ボイス&トーン・フレームワーク

英語名 Voice & Tone Framework
読み方 ボイス アンド トーン フレームワーク
難易度
所要時間 理解に15分、ガイド作成に1〜2週間
提唱者 Mailchimp Content Style Guide(2012年〜)が広く普及のきっかけ
目次

ひとことで言うと
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ボイスは「ブランドの人格」、トーンは「場面に応じた声色」。ボイスは常に一貫し、トーンは文脈で変わる。この区別を明確にし、ガイドラインとして言語化することで、誰が書いても「そのブランドらしい」文章が生まれる。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
ボイス(Voice)
ブランドの一貫した人格・キャラクターのこと。「親しみやすい」「専門的だが威圧しない」など、場面によって変わらない土台。
トーン(Tone)
同じボイスでも場面に応じて変わる声色・テンションを指す。成功画面では明るく、エラー画面では落ち着いたトーンになる。
UXライティング
UI上のボタンラベル、エラーメッセージ、通知文など、ユーザー体験に直接影響する短いテキストを設計する専門領域。
コンテンツスタイルガイド
表記ルール(漢字/ひらがな、敬体/常体など)とボイス&トーンを一冊にまとめた社内ドキュメント。Mailchimpのガイドが業界標準として知られる。

ボイス&トーン・フレームワークの全体像
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ボイス&トーン:一貫した人格と場面で変わる声色
ボイス Voice ─ 常に一貫ブランドの人格・キャラクター例: 親しみやすく、誠実で、専門的場面が変わっても変わらない土台場面に応じてトーンが変化成功・完了明るく、祝福「登録完了!さっそく始めましょう」テンション: 高めユーモア: OKエラー・問題落ち着いて、具体的に「お支払いに失敗しました。カード情報をご確認ください」テンション: 低めユーモア: NG待機・読み込み安心させる「データを準備しています。少々お待ちください」テンション: 中程度ユーモア: 軽めならOK
ボイス&トーンガイド作成フロー
1
ボイスを定義
ブランドの人格を3〜5語で
2
場面を洗い出す
成功・エラー・待機・初回など
3
トーンを場面別に設定
テンション・ユーモア・敬語レベル
ガイドライン完成
誰が書いてもブランドらしい文章に

こんな悩みに効く
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  • プロダクト内の文言が人によってバラバラ(ですます調と常体が混在)
  • エラーメッセージが冷たく、ユーザーの離脱につながっている
  • ブランドの「らしさ」を言語化できず、外部ライターに依頼しにくい

基本の使い方
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ステップ1: ブランドのボイスを3〜5語で定義する

「自分たちのブランドを人に例えたら?」と考える。

  • 例:「親しみやすく、誠実で、少しウィットがある」
  • 対義語も添えると明確になる:「カジュアルだが軽薄ではない」「専門的だが威圧しない」
  • チームで議論し、全員が同意できる定義にする
ステップ2: ユーザーが遭遇する場面を洗い出す

UIの中で言葉が出てくるすべての場面をリストアップする。

  • 成功(登録完了、購入完了、目標達成)
  • エラー(入力ミス、システム障害、権限エラー)
  • 待機(読み込み中、処理中)
  • 初回(オンボーディング、チュートリアル)
  • 離脱防止(カゴ落ち、解約確認)
ステップ3: 場面ごとにトーンを設定する

各場面で以下の軸を設定する。

  • テンション: 高い(祝福)↔ 低い(冷静)
  • ユーモア: OK ↔ NG
  • 敬語レベル: カジュアル ↔ フォーマル
  • 情報量: 詳細 ↔ 簡潔
  • 各場面に「良い例」と「悪い例」をセットで記載する

具体例
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例1:FinTechアプリがエラーメッセージの書き換えで問い合わせを半減させる

状況: MAU 15万の家計簿アプリ。エラー発生時の問い合わせが月 420件。CSチームが対応に追われていた。

ボイスの定義: 「頼れる家計の相談相手。専門的だけど偉そうじゃない。不安なときほど優しく」

Before → After:

