競合UX分析

英語名 Competitive UX Analysis
読み方 コンペティティブ ユーエックス アナリシス
難易度
所要時間 2〜5日
提唱者 UXリサーチプラクティス
目次

ひとことで言うと
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競合プロダクトを実際に使い倒して、UXの強み・弱みを体系的に比較分析する手法。「競合がやっていること」を参考にするだけでなく、「競合がやっていないこと(=差別化の機会)」を見つけるのが本質的な目的。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
直接競合(Direct Competitor)
同じ課題を同じ方法で解決する直接的な競合サービスのこと。同じカテゴリに属し、ユーザーが「どちらにしようか」と比較する対象。
間接競合(Indirect Competitor)
同じ課題を別の方法で解決する間接的な競合を指す。Excelはプロジェクト管理ツールの間接競合にあたる。
ベンチマーク
UXが優れていると評判の異業種サービスを比較対象に含めること。業界の枠を超えたUXの基準を知るために活用する。
比較マトリクス
複数の競合を同じ評価軸で一覧比較する表である。競合UX分析の最終アウトプットの中心になる。

競合UX分析の全体像
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分析対象選定→実際に使う→比較マトリクス→アクション導出の流れ
対象・軸の設定競合3〜5社を選定評価軸を設定直接+間接+ベンチマーク実際に使う主要タスクを実行スクショ+記録初見ユーザー視点で比較マトリクス一覧比較で整理根拠を添える強み・弱みを可視化アクション導出改善・差別化・維持をロードマップへ優先順位をつけて実行「コピー」ではなく「差別化の機会」を見つける
競合UX分析の進め方フロー
1
対象と軸を設定
競合3〜5社と評価軸を決める
2
実際に使い倒す
主要タスクを実行しスクショで記録
3
比較マトリクス作成
評価軸×競合で一覧比較
アクションプラン
改善・差別化をロードマップに反映

こんな悩みに効く
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  • 自社プロダクトのUXが競合と比べてどうなのかわからない
  • 「競合を参考にしろ」と言われるが、何をどう見ればいいかわからない
  • UIの改善提案をしたいが、説得力のある根拠がない

基本の使い方
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ステップ1: 分析対象と評価軸を決める

直接競合3〜5社を選び、比較する軸を設定する。

競合の選び方:

  • 直接競合: 同じ課題を同じ方法で解決するサービス
  • 間接競合: 同じ課題を別の方法で解決するサービス
  • ベンチマーク: UXが優れていると評判の異業種サービス

評価軸の例:

  • オンボーディング体験
  • 主要タスクの完了ステップ数
  • 情報設計(ナビゲーション、検索)
  • ビジュアルデザインの品質
  • エラー処理・ヘルプの充実度
  • モバイル対応の品質
ステップ2: 実際に使って記録する

各サービスにユーザーとして登録し、主要タスクを一通り実行する

記録すべき内容:

  • 各画面のスクリーンショット
  • タスク完了までのステップ数と所要時間
  • 「良い」と感じたポイント(なぜ良いか)
  • 「悪い」と感じたポイント(なぜ悪いか)
  • 「意外」だったポイント(想定外の体験)

コツ: 初見のユーザー視点で使うこと。事前に調べすぎると、初回体験の良し悪しが見えなくなる。

ステップ3: 比較マトリクスにまとめる

収集した情報を一覧比較できる形式に整理する。

各セルに「なぜその評価か」の根拠(スクリーンショット + コメント)を添える。

ステップ4: インサイトとアクションプランを導く

比較結果から自社プロダクトへのアクションを導く。

  • すぐ改善: 競合全社がやっていて自社だけやっていないこと
  • 差別化の機会: どの競合もやっていない or うまくいっていないこと
  • 模倣すべきパターン: 特定の競合が圧倒的に優れている部分
  • 維持すべき強み: 自社が競合より優れている部分

優先順位をつけて、ロードマップに組み込む。

具体例
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例1:タスク管理SaaSが競合3社との差別化ポイントを発見する

