エンジニアリング投資配分

英語名 Engineering Investment Ratio
読み方 エンジニアリング インベストメント レシオ
難易度
所要時間 30分〜1時間
提唱者 エンジニアリングマネジメント
目次

ひとことで言うと
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開発リソースを「新機能」「改善」「技術負債返済」「インフラ」の4カテゴリに意図的に配分し、短期の事業成長と中長期の技術健全性を両立させる投資設計手法。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
Investment Ratio(インベストメント レシオ)
開発工数を機能開発・改善・負債返済・インフラにどの比率で割り振るかを定めた配分ルールを指す。
Tech Debt(テック デット)
短期的な速度を優先した結果たまった技術的な借金。放置するとメンテナンスコストが膨らむ。
Keep The Lights On(KTLO)
システムを現状維持するために必要な最低限の運用・保守工数を指す。
Feature Work(フィーチャー ワーク)
ユーザーに新しい価値を届ける新機能開発である。
Toil(トイル)
自動化可能なのに手作業で行われている繰り返しの運用作業。SREの文脈で使われる概念である。

エンジニアリング投資配分の全体像
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エンジニアリング投資配分:4カテゴリの投資バランス
新機能開発 (40-50%)ユーザー価値を生む機能追加売上・成長に直結する投資事業成長ドライバー改善・UX向上 (15-20%)既存機能の品質・体験改善解約率低下・満足度向上リテンション強化技術負債返済 (15-25%)リファクタリング・刷新開発速度の維持・回復持続可能性の確保インフラ・KTLO (10-20%)運用保守・セキュリティ対応安定稼働の土台づくり信頼性の基盤フェーズで比率を調整成長期 → 機能開発多め / 成熟期 → 負債返済・インフラ多め四半期ごとに比率を見直し、事業フェーズに合わせて調整する
エンジニアリング投資配分の設計フロー
1
現状の棚卸し
今の工数がどのカテゴリに使われているか計測する
2
目標比率の設定
事業フェーズに合わせた理想の配分を決める
3
ギャップの是正
現状と目標の差を埋める施策を実行する
四半期レビュー
実績を振り返り次期の比率を再調整する

こんな悩みに効く
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  • 新機能のリクエストに追われて技術負債が一向に減らない
  • 「投資の何割が成長に使われているか」と経営から聞かれて答えられない
  • 障害が増えているのにインフラ改善の工数が確保できない

基本の使い方
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現状の工数配分を可視化する
直近2〜3スプリントのチケットを「新機能」「改善」「負債返済」「インフラ/KTLO」に分類し、工数比率を出す。多くの組織で計測すると、新機能が70%以上を占めていて技術負債返済が5%未満というパターンが見つかる。
事業フェーズに合わせた目標比率を設定する
成長期なら新機能50%:改善15%:負債返済20%:インフラ15%、成熟期なら新機能30%:改善25%:負債返済25%:インフラ20%が目安。経営層・PdMと合意し、四半期OKRに組み込む。
比率を守る仕組みを作る
スプリントプランニングで各カテゴリの枠を先に確保する。「残りで負債返済する」方式だと永遠に後回しになる。負債返済やインフラの枠をチームカレンダーに固定枠として入れるのが効果的。

具体例
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例1:BtoB SaaS企業が技術負債の計画的返済を始める

エンジニア60名のBtoB SaaS。事業成長のために新機能開発を優先した結果、3年で技術負債が蓄積。デプロイにかかる時間が1時間→4時間に増え、新機能の開発速度も初期の40%まで低下していた。

工数配分を計測すると実態は以下の通り。

カテゴリ現状目標
新機能72%45%
改善12%20%
負債返済6%25%
インフラ10%10%

負債返済枠を毎スプリント25%固定で確保し、影響度の高い負債から順に対応。6ヶ月後にデプロイ時間が 4時間 → 45分 に短縮。新機能の工数は減ったが、1機能あたりの開発速度が上がったため、リリース数は横ばいを維持できた。

例2:ゲーム開発会社がリリース前後で投資比率を切り替える

エンジニア25名のモバイルゲーム開発会社。新タイトルのリリース前3ヶ月は機能開発に集中し、リリース後は運用安定にシフトする必要があった。

フェーズ別の投資比率を明示的に設計。

カテゴリリリース前リリース後
新機能65%30%
改善15%25%
負債返済10%25%
インフラ10%20%

リリース後のインフラ枠を20%確保したことで、ローンチ直後のアクセス集中にも安定して対応。前作では3日間のサーバー障害があったが、今回はダウンタイムゼロで初月120万DLを処理できた。

例3:地方自治体のDX推進チームが限られたリソースを配分する

職員5名のDX推進チーム。庁内の業務システム刷新と新しい住民向けサービス開発を並行して進める必要があったが、「何にどれだけ時間を使うか」の基準がなく、緊急対応に振り回されていた。

投資配分フレームワークを導入し、月単位で工数を管理。

カテゴリ比率具体的な内容
新機能30%住民向けオンライン申請
改善20%既存システムのUI改善
負債返済30%レガシーシステムの段階移行
インフラ20%セキュリティ対応・監視整備

レガシー移行に**30%**を確実に充てたことで、12ヶ月で対象システムの 60% をクラウド移行完了。以前は「いつ終わるかわからない」状態だったものが、経営層にも進捗が見える形になった。

やりがちな失敗パターン
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  1. 比率を決めても実際には守らない — 「今スプリントだけ特別」が常態化する。プランニングで先に枠を確保し、例外は月1回まで等のルールを設ける
  2. 全カテゴリを均等配分にする — 25%ずつは一見公平だが事業フェーズに合わない。成長期は機能開発を厚く、負債が限界なら返済を厚くする
  3. KTLO(運用保守)を計測しない — インシデント対応やオンコールの時間を投資配分に含めないと、実質の開発可能工数を見誤る
  4. 経営層との合意なしに負債返済を始める — 機能開発が減る理由を説明できないと、数スプリントで負債返済枠が削られる。投資対効果を数字で示す

まとめ
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エンジニアリング投資配分は、開発工数を 「新機能・改善・負債返済・インフラ」 に意図的に振り分け、短期成長と中長期の技術健全性を両立する手法。まず現状の配分を計測し、事業フェーズに合った目標比率を設定する。四半期ごとに実績を振り返り、比率を再調整するサイクルが定着すれば、技術負債の計画的な返済と安定した機能開発の両方が実現する。