場面BeforeAfter
銀行連携失敗「Error: Connection refused」「銀行との接続がうまくいきませんでした。30分後にもう一度お試しください」
カテゴリ未設定「カテゴリを設定してください」「どのカテゴリに入れましょうか?よく使うのは食費・日用品です」
残高不足アラート「残高が設定額を下回りました」「今月の残高が目標を下回りそうです。一緒に確認してみましょう」

エラー関連の問い合わせは月 420件 → 190件 に減少。特に銀行連携エラーの問い合わせが 70%減 となり、CSチームの工数が月 40時間 削減された。

例2:BtoB SaaSがオンボーディングの文言を統一してトライアル転換率を改善する

状況: 従業員200名のプロジェクト管理SaaS。オンボーディング画面の文言を3人のPMが別々に書いていたため、ある画面は「ですます調」、次の画面は「だ・である調」、さらにボタンが「次へ」「続ける」「Next」と混在。トライアル→有料転換率は 18%

ボイスの定義: 「プロジェクトの伴走者。フレンドリーだが仕事の邪魔はしない。簡潔で、次にやることが明確」

ボイス&トーンガイドから策定したルール:

  • 全画面「ですます調」で統一
  • ボタンは「動詞+結果」(「プロジェクトを作成する」「チームを招待する」)
  • 説明文は2行以内。3行以上は「詳しく見る」リンクに逃がす
  • オンボーディング中のトーンは「応援するコーチ」(テンション中〜高、ユーモア軽めOK)

ガイド適用後のA/Bテストで、文言統一版のトライアル→有料転換率は 18% → 24%。「何をすればいいか迷わなくなった」というフィードバックが増加した。

例3:老舗旅館がWebサイトと館内表示の言葉遣いを揃えてリピート率を上げる

状況: 創業90年の温泉旅館(客室数30)。Webサイトは制作会社が書いたビジネス調、館内の案内は女将の手書きで和風、SNSはアルバイトがカジュアルに投稿。チャネルごとにまったく異なる印象で、常連客から「Webと実際の雰囲気が違う」と指摘を受けていた。

ボイスの定義: 「温かく迎え入れる女将のような存在。丁寧だけど堅苦しくない。お客様を家族のように気遣う」

トーンの場面別設定:

チャネルトーン
Webサイト丁寧・安心感「四季折々の景色とともに、ゆったりとお過ごしください」
予約確認メール温かく具体的「お待ちしております。お部屋は川沿いの『椿の間』をご用意しました」
SNS親しみ・季節感「今朝の露天風呂、紅葉が水面に映ってきれいでした」
館内案内手書き風・優しく「大浴場は右手奥でございます。タオルはお部屋からお持ちくださいね」

ガイドを作成し、Web制作会社・SNS担当・フロントスタッフに共有。1年後のリピート宿泊率は 34% → 42% に上昇。「Webで見た印象と実際が一致していて安心した」という口コミが増えた。

やりがちな失敗パターン
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  1. ボイスとトーンを区別しない — 「うちのトーンは明るく」だけだと、エラー画面でも明るくしてしまう。ボイス(常に一貫)とトーン(場面で変わる)を分けて定義する
  2. ガイドを作って満足し、運用しない — 作った翌週から誰も参照しないケースが多い。デザインレビューのチェックリストに入れる、Figmaのテンプレートに組み込むなど、仕組みで定着させる
  3. 「良い例」しか書かない — 「悪い例」がないと境界線がわからない。各場面に「こう書く/こう書かない」をセットで記載する
  4. 全員が同意しないまま進める — PM、デザイナー、エンジニア、CSがそれぞれ違う「ブランドらしさ」を持っていると、ガイドが形骸化する。定義段階でチーム全員を巻き込む

まとめ
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ボイス&トーン・フレームワークは、ブランドの言葉遣いを 「人格(ボイス)+場面(トーン)」 で体系化する手法。ボイスを3〜5語で定義し、場面ごとにトーンを設定し、良い例・悪い例をセットで記載する。言葉はUIの一部であり、ボタン1つの文言がコンバージョンを左右することもある。