情報アーキテクチャ

英語名 Information Architecture
読み方 インフォメーション アーキテクチャ
難易度
所要時間 数日〜数週間
提唱者 Richard Saul Wurman
目次

ひとことで言うと
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ユーザーが「迷わず目的の情報にたどり着ける」ように、コンテンツの分類・階層・ナビゲーションを設計する技術。図書館の本棚の並べ方や、百貨店のフロアガイドと同じ考え方をデジタルに応用したもの。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
コンテンツインベントリ
サイト内の全コンテンツを洗い出して一覧化する作業。どんな情報がどこにあるかの「棚卸し」。
タクソノミー
コンテンツを分類するための体系的なカテゴリ構造。トピック別、タスク別、対象者別などがある。
カードソーティング
ユーザーに情報を書いたカードを自由に分類してもらうリサーチ手法。ユーザーの自然なメンタルモデルを調べられる。
サイトマップ
ページの階層構造をツリー図で可視化したもの。情報アーキテクチャの設計成果物の代表。

情報アーキテクチャの全体像
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コンテンツ棚卸し→分類体系設計→サイトマップ→ナビゲーション設計の流れ
棚卸し全コンテンツを洗い出す重複・不要・古い情報を特定分類体系ユーザーの思考に合ったカテゴリトピック/タスク/対象者別で整理サイトマップページの階層をツリー図で可視化3レベル以内に抑えるナビゲーションユーザーの言葉でメニューを設計グローバル/ローカルパンくず/検索見た目のデザインより先に「骨格」を正しく設計する
情報アーキテクチャの設計フロー
1
コンテンツ棚卸し
全ページを一覧化し不要を削減
2
分類体系の設計
ユーザーの思考に合ったカテゴリ
3
サイトマップ作成
3レベル以内の階層構造で設計
4
ナビゲーション設計
ユーザーの言葉でメニューを構成

こんな悩みに効く
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  • サイトが大きくなるにつれ、どこに何があるかわからなくなった
  • ユーザーが目的のページにたどり着けず離脱している
  • メニューの項目が多すぎて整理できない

基本の使い方
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コンテンツインベントリで全体像を把握する

まず、すべてのコンテンツを洗い出して一覧にする。

  • サイト内の全ページをスプレッドシートにリスト化
  • 各コンテンツの「目的」「対象ユーザー」「利用頻度」を記録
  • 重複・不要・古いコンテンツを特定する

100ページ以上あるサイトでは、まず「本当に必要なコンテンツ」と「削除してよいコンテンツ」を仕分ける。情報は減らすことから始める

分類体系(タクソノミー)を設計する

コンテンツをユーザーの思考モデルに合ったカテゴリに分類する。

  • トピック別: 「製品」「サービス」「サポート」(最も一般的)
  • タスク別: 「買う」「学ぶ」「問い合わせる」(タスク指向サイト向け)
  • 対象者別: 「個人のお客様」「法人のお客様」(異なるユーザー群がいる場合)

分類は7±2の法則を意識。1階層のカテゴリ数は5〜9個に抑える。カードソーティングでユーザーの自然な分類を調べるのも有効。

サイトマップとナビゲーションを設計する

分類体系をもとに**サイトマップ(ページの階層構造)**を作る。

  • 階層は3レベル以内に抑える(クリック3回で到達できる)
  • グローバルナビ: 全ページ共通のメインメニュー(5〜7項目)
  • ローカルナビ: セクション内のサブメニュー
  • パンくずリスト: 現在地を示す道しるべ
  • 検索: 構造からたどれないユーザーの救済手段

ナビゲーションのラベル(メニュー名)はユーザーの言葉を使う。社内用語や業界用語は避ける。

具体例
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例1:クリニックのWebディレクターが80ページのサイトを55ページに整理して予約率を23%向上させる

コンテンツインベントリ: 全80ページ。うち15ページは3年以上未更新。重複が8ページ。→ 整理して55ページに削減。

ユーザーの主なタスク: 1. 診療科目・症状から受診すべき科を探す、2. 予約する、3. アクセス・営業時間を確認する

サイトマップ: トップ → 診療案内(内科/皮膚科/小児科)/ ご予約(Web/電話)/ アクセス / 医師紹介 / お知らせ

ナビゲーション設計: グローバルナビ4項目。「症状から探す」機能を追加(ユーザーは必ずしも診療科名を知らない)。モバイルでは「Web予約」と「電話する」をフローティングボタンに。

ユーザーの行動パターンに合わせた構造にすることで、予約率が23%向上した。

例2:SaaS企業のヘルプセンターを組織図ベースからタスクベースに再設計する

Before: ヘルプセンターが社内の組織構造に沿って分類されていた。「アカウントチーム」「決済チーム」「API開発チーム」のカテゴリで、ユーザーは「自分の問題がどのチームの管轄か」がわからない。サポートへの問い合わせが月800件。

After: ユーザーのタスクに基づいて再分類。「はじめての設定」「支払い・請求」「データ管理」「トラブルシューティング」の4カテゴリに整理。各カテゴリに「よくある質問 TOP5」を配置。

サポートへの問い合わせが月800件から520件に35%減少。ヘルプページの自己解決率が28%から54%に向上した。

例3:大学のWebサイトをカードソーティングで受験生の視点に再設計する

課題: 大学Webサイトが学部・学科の組織構造をそのまま反映し、受験生が「自分に合う学科」を見つけられない。サイトからの資料請求率が低い。

カードソーティング: 受験生15名に50ページ分のコンテンツカードを渡し、自由に分類してもらった。結果、「学びたいこと別」「卒業後の進路別」の2軸で分類する傾向が明確に。

改善: トップページに「学びたいことから探す」「将来の仕事から探す」の2つの入口を新設。学部・学科ページは残しつつ、複数の入口から到達できるクロスリンク構造に。

資料請求率が前年比で42%増加。「探しやすくなった」の受験生アンケート評価が89%に。

やりがちな失敗パターン
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  1. 組織図をそのままサイト構造にする — 「総務部」「営業部」はユーザーの思考モデルではない。ユーザーのタスクやメンタルモデルに合わせた構造にする
  2. 「すべてをトップページから辿れるように」と詰め込む — トップページにリンクが50個あったら、何もないのと同じ。優先順位をつけて絞る
  3. 一度作って放置する — コンテンツは増え続ける。定期的にインベントリを更新し、構造を見直すことが必要
  4. メニューのラベルに社内用語を使う — ユーザーが理解できる言葉でメニューを命名する。カードソーティングやユーザーテストでラベルの適切さを検証する

まとめ
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情報アーキテクチャは「コンテンツの棚卸し→分類→構造化→ナビゲーション設計」の流れで、ユーザーが迷わないサイトを作る技術。見た目のデザインよりも先に、この 「骨格」 を正しく設計することが、使いやすいプロダクトへの最短ルート。