押さえておきたい用語
- UXハニカム: UX品質を「有用」「使いやすい」「望ましい」「見つけやすい」「アクセシブル」「信頼できる」「価値がある」の7要素で評価するフレームワーク
- 情報アーキテクチャ(IA): コンテンツの構造化・分類・ラベリングによって情報を見つけやすくする設計分野
- Findability(見つけやすさ): ユーザーが必要な情報や機能に最短でたどり着ける度合い
- Desirability(望ましさ): ブランドやビジュアルデザインがユーザーの感情にポジティブな影響を与える度合い
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7要素の評価
各要素を5段階でスコアリング → レーダーチャート化
こんな悩みに効く#
- 「UXの品質が良いのか悪いのか、チームで共通認識を持てない」
- 「使いやすさだけに注目しているが、それだけでは改善が頭打ちになった」
- 「プロダクトのUX戦略をどの方向に向けるべきか判断材料がない」
使い方#
7要素を理解する
各要素の意味を確認する。有用(ユーザーの目的を達成できるか)、使いやすい(操作が簡単か)、望ましい(ブランドやデザインが魅力的か)、見つけやすい(必要な情報に到達できるか)、アクセシブル(障害のある人も使えるか)、信頼できる(安心して使えるか)、価値がある(ビジネスとユーザー双方に価値を提供しているか)。
各要素を5段階で評価する
チームメンバー各自が7要素を1〜5で採点する。可能であればユーザーアンケートでも同じ7要素を評価してもらい、社内評価とのギャップを確認する。
レーダーチャートで可視化する
7要素のスコアをレーダーチャート(ハニカム図)にプロットし、バランスを一目で把握する。「使いやすいがスコア5だが、見つけやすいがスコア2」のような偏りが改善の糸口になる。
弱点要素から改善する
最もスコアが低い要素を改善テーマとして設定し、具体的な施策を立案する。全要素を同時に改善しようとせず、四半期ごとに1〜2要素にフォーカスするのが効果的だ。
具体例#
BtoB SaaS — プロダクト戦略の方向転換
状況: 顧客管理SaaSの成長が鈍化。NPS調査ではスコアが低いが、どこに問題があるか特定できなかった。
適用プロセス:
- チーム12名とユーザー30名にUXハニカムの7要素を5段階評価してもらった
- 結果: 有用=4.2、使いやすい=3.8、望ましい=2.1、見つけやすい=2.4、アクセシブル=3.0、信頼できる=4.5、価値=3.6
- 「望ましさ」と「見つけやすさ」が突出して低いことが判明。UIが機能的だが無機質で、情報構造も複雑だった
- デザインリニューアル(望ましさ)と情報アーキテクチャ再設計(見つけやすさ)を重点施策に設定
成果: 6か月後の再評価で望ましい=3.6、見つけやすい=3.8に改善。NPSが+12ポイント上昇し、解約率が月次で1.2ポイント低下した。
自治体ポータル — 市民サービスの体験改善
状況: 自治体のオンラインポータルの利用率が目標の半分以下。窓口の混雑が解消されなかった。
適用プロセス:
- 市民200名にオンラインアンケートでUXハニカム7要素を評価してもらった
- 結果: 有用=3.8、使いやすい=2.0、望ましい=1.8、見つけやすい=1.5、アクセシブル=2.2、信頼できる=4.0、価値=2.8
- 「見つけやすさ」が最低スコア。申請フォームまで平均7クリック必要で、メニュー階層が5段と深かった
- サイト構造をフラット化し、よく使う手続きをトップページにカード配置。検索機能も強化
成果: 見つけやすさスコアが1.5→3.4に改善。オンライン申請率が2.3倍に増加し、窓口の平均待ち時間が24分短縮された。
ヘルスケアアプリ — 信頼性の強化
状況: 健康管理アプリのダウンロード数は伸びているが、個人情報(体重・血圧・服薬記録)の入力率が21%と極めて低かった。
適用プロセス:
- ユーザーインタビュー15名+UXハニカム評価を実施
- 結果: 有用=4.0、使いやすい=3.5、望ましい=3.8、見つけやすい=3.2、アクセシブル=3.0、信頼できる=1.9、価値=2.5
- 「信頼できる」が最低。プライバシーポリシーの難解さ、データの保存先が不明、第三者提供の懸念が原因
- データ暗号化の明示、保存先の国内サーバー表記、削除機能の追加、プライバシーポリシーの平易な要約版を作成
成果: 信頼スコアが1.9→3.7に改善。個人情報入力率が21%→58%に上昇し、データに基づくパーソナライズ機能が初めて実用的に稼働した。
うまくいかないパターン#
| パターン | 問題点 | 対処法 |
|---|---|---|
| 社内だけで評価 | 開発者とユーザーの認識にギャップがある | ユーザーアンケートと社内評価を比較する |
| 全要素を同時改善 | リソースが分散し、どれも中途半端になる | 最低スコアの1〜2要素に集中する |
| 一度きりの評価 | UX品質は変化するため定期的な測定が必要 | 四半期ごとに再評価するサイクルを組む |
| 「価値」を無視 | 他の6要素が高くてもビジネス価値がなければ持続しない | 中央の「価値」を常に最終チェックポイントにする |
まとめ#
UXハニカムは 「使いやすさ」 だけでは捉えきれないUX品質の全体像を7つの要素で可視化する。中央の 「価値がある」 を囲む6要素のバランスが崩れると、どれだけ一部が優れていても総合的な体験は低下する。定期的にスコアリングし、弱点にフォーカスした改善を回すことで、プロダクトのUXを計画的に底上げできるフレームワークだ。