押さえておきたい用語
- ジョブ(Job): ユーザーが特定の状況で達成したい進歩。機能ではなく目的を指す
- ジョブストーリー: 「<状況>のとき、<動機>したいので、<期待する成果>が得られるようにしたい」のフォーマット
- 雇用と解雇: ユーザーがプロダクトを「雇う」(採用する)のはジョブを達成するため。達成できなければ「解雇」(乗り換え)する
- スイッチングインタビュー: 製品の乗り換え体験を深掘りし、ジョブを発見するインタビュー手法
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スイッチングインタビュー
乗り換え体験からジョブを発見 → ジョブストーリー作成
こんな悩みに効く#
- 「機能は充実しているのにユーザーに使われない機能が多い」
- 「ペルソナを作ったがUI設計の判断基準にならない」
- 「競合と機能で差別化できず価格競争に陥っている」
使い方#
スイッチングインタビューでジョブを発見する
最近プロダクトを使い始めたユーザーに「何がきっかけで使い始めましたか」「以前は何で代替していましたか」を聞く。「Excelで管理していたが限界を感じた」→ジョブ=「増え続けるタスクを漏れなく管理したい」のように目的を抽出する。
ジョブストーリーを定義する
発見したジョブを「<状況>のとき、<動機>したいので、<期待する成果>が得られるようにしたい」の形式で記述する。例:「チームが10名を超えたとき、全員のタスク状況を一目で把握したいので、進捗が自動集約されるダッシュボードが欲しい」。
ジョブベースでUIを設計する
ナビゲーションやダッシュボードを「機能一覧」ではなく「ジョブ一覧」で構成する。「タスク管理」「ファイル管理」「チャット」ではなく、「プロジェクトの進捗を把握する」「チームに情報を共有する」のようなジョブ単位で画面を設計する。
ジョブ達成をテストで検証する
ユーザーテストでジョブストーリーに基づくタスクを依頼し、タスク成功率・所要時間・満足度を計測する。ジョブが達成できなかった箇所はUI上の障壁を特定して修正する。
具体例#
プロジェクト管理ツール — ダッシュボードの再設計
状況: 機能数30以上を誇るが、DAU率が競合の半分。多機能だが「結局何に使えばいいか分からない」との声が多かった。
適用プロセス:
- 新規ユーザー12名にスイッチングインタビュー。主要ジョブ3つを特定:「チームの進捗を一目で把握したい」「期限間近のタスクに即対応したい」「情報をチームに即共有したい」
- ダッシュボードを3ジョブに対応する3パネル構成に再設計
- 既存の機能名ベースのナビゲーションをジョブベースに変更(「タスク」→「今日やること」)
成果: DAU率が競合比50%→95%に改善。オンボーディング時間が平均35分→12分に短縮された。
会計SaaS — 確定申告機能の簡素化
状況: 確定申告機能の利用率が対象ユーザーの23%にとどまり、大半が外部の税理士に依頼していた。
適用プロセス:
- インタビューで発見したジョブ:「確定申告の期限までに正しい書類を完成させたい。税務知識はないが自力でやりたい」
- 既存UIは仕訳入力→試算表→申告書作成という会計知識ベースの流れ。JTBDに基づき「収入を入力→経費を入力→控除を選ぶ→提出する」の4ステップに再設計
- 専門用語をすべてユーザーの言葉(「仕訳」→「お金の記録」)に置換
成果: 自力申告率が23%→61%に向上。サポート問い合わせも58%減少し、ユーザー満足度がNPS+24ポイント改善した。
フードデリバリー — 注文体験の再構築
状況: 「レストランを選ぶのに時間がかかりすぎる」との声が多く、アプリ起動から注文完了までの平均時間が8分と長かった。
適用プロセス:
- ジョブ分析:主要ジョブは「今すぐお腹を満たしたい」であり、「レストランを選ぶ」はジョブではなく手段だった
- トップ画面を「レストラン一覧」から「今すぐ届くメニュー(30分以内)」に変更
- 過去の注文履歴から「いつものやつ」ワンタップ注文機能を追加
成果: 注文完了までの平均時間が8分→3分に短縮。リピート注文率が28%→52%に向上し、GMVが月間18%増加した。
うまくいかないパターン#
| パターン | 問題点 | 対処法 |
|---|---|---|
| 機能をジョブと混同 | 「ファイルをアップロードしたい」はジョブではなく手段 | 「なぜ?」を繰り返し上位の目的を特定する |
| ジョブが抽象的すぎる | 「幸せになりたい」ではUI設計に落とせない | 具体的な状況+成果の形式で記述する |
| インタビューなしの推測 | チームの思い込みとユーザーの実態がずれる | 最低8名のスイッチングインタビューを実施する |
| 全ジョブを同時に解決 | 画面が複雑になり結局使いにくい | 上位3ジョブに絞り優先順位をつける |
まとめ#
JTBD×UXデザインの本質は 「ユーザーは機能を買うのではなく、ジョブの達成を買う」 という視点の転換にある。機能一覧ベースのUIをジョブベースに再構成するだけで、ユーザーが 「何をすればいいか」 が直感的に分かるようになる。スイッチングインタビューでジョブを正確に発見し、ジョブストーリーで明文化し、UIをその達成手段として設計する一貫したプロセスが、使われるプロダクトを生む。