デザインクリティーク手法

英語名 Design Critique Framework
読み方 デザイン・クリティーク・フレームワーク
難易度
所要時間 30〜60分(1セッション)
提唱者 美術教育の批評手法をプロダクトデザインに応用。Jared Spool等が体系化
目次
押さえておきたい用語
  • デザインクリティーク: 主観的な好みではなく、目的・原則・ユーザーの視点からデザインを評価するプロセス
  • 「I like / I wish / What if」: フィードバックを「良い点→改善要望→提案」の3段階で構造化する手法
  • デザイン原則照合: チームが定めたデザイン原則に照らしてフィードバックする方法
  • レッドチーミング: 意図的にデザインの弱点を探す役割を設けてレビューの質を高める手法
1. 文脈の共有目的・制約・ユーザーをまず説明する「このデザインは○○のユーザーが○○を達成するためのものです」2. 構造的フィードバック原則に照らして根拠をもって指摘I like: うまくいく点I wish: 改善したい点What if: 代替案の提示好みではなく理由3. アクション決定フィードバックを優先順位づけし次のステップを決定「対応する」「検討する」「見送る(理由付き)」
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レビュー目的の設定
何について評価してほしいかを明確にする → 文脈の共有

こんな悩みに効く
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  • 「デザインレビューが『好き嫌い』の議論になり建設的でない」
  • 「HiPPO(最も偉い人の意見)でデザインが決まってしまう」
  • 「レビューのフィードバックが曖昧で何を直せばいいか分からない」

使い方
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レビューの焦点を事前に共有する
「今回は情報設計の妥当性についてフィードバックが欲しい」のように、レビューの目的を事前に伝える。焦点を絞らないと、色やフォントなど表層的な指摘に終始してしまう。
デザインの文脈を説明する
デザインを見せる前に、対象ユーザー、達成したいジョブ、技術的制約、ビジネス要件を共有する。文脈なしにデザインを見せると、レビュアーは自分のメンタルモデルで評価してしまう。
I like / I wish / What if でフィードバックする
I like: デザインの目的に照らしてうまくいっている点。I wish: 改善が必要と感じる点とその理由。What if: 代替案の提案。「好きじゃない」ではなく「○○の原則に照らすと、この配置はユーザーが見落とす可能性がある」のように根拠をセットで述べる。
アクションを決定し記録する
出たフィードバックを「対応する」「検討する」「見送る」に分類し、各アクションの担当者と期限を決める。見送る場合も理由を記録し、後から振り返れるようにする。

具体例
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デザインチーム — 週次レビュー会議の改善

状況: 5名のデザインチームの週次レビューが毎回2時間超に。発言が「それ好きじゃない」「もっと大胆に」など主観的で、結論が出ないまま終わることが頻繁。

適用プロセス:

  1. レビューの冒頭で「レビュー焦点シート」を共有。今回のレビュー対象と評価基準(チームのデザイン原則5項目)を明示
  2. フィードバックは付箋に「I like / I wish / What if」の形式で記入し、発表は1人2分以内
  3. 最後にファシリテーターが付箋を分類し、その場で「対応/検討/見送り」を決定

成果: レビュー時間が2時間→45分に短縮。フィードバックの具体性が向上し、デザイン修正の手戻りが40%減少した。

スタートアップ — 創業者レビューの構造化

状況: CEO(非デザイナー)のデザインレビューが「もっとかっこよく」「何か違う」という曖昧なフィードバックに終始し、デザイナーが疲弊していた。

適用プロセス:

  1. CEOに「I like / I wish / What if」フォーマットとデザイン原則カードを渡し、原則に照らした評価を依頼
  2. デザイン提示時に必ず「目的」「ユーザー」「制約」を3分で説明
  3. CEOの「What if」提案は記録し、デザイナーが検討結果を次回レビューで報告

成果: CEOのフィードバック精度が向上し、レビュー回数が平均5回→2回に削減。デザイナーの満足度も5段階中2.3→4.1に改善した。

受託制作会社 — クライアントレビューの効率化

状況: クライアントのデザインレビューで「やっぱり赤がいい」「前の方がよかった」と方針が二転三転し、プロジェクトの平均遅延が3週間に達していた。

適用プロセス:

  1. デザイン提出時に「レビューガイド」を添付。評価ポイント(ブランドとの整合性/ターゲットへの訴求力/技術的実現性)を明示
  2. フィードバックシートに「I like / I wish / What if」の記入欄を用意し、各項目に理由の記入を必須に
  3. レビュー会議の冒頭でプロジェクトの目的とターゲットユーザーを再確認

成果: レビュー1回あたりのフィードバック項目が平均12件→6件に絞られ質が向上。プロジェクト遅延が平均3週間→4日に短縮された。

うまくいかないパターン
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パターン問題点対処法
好みベースのフィードバック「青が好き」は根拠がなく対応しようがないデザイン原則やユーザーデータに照らした評価を求める
ファシリテーター不在議論が発散し結論が出ない専任のファシリテーターを置き時間管理する
すべてを反映しようとする矛盾するフィードバックを全部取り入れるとデザインが崩れる優先順位をつけ、見送る判断も明確にする
文脈なしのレビューレビュアーが誤った前提で評価してしまう必ずデザインの目的と制約を先に共有する

まとめ
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デザインクリティークの価値は「主観を構造に変える」ことにある。好みの対立をデザイン原則とユーザー目的に基づいた議論に転換し、「I like / I wish / What if」のフォーマットでフィードバックの質を均一化する。文脈の共有→構造的フィードバック→アクション決定の3ステップを徹底するだけで、レビュー会議の時間は半減し、デザインの質は上がる。