ブランドアーキタイプ(デザイン)

英語名 Brand Archetype Design
読み方 ブランド・アーキタイプ・デザイン
難易度
所要時間 2〜4時間(アーキタイプの選定とデザイン方針の策定)
提唱者 カール・ユングの元型理論(Archetypes)をマーケティングに応用。Margaret Markらが12類型に体系化
目次
押さえておきたい用語
  • アーキタイプ: カール・ユングが提唱した「集合的無意識」に共通する人格の原型。人が本能的に共感するキャラクター類型
  • ブランドアーキタイプ: 12の原型からブランドの「人格」を選び、コミュニケーションとデザインに一貫性を持たせる手法
  • ビジュアル言語: アーキタイプに基づく色・フォント・写真・イラストのスタイル規定
  • トーン・オブ・ボイス: アーキタイプに基づく言葉遣い・文体・コピーのスタイル
安定を求める養育者ケア・保護例:P&G支配者権威・秩序例:Mercedes創造者革新・表現例:Adobe自立を求める英雄勇気・挑戦例:Nike反逆者破壊・解放例:Harley魔術師変容・魔法例:Apple帰属を求める庶民親しみ・平等例:IKEA道化師楽しさ・遊び例:M&Ms恋人情熱・美例:Chanel探求を求める探検家自由・冒険例:Patagonia賢者知恵・真実例:Google純真楽観・善良例:Dove12の原型から1〜2個を選び、ブランドの一貫した人格を設計する
1
ブランドの核心的価値を定義
何を最も大切にしているかを言語化 → アーキタイプの選定

こんな悩みに効く
#

  • 「ブランドの個性が定まらずデザインの方向性がブレる」
  • 「デザイナーによってトーンやビジュアルスタイルが異なる」
  • 「競合と似たような印象のブランドになってしまっている」

使い方
#

ブランドの核心的価値を言語化する
「私たちのブランドは何を最も大切にしているか」「ユーザーにどんな感情を与えたいか」「3年後にどう認知されていたいか」を議論する。抽象的でもよいので、ブランドの根幹にある価値を3〜5個の言葉で表現する。
12の原型から1〜2個を選ぶ
12のアーキタイプの特徴とブランドの核心的価値を照合し、最も近い原型を1つ選ぶ。サブアーキタイプとして2つ目を選んでもよいが、3つ以上は個性がぼやけるため避ける。
ビジュアル言語を策定する
アーキタイプに合わせて色・フォント・写真スタイル・イラストスタイルを定義する。「英雄」なら力強いサンセリフ体と高コントラスト配色、「賢者」なら知的なセリフ体と落ち着いたブルー系、のように変換する。
全タッチポイントに展開する
ウェブサイト、アプリ、メール、広告、カスタマーサポートの応対まで、すべてのタッチポイントでアーキタイプに基づいた一貫した表現を行う。ブランドガイドラインに「やること」「やらないこと」の具体例を記載する。

具体例
#

フィットネスブランド — 「英雄」アーキタイプの適用

状況: フィットネスアプリのブランドイメージが曖昧で、「楽しい」「ストイック」「健康的」と社内の認識もバラバラ。広告とアプリのトーンも不統一だった。

適用プロセス:

  1. 核心的価値:「挑戦を楽しむ」「限界を超える」「成長する喜び」→アーキタイプは「英雄」
  2. ビジュアル言語:黒+ゴールドの配色、太いサンセリフ体、アクション中の躍動感ある写真、暗い背景に光が差す演出
  3. トーン・オブ・ボイス:「やってみよう」「もう1セット」「昨日の自分を超えろ」のような鼓舞する言葉遣い

成果: ブランド認知調査で「挑戦的」の回答が18%→62%に急増。広告のクリック率が2.1倍に向上し、ブランドの一貫性が競合との明確な差別化に寄与した。

オーガニック食品EC — 「養育者」アーキタイプの適用

状況: オーガニック食品のECサイトだが、ビジュアルがクールで都会的な印象。「自然で温かい」というブランドの本質が伝わっていなかった。

適用プロセス:

  1. 核心的価値:「家族の健康を守る」「自然の恵み」「安心できる食卓」→アーキタイプは「養育者」
  2. ビジュアル言語:アースカラー(ベージュ・ブラウン・グリーン)、丸みのあるフォント、手描きイラスト、食卓の写真(家族の食事シーン)
  3. コピーのトーン:「おかえりなさい」「大切なあなたへ」のような温かさを持つ表現

成果: ブランドの「温かさ」スコアが5段階中2.4→4.6に向上。リピート率が28%→45%に改善し、顧客が「このブランドが好き」と感じる感情的なつながりが形成された。

テックスタートアップ — 「魔術師」アーキタイプでリブランディング

状況: AI技術のスタートアップで、「技術は高度だがブランドが無個性」という評価。資金調達やメディア露出時のインパクトが弱かった。

適用プロセス:

  1. 核心的価値:「不可能を可能にする」「未来を今に持ってくる」「体験を変容させる」→アーキタイプは「魔術師」
  2. ビジュアル言語:ダークモード基調+パープルのアクセント、光のエフェクト、未来的なフォント(Spline Sans等)、抽象的な3Dビジュアル
  3. プロダクトのコピー:「魔法のように」「一瞬で」「あなたの世界を変える」のような変容を表現する言葉

成果: リブランディング後のメディア掲載が3倍に増加。投資家プレゼンでの「記憶に残るブランド」評価が5段階中4.7を記録した。

うまくいかないパターン
#

パターン問題点対処法
アーキタイプを3つ以上選ぶ個性が薄まり「何者でもない」ブランドになる1つのメイン+1つのサブに絞る
表層的な適用に終わる色とフォントだけ変えても人格は伝わらないコピー・インタラクション・カスタマーサポートまで統一する
競合と同じアーキタイプを選ぶ差別化にならない同カテゴリの競合のアーキタイプを分析し、意図的にズラす
チーム内の共有不足デザイナーだけが理解し他部門に浸透しないブランドガイドラインに具体例を豊富に記載する

まとめ
#

ブランドアーキタイプは「ブランドの人格」を12の原型で定義し、すべてのデザインとコミュニケーションに一貫性を与える。色・フォント・写真・コピーを感覚ではなく人格の表現として設計できるため、チーム全体で統一したブランド体験を作れるようになる。アーキタイプは1〜2個に絞り、全タッチポイントに浸透させることで、ユーザーの記憶に残るブランドが形成される。