状況: 従業員50名のタスク管理SaaS。ARR 1.2億円で成長が鈍化。競合(Todoist、Asana、Notion)と比較して「何が弱いか」「どこで差別化できるか」を明確にしたい。

主要タスク: 「新しいプロジェクトを作成してタスクを3つ追加する」

指標自社TodoistAsanaNotion
完了ステップ数8456
所要時間3分20秒1分10秒1分30秒2分00秒
キーボード操作対応なしありありあり
テンプレート提供なしありありあり

インサイト:

  1. 自社のステップ数が最多 → プロジェクト作成フローの簡略化が急務
  2. 全競合がキーボードショートカットに対応 → パワーユーザー向け機能が不足
  3. 全競合がテンプレートを提供 → テンプレート機能を次期開発に追加

差別化の機会: 競合3社ともAIによるタスク自動生成はなし → AI機能で差別化可能

半年後のARRは1.5億円に成長。まず「競合並み」に追いつき、次にAIタスク生成で差別化——この2段階戦略が効いた。

例2:オンライン英会話サービスがオンボーディングの競合差を数値化して改善する

状況: オンライン英会話サービス(月間ユーザー3万人)。無料体験からの有料転換率が8%と低い。競合5社のオンボーディング体験を比較分析して改善の根拠を得たい。

オンボーディング比較(登録→初回レッスン完了まで):

指標自社競合A競合B競合C
完了までのステップ数12576
所要時間15分4分6分5分
レベルテストの有無あり(8分)なしあり(2分)なし
初回レッスンまでの予約障壁高い低い低い

最大の発見: 自社の8分間のレベルテストが最大の離脱ポイント。競合Bは2分のミニテストで同等の精度を実現していた。

指標改善前改善後
無料体験→有料転換率8%18%
登録→初回レッスン到達率35%72%
レベルテストの所要時間8分2分

転換率8%→18%(2.25倍)。レベルテストを8分→2分に短縮しただけでこの変化。「自社だけの常識」は競合比較なしには覆せなかった。

例3:地方銀行のネットバンキングが異業種ベンチマークで改善方向を見出す

状況: 地方銀行(預金残高2兆円)のネットバンキング。利用率が顧客の22%にとどまり、「使いにくい」が窓口での不満の1位。同業他行との比較だけでは改善の方向性が見えない。

分析対象: 同業3行+異業種ベンチマーク2社(PayPay、楽天証券)

評価軸と結果:

評価軸自社地銀A地銀BPayPay楽天証券
送金のステップ数98735
残高確認までのタップ数43312
生体認証対応なしなしありありあり

インサイト: 同業内の差は小さいが、異業種との差が圧倒的。PayPayの「1タップで残高確認」が顧客の新しい基準を作っている。

指標改善前改善後
ネットバンキング利用率22%41%
送金のステップ数94
顧客満足度スコア3.1/5.04.2/5.0

ネットバンキング利用率22%→41%、送金ステップ9→4。同業比較では差が見えなかったが、PayPayを入れた瞬間に「顧客が求めるUXの水準」が見えた。

やりがちな失敗パターン
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  1. スクリーンショットを並べて終わる — 画面の見た目を比較するだけでは分析にならない。「なぜこのUIが効果的か」「ユーザーにとって何が違うか」までを言語化する
  2. 競合のUIをそのままコピーする — 競合のUIは競合のコンテキストで最適化されたもの。自社のユーザー・ブランド・技術制約に合わせてアレンジする必要がある
  3. 一度やって終わりにする — 競合もUIを更新し続けている。半年〜1年ごとに再分析して、変化をキャッチアップする
  4. 同業種の競合しか見ない — 顧客のUX期待値は業界を超えて形成される。異業種のベンチマークを含めることで、本当に目指すべき水準が見える

まとめ
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競合UX分析は、競合のUIをコピーするための作業ではなく、「市場のUX水準を把握し、差別化の機会を見つける」ための手法。実際にサービスを使い、体系的に比較し、自社プロダクトへのアクションに落とし込む。定期的に実施することで、競合の動きに遅れず、かつ独自の価値を提供し続けられる。