ひとことで言うと#
コンテンツや機能をカードに書き出し、ユーザーに自由に分類してもらうことで、ユーザーの自然な思考モデルに合った情報構造を発見するリサーチ手法。設計者の思い込みではなく、実際のユーザーの分類感覚がわかる。
押さえておきたい用語#
- オープンソート
- カテゴリ名も参加者が自由に決める方式。新規サイトの構造を探る際に有効で、ユーザーの自然な分類感覚を発見できる。
- クローズドソート
- あらかじめ決めたカテゴリにカードを振り分けてもらう方式。既存カテゴリの妥当性を検証する際に有効。
- 類似度マトリクス
- 2つの項目が同じグループに分類された頻度を数値化した表である。結果分析の基本ツール。
- デンドログラム(樹形図)
- 類似度をもとに項目のクラスター(自然なグループ)を階層的に可視化した図を指す。情報構造の決定に使う。
カードソーティングの全体像#
こんな悩みに効く#
- メニュー構造を「自分たちの感覚」で作ったが、ユーザーが迷っている
- カテゴリ名が社内用語になっていて、ユーザーに伝わらない
- 新しいサイト構造を検討中だが、どう分類すべきか判断できない
基本の使い方#
分類したい項目を1枚1項目でカードに書き出す。
- サイトのページ名、機能名、コンテンツ名など
- 30〜60枚が適切(少なすぎると浅い結果、多すぎると参加者が疲れる)
- 専門用語は避け、ユーザーが理解できる言葉で書く
物理カード(付箋やインデックスカード)でもオンラインツール(Optimal Workshop、Miro等)でもOK。
2つのタイプから目的に合った方法を選ぶ。
オープンソート: カテゴリ名も参加者が自由に決める。新規サイトの構造を探るときに有効。「この商品たちをグループに分けて、グループに名前をつけてください」
クローズドソート: あらかじめ決めたカテゴリに分類してもらう。既存カテゴリの妥当性を検証するときに有効。「これらの項目を、この5つのカテゴリに振り分けてください」
- 参加者は15〜20人が理想(パターンが安定する)
- 分類中に「なぜそこに入れたか」を声に出してもらう(シンクアラウド法)
複数参加者の分類結果を統合分析する。
- 類似度マトリクス: 2つの項目が同じグループに入れられた頻度を数値化
- デンドログラム(樹形図): 類似度をもとに項目のクラスター(自然なグループ)を可視化
- カテゴリ名の頻出ワード: ユーザーが使ったラベルから、ナビゲーションの名前を決定
80%以上のユーザーが同じグループに分類した項目は、確実に同じカテゴリに入れてよい。意見が割れた項目は複数の場所からアクセスできるようにする。
具体例#
状況: 月間PV 200万のレシピサイト。「和食」「洋食」「中華」のカテゴリだが、サイト内検索の利用率が62%と異常に高く、カテゴリナビゲーションが機能していない。
カードソーティング実施:
- カード40枚(「肉じゃが」「パスタカルボナーラ」「10分チャーハン」「作り置きおかず」等)
- 参加者18人にオープンソートを実施
結果:
- 「簡単・時短」グループを80%の参加者が作成
- 「メイン料理」「副菜」「汁物」のカテゴリ分けが多数
- 「和食/洋食」での分類は参加者の30%のみ
- 「子どもが好きなもの」というカテゴリも複数出現
新構造への反映:
- 第1階層: 「時短レシピ」「メインのおかず」「副菜・サラダ」「スープ・汁物」「お弁当」
- フィルター機能: ジャンル(和/洋/中)は絞り込みフィルターに格下げ
- タグ: 「子ども向け」「作り置きOK」をクロスカテゴリとして追加
| 指標 | 変更前 | 変更後 |
|---|---|---|
| カテゴリ経由のレシピ到達率 | 23% | 54%(+135%) |
| サイト内検索依存率 | 62% | 31% |
| 直帰率 | 48% | 29% |
ユーザーは「ジャンル」ではなく「シーン」でレシピを探していた。設計者の思い込みとユーザーの実態のギャップが、カードソーティングで鮮明になった。
状況: 従業員80名のBtoB SaaS企業。ヘルプセンターの記事数が300を超え、「記事を探せない」という問い合わせが月100件。現在のカテゴリは機能名ベース(「レポート機能」「ユーザー管理」等)。
カードソーティング実施:
- カード50枚(ヘルプ記事のタイトル)
- 参加者16人(顧客の管理者8人+一般ユーザー8人)にクローズドソートを実施
- 既存カテゴリ5つ+「その他」の6つに振り分けてもらう
発見:
- 「その他」に30%のカードが入った → 既存カテゴリが不適切
- 管理者と一般ユーザーで分類が大きく異なる
- 「初期設定」「トラブルシューティング」カテゴリを求める声が多数
| 指標 | 変更前 | 変更後 |
|---|---|---|
| 「記事が見つからない」問い合わせ | 月100件 | 月28件 |
| ヘルプ記事の自己解決率 | 35% | 68% |
| 記事到達までの平均クリック数 | 4.2回 | 1.8回 |
機能名ベースのカテゴリは開発者目線であり、ユーザーは「何をしたいか」で情報を探す。この認識のズレはカードソーティングなしには可視化できなかった。ロールベースのナビゲーションへの刷新で、自己解決率が35%→68%に跳ね上がった。
状況: 人口5万人の地方自治体の観光サイト。年間20万PVだが「見どころ」「食べる」「泊まる」「アクセス」の4カテゴリでは、観光客の回遊が発生せず、平均ページビューが1.3と低い。
カードソーティング実施:
- カード35枚(観光スポット、飲食店、宿泊施設、体験プログラム等)
- 参加者20人(県外からの観光客経験者)にオープンソートをオンラインで実施
発見:
- 「半日コース」「1日コース」という時間軸での分類が最多(75%)
- 「家族向け」「カップル向け」という人物軸も多数(60%)
- 「見どころ」と「食べる」を分けず、エリアでまとめる傾向が強い
| 指標 | 改善前 | 改善後 |
|---|---|---|
| 平均ページビュー | 1.3 | 3.8 |
| 観光コースページのクリック率 | (なし) | 42% |
| 宿泊予約ページへの遷移率 | 4% | 18% |
観光客は「何があるか」ではなく「どう過ごすか」で情報を探す。「モデルコース+エリア」構造への転換で平均ページビューが1.3→3.8に向上し、宿泊予約ページへの遷移率も4%→18%に改善した。
やりがちな失敗パターン#
- 参加者が少なすぎる — 5人以下ではパターンが見えない。最低15人は集める。オンラインツールなら低コストで人数を増やせる
- カードの粒度がバラバラ — 「トップページ」と「お問い合わせフォームの確認画面」が混在すると、分類がブレる。同じ階層レベルの項目に揃える
- 結果を鵜呑みにする — カードソーティングは「ユーザーの傾向」を示すもの。ビジネス要件やSEOの観点も加味して最終構造を決める
- オープンソートとクローズドソートを混同する — 新規設計にはオープンソート、既存構造の検証にはクローズドソートが適切。目的に合わない方式を選ぶと得られるインサイトが薄くなる
まとめ#
カードソーティングは「ユーザーが自然にどう情報を分類するか」を直接知ることができるリサーチ手法。15〜20人で実施すれば、設計者の思い込みとユーザーの実態のギャップが鮮明に見える。情報アーキテクチャの設計前に必ずやっておきたい、コスパ最強のリサーチ方法。