テスト。リーマン級の損失が −435万円 に縮小し、退職金の支払いに支障がない水準に改善された。
金融資産2,800万円の57歳夫婦。3年後の定年退職を控え「ここで大暴落が来たら取り返しがつかない」と心配。現在の配分: 全世界株式50%・先進国債券30%・金10%・現金10%。
| シナリオ | 株式1,400万 | 債券840万 | 金280万 | 現金280万 | 合計損失 |
|---|---|---|---|---|---|
| リーマン級 | −700万 | −42万 | +70万 | 0 | −672万円 |
| コロナ級 | −462万 | +25万 | +28万 | 0 | −409万円 |
リーマン級で 672万円 の損失は退職後の生活設計に致命的。ただし3年後には退職金1,200万円の入金があるため、「退職金込みの総資産4,000万円」でも再計算。
株式比率を35%に下げた修正配分で再テスト: リーマン級の損失は −428万円 に縮小。退職金を含めると60歳時点の想定残高は 3,572万円 以上で、老後の生活費計画(月25万円 × 35年)と年金を合わせれば十分な水準を維持できることを確認した。
やりがちな失敗パターン#
- パーセントだけで判断して金額を見ない — 「−30%」は抽象的だが「−450万円」はリアルに感じる。必ず損失額を金額ベースで確認する
- 過去最悪のシナリオだけでテストする — リーマン級を超える暴落が来ないとは限らない。「全資産が同時に−30%下落」のような仮想シナリオも含める
- テスト結果を見ても配分を変えない — テストの目的は「知って安心する」ことではなく「必要なら配分を変える」こと。不安が残る結果なら行動に移す
- 1回テストして放置する — 資産が増えると同じ配分でも損失金額が大きくなる。年1回、または資産が前回テスト時から20%以上増減したら再テストする
まとめ#
ポートフォリオ・ストレステストは 「最悪のシナリオで自分のお金がいくら減るか」 を事前に知ることで、暴落が来ても慌てない心理的準備を作る実践的な手法。Excelの表計算で十分に実施できるため、投資を始めた人は一度は試してみるべき。結果に不安を感じたら、暴落が来る前の今こそ配分を見直すベストタイミングになる。