イベント分析

英語名 Event Analytics
読み方 イベント アナリティクス
難易度
所要時間 2〜4時間
提唱者 Web解析の発展に伴い、ページビュー中心からイベント中心の分析へ移行(2010年代〜)
目次

ひとことで言うと
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ユーザーの行動(クリック・購入・検索など)を1つ1つの「イベント」として記録・構造化し、行動パターンを分析する手法。ページビューだけでは見えない**「ユーザーが実際に何をしているか」**を定量的に把握し、プロダクト改善の根拠にできる。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
イベント(Event / イベント)
ユーザーが行った1つの行動を表すデータレコードのこと。「ボタンをクリックした」「商品をカートに入れた」「検索した」など、時刻・ユーザーID・行動内容を含むログとして記録する。
イベントプロパティ(Event Property / イベント プロパティ)
イベントに付随する属性情報を指す。「カートに追加」イベントなら、商品名・価格・カテゴリ・数量などがプロパティにあたる。プロパティが豊富なほど深い分析ができる。
イベントタクソノミー(Event Taxonomy / イベント タクソノミー)
イベントの命名規則と分類体系である。チーム全体で統一しないと、同じ行動が別名で記録されたり、逆に異なる行動が同じ名前で混在したりして、分析が成立しなくなる。
セッション(Session / セッション)
ユーザーの一連の行動を時間的にまとめたひとかたまりの活動単位。一般に30分間の非活動で区切る。イベント分析ではセッション内のイベント列から行動パターンを読み解く。

イベント分析の全体像
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イベント分析:行動ログの構造化から分析・改善までの流れ
1. イベント収集click_buttonadd_to_cartsearch_querypurchase_completeSDKで自動+手動トラッキング2. 構造化タクソノミー設計命名規則: object_action形式プロパティ: 必須/任意を定義カテゴリ: 行動種別で分類トラッキングプランで一元管理3. 分析分析パターン頻度分析: 何が多い?シーケンス分析: どの順序?ファネル分析: どこで離脱?セグメント比較: 誰が違う?主要な分析パターン頻度分析どのイベントが何回発生したか機能の利用率を把握シーケンス分析イベントの発生順序とパターンを分析典型的な行動経路を発見ファネル分析特定の行動列での離脱率を段階別に測定ボトルネックを特定セグメント比較ユーザー属性別に行動パターンを比較高LTVユーザーの特徴発見インサイト → 改善施策行動データに基づくプロダクト改善仮説発見 → A/Bテスト → 検証イベントデータの構造例user_123 | 2026-03-12 14:32 | add_to_cart | product: "スニーカーA" | price: 12800 | category: "shoes"
イベント分析の進め方フロー
1
タクソノミー設計
イベント命名規則を統一
2
トラッキング実装
必要なイベントを計測開始
3
行動パターン分析
頻度・順序・離脱を可視化
仮説を立てて検証
データから改善策を実行

こんな悩みに効く
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  • 新機能をリリースしたが、実際にどのくらい使われているかわからない
  • ユーザーがどこで離脱しているか、ページビューだけでは特定できない
  • イベントトラッキングを入れたが、データがバラバラで分析できない

基本の使い方
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ステップ1: イベントタクソノミーを設計する

分析のすべての土台になるのが命名規則と分類体系。チーム全体で統一する。

命名規則の推奨フォーマット: object_action

  • product_viewed(商品を閲覧した)
  • cart_item_added(カートに追加した)
  • checkout_completed(購入を完了した)
  • search_executed(検索を実行した)

各イベントには必須プロパティを定義:

イベント必須プロパティ
product_viewedproduct_id, category, price
cart_item_addedproduct_id, quantity, price
checkout_completedorder_id, total_amount, item_count

トラッキングプラン(スプレッドシートで十分)にすべてのイベント定義を記録し、エンジニア・PM・アナリストで共有する。

ステップ2: トラッキングを実装・検証する

設計したイベントを実際に計測開始する。

  • 自動トラッキング: ページビュー、クリック、スクロールなど汎用的な行動
  • 手動トラッキング: ビジネス固有の重要行動(購入、申し込み、特定機能の利用など)

