押さえておきたい用語
- アーキタイプ: カール・ユングが提唱した「集合的無意識」に共通する人格の原型。人が本能的に共感するキャラクター類型
- ブランドアーキタイプ: 12の原型からブランドの「人格」を選び、コミュニケーションとデザインに一貫性を持たせる手法
- ビジュアル言語: アーキタイプに基づく色・フォント・写真・イラストのスタイル規定
- トーン・オブ・ボイス: アーキタイプに基づく言葉遣い・文体・コピーのスタイル
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ブランドの核心的価値を定義
何を最も大切にしているかを言語化 → アーキタイプの選定
こんな悩みに効く#
- 「ブランドの個性が定まらずデザインの方向性がブレる」
- 「デザイナーによってトーンやビジュアルスタイルが異なる」
- 「競合と似たような印象のブランドになってしまっている」
使い方#
ブランドの核心的価値を言語化する
「私たちのブランドは何を最も大切にしているか」「ユーザーにどんな感情を与えたいか」「3年後にどう認知されていたいか」を議論する。抽象的でもよいので、ブランドの根幹にある価値を3〜5個の言葉で表現する。
12の原型から1〜2個を選ぶ
12のアーキタイプの特徴とブランドの核心的価値を照合し、最も近い原型を1つ選ぶ。サブアーキタイプとして2つ目を選んでもよいが、3つ以上は個性がぼやけるため避ける。
ビジュアル言語を策定する
アーキタイプに合わせて色・フォント・写真スタイル・イラストスタイルを定義する。「英雄」なら力強いサンセリフ体と高コントラスト配色、「賢者」なら知的なセリフ体と落ち着いたブルー系、のように変換する。
全タッチポイントに展開する
ウェブサイト、アプリ、メール、広告、カスタマーサポートの応対まで、すべてのタッチポイントでアーキタイプに基づいた一貫した表現を行う。ブランドガイドラインに「やること」「やらないこと」の具体例を記載する。
具体例#
フィットネスブランド — 「英雄」アーキタイプの適用
状況: フィットネスアプリのブランドイメージが曖昧で、「楽しい」「ストイック」「健康的」と社内の認識もバラバラ。広告とアプリのトーンも不統一だった。
適用プロセス:
- 核心的価値:「挑戦を楽しむ」「限界を超える」「成長する喜び」→アーキタイプは「英雄」
- ビジュアル言語:黒+ゴールドの配色、太いサンセリフ体、アクション中の躍動感ある写真、暗い背景に光が差す演出
- トーン・オブ・ボイス:「やってみよう」「もう1セット」「昨日の自分を超えろ」のような鼓舞する言葉遣い
成果: ブランド認知調査で「挑戦的」の回答が18%→62%に急増。広告のクリック率が2.1倍に向上し、ブランドの一貫性が競合との明確な差別化に寄与した。
オーガニック食品EC — 「養育者」アーキタイプの適用
状況: オーガニック食品のECサイトだが、ビジュアルがクールで都会的な印象。「自然で温かい」というブランドの本質が伝わっていなかった。
適用プロセス:
- 核心的価値:「家族の健康を守る」「自然の恵み」「安心できる食卓」→アーキタイプは「養育者」
- ビジュアル言語:アースカラー(ベージュ・ブラウン・グリーン)、丸みのあるフォント、手描きイラスト、食卓の写真(家族の食事シーン)
- コピーのトーン:「おかえりなさい」「大切なあなたへ」のような温かさを持つ表現
成果: ブランドの「温かさ」スコアが5段階中2.4→4.6に向上。リピート率が28%→45%に改善し、顧客が「このブランドが好き」と感じる感情的なつながりが形成された。
テックスタートアップ — 「魔術師」アーキタイプでリブランディング
状況: AI技術のスタートアップで、「技術は高度だがブランドが無個性」という評価。資金調達やメディア露出時のインパクトが弱かった。
適用プロセス:
- 核心的価値:「不可能を可能にする」「未来を今に持ってくる」「体験を変容させる」→アーキタイプは「魔術師」
- ビジュアル言語:ダークモード基調+パープルのアクセント、光のエフェクト、未来的なフォント(Spline Sans等)、抽象的な3Dビジュアル
- プロダクトのコピー:「魔法のように」「一瞬で」「あなたの世界を変える」のような変容を表現する言葉
成果: リブランディング後のメディア掲載が3倍に増加。投資家プレゼンでの「記憶に残るブランド」評価が5段階中4.7を記録した。
うまくいかないパターン#
| パターン | 問題点 | 対処法 |
|---|---|---|
| アーキタイプを3つ以上選ぶ | 個性が薄まり「何者でもない」ブランドになる | 1つのメイン+1つのサブに絞る |
| 表層的な適用に終わる | 色とフォントだけ変えても人格は伝わらない | コピー・インタラクション・カスタマーサポートまで統一する |
| 競合と同じアーキタイプを選ぶ | 差別化にならない | 同カテゴリの競合のアーキタイプを分析し、意図的にズラす |
| チーム内の共有不足 | デザイナーだけが理解し他部門に浸透しない | ブランドガイドラインに具体例を豊富に記載する |
まとめ#
ブランドアーキタイプは「ブランドの人格」を12の原型で定義し、すべてのデザインとコミュニケーションに一貫性を与える。色・フォント・写真・コピーを感覚ではなく人格の表現として設計できるため、チーム全体で統一したブランド体験を作れるようになる。アーキタイプは1〜2個に絞り、全タッチポイントに浸透させることで、ユーザーの記憶に残るブランドが形成される。