ひとことで言うと#
全員がドット(シール)を貼って投票し、議論なしに優先順位を可視化する手法。声の大きい人に引っ張られず、全員の意見が平等に反映される。5分で合意形成でき、ワークショップや会議の意思決定を劇的にスピードアップする。
押さえておきたい用語#
- サイレント投票
- 投票前に議論を一切せず、全員が同時に黙って投票するルール。バイアスの排除に不可欠。
- バンドワゴン効果
- 「みんなが選んでいるから自分も」と多数派に流される心理現象。サイレント投票で防ぐ。
- 権威バイアス
- 上司やリーダーの意見に無意識に従ってしまう傾向。ドット投票は役職に関係なく1人1票。
- ドットスタッキング
- 1つの選択肢に複数のドットを重ねて貼ること。「強い支持」を表現するために許可するかをルールで決める。
ドット投票法の全体像#
こんな悩みに効く#
- 議論が長引いて、いつまでも結論が出ない
- 声の大きい人やリーダーの意見に流されがち
- たくさんのアイデアが出たが、どれを優先すべきか決められない
基本の使い方#
投票する対象を全員に見える形で並べる。
- 付箋を壁に貼り出す
- ホワイトボードにリストを書く
- オンラインならMiro/FigJamに付箋を配置
ルール設定:
- 1人あたりの投票数を決める(対象数の1/4〜1/3が目安。10個なら3票)
- 1つの対象に複数票を入れてよいか決める(通常はOK)
議論せずに全員が同時に投票する。
- ドットシール、マーカーの丸、オンラインの投票機能を使う
- 投票時間は1〜2分で十分
- 他の人の投票を見てから投票しないよう、同時に行うのが理想
重要: 投票前に議論を挟むと、権威バイアスやバンドワゴン効果が働く。「黙って貼る」がルール。
投票結果を集計し、上位を次のステップに進める。
- 明確に票が集中した項目 → 全員が重要だと感じている。即採用
- 票が分散した場合 → 短いディスカッション(5分)で絞る
- 票がゼロの項目 → 今回は見送り(ただし記録は残す)
ドット投票は「最終決定」ではなく「方向性の合意」として使うのが効果的。
具体例#
投票ルール: 1人3票、同一機能に複数票OK
結果:
| 機能候補 | 得票数 |
|---|---|
| ダークモード対応 | 6票 |
| 通知のカスタマイズ | 5票 |
| CSV一括インポート | 4票 |
| SNS連携 | 2票 |
| AI自動分類 | 1票 |
| 他5機能 | 各0票 |
判断: ダークモード&通知カスタマイズ → 次期リリースに含める。CSVインポート → 次々期の候補としてバックログに入れる。0票の機能 → 今は見送り。
従来なら1時間かかった優先順位決めが、10分で完了した。
状況: ブレインストーミングで壁一面に80枚の付箋が貼られている。1つずつ議論していたら半日かかる。
投票ルール: 1人5票(80個の約1/16。通常より少なめに設定して差をつけやすくする)。スタッキングは2票まで。
結果: 80個中、票を獲得したのは23個。上位5個に票が明確に集中(8票、7票、6票、5票、5票)。残り18個は1〜2票で分散。
判断: 上位5個をプロトタイプの候補に。2票以上獲得した13個は「パーキングロット」に記録。
80個を5個に絞る作業が、わずか8分で完了。全員が納得感を持てた。
状況: 各部署から出された15個のOKR候補をリモート会議で優先順位づけ。従来は2時間の議論で結論が出ず持ち越しになることが多い。
投票ルール: Miroの投票機能を使用。1人4票。投票時間は90秒に設定(タイマー表示)。
結果: 明確に票が集中したのは3個(12票、10票、9票)。4〜5位は僅差(6票、6票)で、この2つだけ5分のディスカッションで決定。
判断: 上位5個を四半期OKRとして採用。6位以下は次の四半期の検討候補に。
12名のリモート会議で、15分で優先順位が確定。前回比で会議時間を87%短縮した。
やりがちな失敗パターン#
- 投票前に「これがいいと思う」と誰かが発言する — 発言した瞬間にバイアスがかかる。投票は「完全サイレント」が原則。ファシリテーターは投票前の議論を止める
- 投票数が多すぎる — 1人10票で10個の候補に投票すると、全部に票が入って差がつかない。対象数の1/4〜1/3が適切な投票数
- ドット投票だけで最終決定する — 「人気投票」で重要な判断をすると、実現可能性やビジネスインパクトが考慮されない。ドット投票は「方向性の合意」であり、最終判断は別途行う
- オンラインで投票タイミングがずれる — リモートでは先に投票した人の結果が見えてしまうことがある。タイマーを設定し、「一斉に投票」のルールを徹底するか、Miroの非表示投票機能を使う
まとめ#
ドット投票法は「全員の意見を平等に、素早く可視化する」ための合意形成手法。声の大きさに左右されず、5〜10分で優先順位を決められる。ワークショップ・会議・スプリントプランニングなど、チームの意思決定が必要なあらゆる場面で使える。ただし「人気投票」で終わらせず、結果をもとにした深い議論と最終判断をセットで行うこと。