ひとことで言うと#
技術投資の優先順位と時間軸を「Now / Next / Later」の3ホライゾンで整理し、ステークホルダーとの合意形成と実行管理を行う計画手法。
押さえておきたい用語#
- Engineering Roadmap(エンジニアリング ロードマップ)
- 技術投資の優先順位と時間軸を可視化した計画書を指す。
- Now / Next / Later
- 時間軸を「今やっている」「次にやる」「将来やる」の3段階に分ける優先順位フレームを指す。
- Technical Initiative(テクニカル イニシアティブ)
- ロードマップ上の個別の技術投資テーマ。マイグレーション、プラットフォーム構築、負債返済など。
- Dependency Map(デペンデンシー マップ)
- イニシアティブ間の依存関係を可視化した図。実行順序を決めるために使う手法である。
- Outcome-based Roadmap
- 機能リストではなく、達成したい成果(アウトカム)を中心に構成されたロードマップ。
エンジニアリング・ロードマップの全体像#
こんな悩みに効く#
- 技術投資の優先順位が経営層に伝わらず、いつも後回しにされる
- 「何をいつやるのか」がチーム間で共有されていない
- 日程ベースのガントチャートが現実離れしてすぐ形骸化する
基本の使い方#
具体例#
エンジニア80名のBtoB SaaS。プロダクトチームの機能要求と、エンジニアリングの基盤改善が常にバッティングしていた。
Now/Next/Laterの3ホライゾンでエンジニアリングロードマップを作成し、プロダクトロードマップと並べて四半期計画会議で議論する運用を導入。
| ホライゾン | プロダクト | エンジニアリング |
|---|---|---|
| Now | 新料金プラン | CI/CD刷新 + 認証基盤移行 |
| Next | エンタープライズ機能 | マイクロサービス分離 |
| Later | グローバル展開 | マルチリージョン対応 |
技術投資が将来のプロダクト計画の「前提条件」であることが可視化でき、エンジニアリングのNow枠が削られることがなくなった。四半期のリリース予測精度も 55% → 82% に改善した。
エンジニア15名のシリーズAスタートアップ。CTOの頭の中にしか技術計画がなく、「なぜ今これをやっているのか」がメンバーに伝わっていなかった。
Notionのボードビューで3カラム(Now/Next/Later)のロードマップを作成。各カードにはタイトル・目的・期待される成果・担当チームを記載。作成時間は2時間。
週次のAll Handsでロードマップを画面共有し、進捗を1分で報告する運用を開始。「自分のタスクが全体のどこに位置するか」がわかるようになり、エンジニアのエンゲージメントスコアが 3.2 → 4.1(5点満点)に向上した。
社内ITエンジニア20名の製造業。10年以上稼働するレガシーシステムが8つあり、どれから手をつけるか決められず、2年間計画が進んでいなかった。
各システムの「ビジネスリスク」「技術リスク」「移行コスト」をスコアリングし、Now/Next/Laterに配置。
| ホライゾン | システム | 理由 |
|---|---|---|
| Now | 受発注システム | セキュリティリスク最大、保守不能 |
| Next | 在庫管理 | 受発注の後続システム(依存) |
| Later | 勤怠・人事 | リスク低、既存ベンダーサポートあり |
受発注システムから着手し、12ヶ月でクラウド移行を完了。移行前は月平均 2.3回 のシステム停止があったが、移行後はゼロ。「次は在庫管理」と全社に共有されているため、経営層の理解も得られている。
やりがちな失敗パターン#
- 日程をコミットしすぎる — Laterに「2026年Q4完了」のような具体的な日程を入れると、状況が変わっても変更しにくくなる。Laterは方向性のみにする
- イニシアティブを詰め込みすぎる — Nowに10個も入れると何も完了しない。Nowは3〜5個に絞り、残りはNextに回す
- プロダクトロードマップと別々に管理する — 技術投資とプロダクト計画が整合していないと、四半期の途中で計画が崩れる
- 更新を怠る — 四半期レビューをスキップするとロードマップが現実と乖離し、誰も参照しなくなる
まとめ#
エンジニアリング・ロードマップは技術投資をNow/Next/Laterの3ホライゾンで整理し、ステークホルダーとの合意形成を図る計画手法。日程ベースのガントチャートより柔軟で、優先順位の変化に対応しやすい。プロダクトロードマップと並べて管理し、四半期ごとにレビュー・更新するサイクルを回すことで、技術投資の意図が組織全体に伝わる状態を作れる。