ミラーのマジカルナンバー

英語名 Miller's Magic Number (7±2)
読み方 ミラーズ・マジック・ナンバー
難易度
所要時間 30分〜1時間(情報のグルーピング設計)
提唱者 George A. Miller(1956年)『The Magical Number Seven, Plus or Minus Two』。認知心理学の古典的研究
目次
押さえておきたい用語
  • マジカルナンバー7±2: 人間の短期記憶が一度に保持できる情報の塊(チャンク)は5〜9個という法則
  • チャンク: 意味のある単位にまとめた情報の塊。個々の項目ではなくグループ単位で記憶される
  • チャンキング: 情報を意味のあるグループに分割して記憶しやすくする手法。電話番号の3桁-4桁-4桁が典型例
  • 認知負荷: ユーザーの脳が同時に処理しなければならない情報の量。過負荷になると判断力が低下する
7± 2短期記憶の容量= 5〜9チャンク(情報の塊)チャンキングなし(11桁)09012345678→ 記憶困難(11チャンク)チャンキングあり(3グループ)090 - 1234 - 5678→ 記憶容易(3チャンク)
1
情報量の把握
画面に同時に表示される項目数を数える → 7±2を超える箇所を特定

こんな悩みに効く
#

  • 「ナビゲーションのメニュー項目が多すぎてユーザーが迷う」
  • 「フォームの入力フィールドが一度に大量に表示されて離脱する」
  • 「ユーザーが選択肢の前で立ち止まってしまう」

使い方
#

画面の情報量を数える
ナビゲーション項目、メニュー項目、リストの選択肢、フォームのフィールド数など、ユーザーが一度に認識すべき情報の「塊」を数える。7を大幅に超えている箇所は認知負荷の改善候補だ。
意味のあるグループに分割する
10個以上の項目がある場合は、3〜5個のグループに分割する。ナビゲーション15項目なら「商品」「サポート」「企業情報」の3グループに。各グループ内は5個以内に抑える。
視覚的にグループを明示する
余白、区切り線、見出し、背景色の変化などでグループの境界を視覚的に示す。グルーピングが明確であれば、総数が多くても認知負荷は下がる。
段階的な開示を検討する
グルーピングしても多すぎる場合は、プログレッシブ・ディスクロージャー(段階的開示)を適用する。最初は主要な項目だけ表示し、「もっと見る」で追加項目を表示する設計にする。

具体例
#

ECサイト — カテゴリナビゲーションの再構成

状況: トップナビゲーションに22のカテゴリが横一列に並んでいた。ユーザーの平均滞在時間が短く、「欲しい商品の探し方が分からない」というフィードバックが多数。

適用プロセス:

  1. 22カテゴリを5つのメガメニューグループに再編成:「ファッション」「家電」「食品」「インテリア」「その他」
  2. 各グループ内のサブカテゴリを5〜7個に整理。利用頻度の低いカテゴリは「もっと見る」に格納
  3. トップナビには5グループのみ表示し、ホバーでサブカテゴリを展開する設計に

成果: カテゴリ経由の商品到達率が34%向上。ナビゲーションの「分かりやすさ」スコアが5段階中2.6→4.3に改善した。

フォーム設計 — 長いフォームのチャンキング

状況: 保険の申込フォームが20フィールドを1ページに表示していた。フォーム完了率が18%と低迷。ユーザーが画面を見た瞬間に「面倒そう」と感じて離脱していた。

適用プロセス:

  1. 20フィールドを4ステップに分割:「基本情報(5項目)」→「連絡先(4項目)」→「保険内容(6項目)」→「確認(5項目)」
  2. 各ステップにプログレスバーを表示し、「全4ステップ中ステップ2」を明示
  3. 各ステップのフィールド数を7以内に制限

成果: フォーム完了率が18%→52%に改善。特にステップ1→ステップ2の遷移率が最も改善し(+40ポイント)、初見の印象改善が効いた。

ダッシュボード — 指標表示の最適化

状況: 経営ダッシュボードにKPIが15個同時に表示されており、経営会議で「何を見ればいいのか分からない」「情報が多すぎて判断できない」との声。

適用プロセス:

  1. 15のKPIを「売上」「顧客」「オペレーション」の3グループに分類
  2. デフォルト表示を各グループの最重要KPI(計3個)に限定。グループをクリックすると残りのKPIが展開される
  3. 3グループを視覚的にカードで区切り、色分けでグループを識別可能に

成果: 経営会議の報告時間が平均45分→25分に短縮。「必要な情報にすぐアクセスできる」との評価が経営層全員から得られた。

うまくいかないパターン
#

パターン問題点対処法
7を絶対的な上限と解釈する文脈によっては10個でも問題ない場合があるグルーピングと視覚的構造で柔軟に対応する
グループの中身を考えず分割する意味のないグループ分けは逆に認知負荷を増やすユーザーのメンタルモデルに合ったカテゴリで分割する
隠しすぎる重要な情報が「もっと見る」の中に埋もれる利用頻度の高い項目は常に表示する
チャンキングなしで数だけ減らす必要な情報まで削除してしまう情報量は維持しつつ構造化で認知負荷を下げる

まとめ
#

ミラーのマジカルナンバーは「人間は一度に5〜9個の情報しか処理できない」という認知の制約を示す。UIデザインへの適用は 「項目を7個以下にする」 ことではなく、「チャンキングで情報を構造化し認知負荷を下げる」 ことにある。ナビゲーション、フォーム、ダッシュボードなど情報が集中する画面で、意味のあるグループ分けと段階的開示を組み合わせることが実践的な活用法だ。