モジュラーデザイン

英語名 Modular Design
読み方 モジュラー・デザイン
難易度
所要時間 2〜4時間(コンポーネント設計と分類)
提唱者 Brad Frost『Atomic Design』(2016年)等。工業デザインのモジュラー設計をUIに応用
目次
押さえておきたい用語
  • モジュラーデザイン: 独立した再利用可能なコンポーネントの組み合わせでUIを構築するアプローチ
  • アトミックデザイン: Atoms(原子)→Molecules(分子)→Organisms(有機体)→Templates→Pagesの5階層でUIを構造化する手法
  • コンポーネント: 特定の機能と見た目を持つUIの構成単位。ボタン、カード、フォームフィールドなど
  • デザイントークン: 色・フォントサイズ・スペーシングなどの基本的なデザイン値を変数として管理する仕組み
Atomsボタン入力欄ラベルアイコンMolecules検索バーフォーム行ナビ項目カードOrganismsヘッダー商品一覧フォーム全体フッターTemplatesレイアウト構造の定義配置ルールPages実データで組み立てた完成画面単純複雑小さな部品を組み合わせて大きなUIを構築する
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UIの分解
既存画面を最小単位のコンポーネントに分解 → コンポーネントの分類

こんな悩みに効く
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  • 「同じようなUIを毎回ゼロから作っていて非効率」
  • 「画面ごとにデザインが微妙に異なり一貫性がない」
  • 「デザインシステムを作りたいが何から始めるか分からない」

使い方
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既存UIを最小単位に分解する
現在のプロダクトの全画面をスクリーンショットで収集し、共通するUI要素を洗い出す。ボタン、フォームフィールド、カード、モーダルなど、繰り返し使われている要素をリストアップする。
コンポーネントを階層化する
洗い出した要素をAtoms(最小単位)→Molecules(Atomsの組み合わせ)→Organisms(Moleculesの組み合わせ)に分類する。各コンポーネントにprops(変更可能な属性)を定義し、1つのコンポーネントで複数のバリエーションに対応する。
デザイントークンを定義する
色、フォントサイズ、行間、スペーシング、角丸などの値を変数(トークン)として定義する。コンポーネント内で直接色コードを指定するのではなく、--color-primaryのようなトークンを参照する設計にする。
ライブラリとガバナンスを整備する
FigmaやStorybookにコンポーネントライブラリを構築し、使い方のドキュメントを添付する。新コンポーネントの追加には「既存で代替できないか」のレビューを必須にし、ライブラリの肥大化を防ぐ。

具体例
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SaaS — デザインシステムによる開発効率化

状況: 5つのプロダクトを持つSaaS企業で、各チームが独自にUIを設計。ボタンだけで12バリエーション、カードは8種類が存在し、実装の重複とUI不整合が常態化していた。

適用プロセス:

  1. 全プロダクトのUIをスクリーンショットで収集し、共通コンポーネントを86個特定
  2. 統合後のコンポーネントを32個に集約。ボタンは3バリエーション(Primary/Secondary/Ghost)に統一
  3. Figmaライブラリ+Storybook+npmパッケージで共通コンポーネントを配布

成果: 新画面の設計時間が平均40%短縮。UI実装のコードレビュー指摘が60%減少し、5プロダクト間のUI統一が実現した。

ECプラットフォーム — マルチブランド対応

状況: 同一プラットフォームで10ブランドのECサイトを運営。ブランドごとにデザインが異なるが、構造とコンポーネントは共通化したいという要件。

適用プロセス:

  1. 全ブランドで共通する構造(ヘッダー・商品カード・カート・決済フロー)をOrganismsとして定義
  2. ブランドごとの差異(色・フォント・角丸)はデザイントークンで切り替え可能に設計
  3. 1つのコンポーネントライブラリ+10セットのデザイントークンで全ブランドに対応

成果: 新ブランド追加時のUI構築期間が3か月→2週間に短縮。コンポーネントのバグ修正が全ブランドに自動反映されるようになった。

社内システム — レガシーUIの段階的モダン化

状況: 10年間機能追加を重ねた社内業務システムで、画面ごとにUIスタイルが異なる。全面リニューアルの予算は確保できず、段階的な改善が求められていた。

適用プロセス:

  1. 利用頻度の高い画面20ページのUIを分解し、共通コンポーネントを28個特定
  2. 新デザインのコンポーネントライブラリを構築し、まず最も利用頻度の高い3画面から適用
  3. 四半期ごとに5画面ずつ新コンポーネントに置き換えるロードマップを策定

成果: 1年で主要20画面のUI統一が完了。ユーザーから「画面ごとに操作方法が違う」という苦情がゼロになり、操作研修の時間が半減した。

うまくいかないパターン
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パターン問題点対処法
最初から完璧を目指すコンポーネント数が膨大になり着手できない利用頻度の高い10〜20個から始める
粒度が細かすぎるAtomsレベルまで分解すると管理コストが増大実際に再利用されるレベルで分割する
ガバナンス不在チームが独自にコンポーネントを追加し肥大化する追加ルールと承認プロセスを設ける
デザインだけで完結Figmaにはあるがコードに反映されないエンジニアと共同でStorybook等の実装を並行する

まとめ
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モジュラーデザインは 「UIを部品の組み合わせで構築する」 考え方であり、デザインシステムの基盤になる。小さな部品(Atoms)から段階的に組み上げることで、一貫性・再利用性・保守性が確保される。デザイントークンでブランドごとの差異を吸収し、ガバナンスで品質を維持すれば、プロダクトの成長に伴うUI複雑化を防げる