オプション戦略入門

英語名 Options Strategy Basics
読み方 オプションズ ストラテジー
難易度
所要時間 2〜3時間
提唱者 シカゴ・オプション取引所(CBOE, 1973年)で標準化取引開始
目次

ひとことで言うと
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オプションとは**「ある資産を、将来の特定の日に、あらかじめ決めた価格で売買する権利」**。この権利を売買することで、ポートフォリオの下落ヘッジ、追加インカムの獲得、レバレッジを効かせた投機など、株式の売買だけでは実現できない戦略が可能になる。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
コールオプション
原資産を将来の特定日に特定価格で買う権利。価格上昇を見込む時に使う。
プットオプション
原資産を将来の特定日に特定価格で売る権利。下落ヘッジに使う。
プレミアム
オプションの購入価格(オプション料)。買い手の最大損失額。
IV(インプライドボラティリティ)
市場が織り込む将来の価格変動予想。オプション価格の最重要変数。
カバードコール
保有株にコール売りを組み合わせてプレミアム収入を得る戦略

オプション戦略入門の全体像
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コール・プットの組み合わせでリスク管理と収益機会を広げる
コール買う権利上昇で利益プット売る権利下落をヘッジ戦略カバードコールプロテクティブプットオプション戦略株式だけでは実現できない戦略が可能に
オプション戦略の進め方
1
基本理解
コール・プットの仕組みと4つのポジション
2
価格要因
原資産価格・IV・時間価値を理解
3
戦略選択
目的に合った戦略を選ぶ
4
リスク管理
ポジションサイズを投資資金の10%以内に

こんな悩みに効く
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  • 保有株の下落リスクをヘッジしたいが、売却はしたくない
  • 株式を持ちながら追加の収入を得たい
  • オプションに興味はあるが、複雑すぎて手が出ない

基本の使い方
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ステップ1: オプションの基本構造を理解する

2種類のオプションと4つの基本ポジションを把握する

  • コールオプション: 原資産を「買う権利」。価格上昇を見込む時に使う
  • プットオプション: 原資産を「売る権利」。価格下落に備える時に使う
  • 買い手は「権利を持つ」代わりにプレミアム(オプション料)を支払う
  • 売り手は「義務を負う」代わりにプレミアムを受け取る

ポイント: 買い手の最大損失はプレミアムに限定されるが、売り手の損失は理論上無限大になり得る。初心者はまず買いから始める。

ステップ2: オプション価格の決定要因を知る

オプション価格(プレミアム)を左右する5つの要因を理解する

  • 原資産価格: コールは原資産価格が上がるほど高い、プットは逆
  • 行使価格: コールは行使価格が低いほど高い、プットは逆
  • 残存期間: 期間が長いほどプレミアムは高い(時間価値)
  • ボラティリティ: 値動きが大きいほどプレミアムは高い
  • 金利: 金利が高いほどコールは高く、プットは安い傾向

ポイント: ボラティリティ(IV: インプライドボラティリティ)が最も重要な変数。IVが高い時にオプションを売り、低い時に買うのが基本。

ステップ3: 代表的な戦略を学ぶ

目的別の代表的な戦略を理解する

  • カバードコール: 保有株にコールを売る。プレミアム収入が得られるが、大幅上昇の利益は限定される
  • プロテクティブプット: 保有株にプットを買う。下落をヘッジできるが、プレミアムがコストになる
  • ブルコールスプレッド: 低い行使価格のコールを買い、高い行使価格のコールを売る。緩やかな上昇を見込む時に使う
  • ストラドル: 同一行使価格のコールとプットを両方買う。大きな値動きを見込む時に使う

ポイント: まずはカバードコールとプロテクティブプットから始める。保有株がある状態で使えるため、リスクが管理しやすい。

具体例
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例:保有株100株のカバードコール戦略

前提: A社株を1株5,000円で100株保有(投資額50万円)。3ヶ月以内に大きな上昇は見込めないが、売却はしたくない。

戦略実行: 行使価格5,500円の3ヶ月後コールオプションを1枚(100株分)売る。プレミアム収入は1株200円×100株=20,000円。

シナリオ分析:

  • 株価5,000円のまま→オプションは行使されず失効。プレミアム20,000円が利益。利回り4%(3ヶ月で)。
  • 株価5,500円に上昇→オプションが行使され、5,500円で100株を売却。売却益50,000円+プレミアム20,000円=70,000円の利益。
  • 株価6,000円に上昇→5,500円で売却義務があるため、6,000円の恩恵は受けられない。利益は70,000円で頭打ち。
  • 株価4,500円に下落→含み損50,000円だが、プレミアム20,000円で一部相殺。実質損失30,000円。

横ばい〜緩やかな上昇を見込む場面で有効な戦略

例2:保有株の下落リスクをプロテクティブ・プットでヘッジする

前提条件:

  • 保有株: A社株100株(現在値 3,000円、総額30万円)
  • 決算発表前で下落リスクが心配
  • プットオプション購入: 行使価格2,800円、プレミアム100円 × 100株 = 1万円

シナリオ分析:

  • 株価3,500円に上昇: 利益5万円 - プレミアム1万円 = 純利益4万円
  • 株価2,500円に下落: 株の損失5万円 + プット利益3万円 - プレミアム1万円 = 純損失3万円(ヘッジなしなら-5万円)
  • 最大損失は3万円に限定(ヘッジなしの5万円から40%削減)

学び: プロテクティブ・プットは保険のようにコストを払って最大損失を限定する。決算やイベント前の短期ヘッジに有効。

例3:カバード・コールで保有株から追加収入を得る

前提条件:

  • B社株300株を長期保有中(取得価格2,000円、現在値2,500円)
  • 今後1ヶ月は大きな値動きはないと予想
  • コールオプション売り: 行使価格2,700円、プレミアム50円 × 300株 = 1.5万円

シナリオ分析:

  • 株価2,600円で満期: オプション行使されず、プレミアム1.5万円が丸々利益
  • 株価3,000円に上昇: 2,700円で売却義務、利益6万円 + プレミアム1.5万円 = 7.5万円(ただし上昇分9万円は取り逃がす)
  • 株価2,200円に下落: 含み損9万円 - プレミアム1.5万円 = 実質損失7.5万円

学び: カバード・コールは横ばい相場で効果を発揮する。上昇余地を制限する代わりにプレミアム収入を得る戦略。

やりがちな失敗パターン
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  1. オプション売りのリスクを過小評価する — 売り手の損失は理論上無限大。裸売り(カバーなし)は絶対に避ける。カバードコールなど保有資産を担保にした売りから始める

  2. 時間価値の減衰を忘れる — オプションの時間価値は満期が近づくほど加速的に減る。買い手は満期まで漫然と持ち続けない

  3. レバレッジに引かれて投機に走る — オプションは少額で大きなポジションを取れるが、全損リスクもある。投資資金の10%以内に抑えるなど、ポジションサイズを管理する

  4. 全体像を見ずに部分最適に走る — 1つの指標や手法だけに集中すると見落としが生まれる。複数の視点を組み合わせて総合判断することが重要

まとめ
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オプション戦略は、株式の売買だけでは実現できないリスク管理や収益機会を提供する。コール(買う権利)とプット(売る権利)の組み合わせで、下落ヘッジ・追加インカム・方向性のある投資など多彩な戦略が構築できる。初心者はカバードコールやプロテクティブプットから始め、オプション価格の決定要因を実践の中で学ぶのが近道