押さえておきたい用語
- デザインクリティーク: 主観的な好みではなく、目的・原則・ユーザーの視点からデザインを評価するプロセス
- 「I like / I wish / What if」: フィードバックを「良い点→改善要望→提案」の3段階で構造化する手法
- デザイン原則照合: チームが定めたデザイン原則に照らしてフィードバックする方法
- レッドチーミング: 意図的にデザインの弱点を探す役割を設けてレビューの質を高める手法
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レビュー目的の設定
何について評価してほしいかを明確にする → 文脈の共有
こんな悩みに効く#
- 「デザインレビューが『好き嫌い』の議論になり建設的でない」
- 「HiPPO(最も偉い人の意見)でデザインが決まってしまう」
- 「レビューのフィードバックが曖昧で何を直せばいいか分からない」
使い方#
レビューの焦点を事前に共有する
「今回は情報設計の妥当性についてフィードバックが欲しい」のように、レビューの目的を事前に伝える。焦点を絞らないと、色やフォントなど表層的な指摘に終始してしまう。
デザインの文脈を説明する
デザインを見せる前に、対象ユーザー、達成したいジョブ、技術的制約、ビジネス要件を共有する。文脈なしにデザインを見せると、レビュアーは自分のメンタルモデルで評価してしまう。
I like / I wish / What if でフィードバックする
I like: デザインの目的に照らしてうまくいっている点。I wish: 改善が必要と感じる点とその理由。What if: 代替案の提案。「好きじゃない」ではなく「○○の原則に照らすと、この配置はユーザーが見落とす可能性がある」のように根拠をセットで述べる。
アクションを決定し記録する
出たフィードバックを「対応する」「検討する」「見送る」に分類し、各アクションの担当者と期限を決める。見送る場合も理由を記録し、後から振り返れるようにする。
具体例#
デザインチーム — 週次レビュー会議の改善
状況: 5名のデザインチームの週次レビューが毎回2時間超に。発言が「それ好きじゃない」「もっと大胆に」など主観的で、結論が出ないまま終わることが頻繁。
適用プロセス:
- レビューの冒頭で「レビュー焦点シート」を共有。今回のレビュー対象と評価基準(チームのデザイン原則5項目)を明示
- フィードバックは付箋に「I like / I wish / What if」の形式で記入し、発表は1人2分以内
- 最後にファシリテーターが付箋を分類し、その場で「対応/検討/見送り」を決定
成果: レビュー時間が2時間→45分に短縮。フィードバックの具体性が向上し、デザイン修正の手戻りが40%減少した。
スタートアップ — 創業者レビューの構造化
状況: CEO(非デザイナー)のデザインレビューが「もっとかっこよく」「何か違う」という曖昧なフィードバックに終始し、デザイナーが疲弊していた。
適用プロセス:
- CEOに「I like / I wish / What if」フォーマットとデザイン原則カードを渡し、原則に照らした評価を依頼
- デザイン提示時に必ず「目的」「ユーザー」「制約」を3分で説明
- CEOの「What if」提案は記録し、デザイナーが検討結果を次回レビューで報告
成果: CEOのフィードバック精度が向上し、レビュー回数が平均5回→2回に削減。デザイナーの満足度も5段階中2.3→4.1に改善した。
受託制作会社 — クライアントレビューの効率化
状況: クライアントのデザインレビューで「やっぱり赤がいい」「前の方がよかった」と方針が二転三転し、プロジェクトの平均遅延が3週間に達していた。
適用プロセス:
- デザイン提出時に「レビューガイド」を添付。評価ポイント(ブランドとの整合性/ターゲットへの訴求力/技術的実現性)を明示
- フィードバックシートに「I like / I wish / What if」の記入欄を用意し、各項目に理由の記入を必須に
- レビュー会議の冒頭でプロジェクトの目的とターゲットユーザーを再確認
成果: レビュー1回あたりのフィードバック項目が平均12件→6件に絞られ質が向上。プロジェクト遅延が平均3週間→4日に短縮された。
うまくいかないパターン#
| パターン | 問題点 | 対処法 |
|---|---|---|
| 好みベースのフィードバック | 「青が好き」は根拠がなく対応しようがない | デザイン原則やユーザーデータに照らした評価を求める |
| ファシリテーター不在 | 議論が発散し結論が出ない | 専任のファシリテーターを置き時間管理する |
| すべてを反映しようとする | 矛盾するフィードバックを全部取り入れるとデザインが崩れる | 優先順位をつけ、見送る判断も明確にする |
| 文脈なしのレビュー | レビュアーが誤った前提で評価してしまう | 必ずデザインの目的と制約を先に共有する |
まとめ#
デザインクリティークの価値は「主観を構造に変える」ことにある。好みの対立をデザイン原則とユーザー目的に基づいた議論に転換し、「I like / I wish / What if」のフォーマットでフィードバックの質を均一化する。文脈の共有→構造的フィードバック→アクション決定の3ステップを徹底するだけで、レビュー会議の時間は半減し、デザインの質は上がる。