ひとことで言うと#
人間の短期記憶(ワーキングメモリ)が一度に保持できる情報のかたまり(チャンク)は7±2個、つまり5〜9個が限界という認知心理学の法則。UIや情報設計で、ユーザーに一度に見せる要素数の目安として広く使われている。
押さえておきたい用語#
- チャンク(Chunk)
- 関連する情報をひとまとめにしたかたまり。電話番号のハイフン区切りが典型例。
- ワーキングメモリ(Working Memory)
- 情報を一時的に保持・操作する短期記憶のこと。容量に限界がある。
- 認知負荷(Cognitive Load)
- 情報処理にかかる脳への負担量。チャンク数が増えるほど認知負荷は上がる。
- チャンク化(Chunking)
- 個々の情報をグループにまとめ、記憶しやすい単位に変換する技法。
ミラーの法則の全体像#
こんな悩みに効く#
- ナビゲーションのメニュー項目が多すぎて、ユーザーが覚えられない
- プレゼンのスライドに情報を詰め込みすぎて、聞き手がついてこない
- ダッシュボードの指標が多すぎて、何が重要かわからない
基本の使い方#
画面・ページ・資料で伝えたい情報をすべてリストアップする。
- ナビゲーション項目、セクション、KPI、入力項目など
- 「あったら便利」レベルのものも含めて、まず全部出す
ポイント: この段階では削らない。全体像を把握することが目的。
関連する情報を5〜9個のグループにまとめる。
- 類似する項目をカテゴリにグルーピングする
- 各グループに直感的なラベルをつける
- 電話番号を「090-1234-5678」のようにハイフンで区切るのもチャンク化の一種
ポイント: チャンク化すると、個々の情報は覚えなくても「グループの名前」を覚えるだけで済む。
チャンク化しても多い場合は、優先度の低いものを削るか隠す。
- ユーザーの主目的に直結するものを最優先
- 頻度が低い情報はセカンダリ領域やドリルダウンに移動
- 「あれば便利」は思い切って削る
1画面のメイングループは5〜7個を上限にする。
チャンクの境界をデザインで明確にする。
- 余白(ホワイトスペース)でグループを分離する
- 見出しやラベルでグループの内容を示す
- 色やアイコンでカテゴリを視覚的に区別する
ポイント: チャンク化しても、見た目で区別がつかないと効果は半減する。
具体例#
Before: ダッシュボードに25個のKPIが横一列に並んでいた。ユーザーは「数字が多すぎてどこを見ればいいかわからない」とフィードバック。
After: KPIを5つのグループにチャンク化した。
- 売上指標(MRR、ARR、ARPU)
- 成長指標(新規顧客数、解約率)
- エンゲージメント(DAU、セッション時間)
- サポート(チケット数、CSAT)
- 財務(粗利率、LTV)
各グループをカード形式で分離し、見出しを付けた。
結果: ダッシュボードの利用頻度が2.3倍に増加。ユーザーが「今日見るべき数字」をすぐに見つけられるようになった。
Before: ヘッダーのメガメニューに120のサブカテゴリが並んでいた。ユーザーの平均カテゴリ選択時間は18秒、メニューの途中離脱率は34%。
After: 120カテゴリを7つの大グループにチャンク化。
- ファッション / ビューティー / 家電 / ホーム / フード / スポーツ / その他
各大グループをホバーで展開し、内部に3〜5のサブカテゴリを表示する2階層構造に変更。
結果: カテゴリ選択時間が18秒から6秒に短縮。メニュー途中離脱率は34%から12%に改善。
Before: 四半期報告スライドに15項目の数値を1ページに羅列。聴衆アンケートで「情報量が多すぎて頭に入らない」が68%。
After: 15項目を3つのチャンクに分け、各チャンクを1スライドに配置。
- スライド1: 売上の3指標(総売上・成長率・利益率)
- スライド2: 顧客の3指標(新規獲得数・継続率・NPS)
- スライド3: 効率の3指標(CAC・LTV・LTV/CAC比)
各スライドに見出しと色分けを追加。
結果: 「内容を理解できた」の回答が32%から89%に向上。Q&Aの質も具体的になった。
やりがちな失敗パターン#
- 「7個」を絶対ルールにしてしまう — ミラーの法則はあくまで目安。コンテキストによっては3個が最適な場合もあれば、10個でも問題ない場合もある。ユーザーテストで実際の認知負荷を確認すること
- チャンク化せずに数だけ減らす — 重要な情報を削ってしまうと機能不足になる。まずグルーピングで体感の量を減らすのが先
- グループの粒度がバラバラ — あるグループは2項目、別のグループは15項目では意味がない。各グループの要素数もなるべく均等にする
- 視覚的な区切りなくチャンク化を主張する — 論理的にグループ分けしても見た目で伝わらなければユーザーには同じ。余白・罫線・色の違いでグループ境界を明示する
まとめ#
ミラーの法則は 「人間が一度に扱える情報は7±2個」 という認知の制約を示す法則。デザインでは、情報をチャンク化して一度に見せる数を制御することで、ユーザーの認知負荷を大幅に下げられる。数を減らすだけでなく 「まとめて見せる」 技術が鍵。