実装後は必ず検証:

  • すべてのイベントが正しく発火しているか(開発者ツールで確認)
  • プロパティの値が正しく記録されているか(null や空文字がないか)
  • ユーザーIDが正しく紐づいているか(匿名→ログイン後の接続)

検証を怠ると、数ヶ月分のデータが使い物にならない事態になりかねない。

ステップ3: 行動パターンを分析する

データが蓄積されたら、目的に応じた分析パターンを使う。

頻度分析 — まず全体像を把握

  • 各イベントの発生回数・ユニークユーザー数を集計
  • 「よく使われている機能」と「ほとんど使われていない機能」を特定

シーケンス分析 — 行動の流れを把握

  • コンバージョンに至ったユーザーの行動パスを抽出
  • 「検索 → 商品閲覧 → カート追加」が多いのか「おすすめ → 商品閲覧 → カート追加」が多いのか

ファネル分析 — ボトルネックを特定

  • 主要な行動ステップの通過率を計算
  • 「カート追加 → 購入完了」の**離脱率が65%**なら、決済フローに問題がある可能性

セグメント比較 — 差異を発見

  • 継続ユーザー vs 離脱ユーザーの行動を比較
  • 「初回ログインから3日以内に○○機能を使ったユーザーは、30日後の継続率が2.4倍高い」
ステップ4: インサイトから改善仮説を立て、検証する

分析結果をそのままにしない。改善仮説に変換する。

例: 「カート追加 → 購入完了の離脱率が65%」という発見から:

  • 仮説1: 送料表示が遅い → 送料を商品ページに事前表示する
  • 仮説2: 決済方法が少ない → ○○Payを追加する
  • 仮説3: カート画面のUIが複雑 → ステップ数を減らす

仮説に優先順位をつけ、A/Bテストで検証する。イベント分析は「問題発見」には強いが、「原因特定」には仮説と検証が必要。

具体例
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例1:レシピアプリが「保存だけして作らない」問題を発見する

MAU 120万人のレシピアプリ。レシピ保存数は月間850万回と好調だが、実際に「作った」ボタン(cook_completed イベント)を押したユーザーは月18万人しかいなかった。保存しただけで満足している、いわゆる「積みレシピ」状態。

シーケンス分析で「保存後に作った」ユーザーの行動を調べると、**72%**が「保存翌日にプッシュ通知を開いた」経路を通っていた。一方、保存しただけのユーザーへの通知は配信されていなかった。

「保存24時間後にリマインド通知を送る」施策をA/Bテストで検証。処理群の調理完了率が**8.2% → 14.7%に改善し、DAUも+6%**増加。「保存」と「調理」という2つのイベントを分けて追跡していたからこそ、この課題が見えた。

例2:BtoB SaaSが「使われない新機能」の原因をイベントで特定する

3ヶ月かけて開発したダッシュボード機能。リリース後1ヶ月のイベントデータを見ると、dashboard_viewed(ダッシュボード表示)は4,200回あったが、dashboard_widget_added(ウィジェット追加)は280回dashboard_shared(共有)はわずか23回だった。

ファネル分析で「表示 → ウィジェット追加 → 共有」の通過率を計算すると、表示から追加への離脱率が93%。セグメント比較で追加に至ったユーザーを分析すると、88%がオンボーディングチュートリアル(tutorial_completed)を完了していた。チュートリアル未完了ユーザーの追加率はわずか2%

チュートリアルを初回表示時に強制ではなく「やってみる」ボタンで誘導する形に変更し、チュートリアル完了率が**15% → 52%に向上。ウィジェット追加率も6.7% → 22%**に改善した。イベントの「深さ」を測ることで、機能のどのレイヤーで止まっているかが一目瞭然になる。

例3:地域スーパーがPOSデータをイベント化して売場改善につなげる

1日の来客数3,500人の地域スーパー。POSデータはあるが「何が売れたか」しかわからず、「お客さんが店内でどう動いているか」は把握できていなかった。

カートに取り付けたビーコンで位置データを収集し、「棚前で10秒以上滞留した」をイベント(shelf_browsed)として定義。商品カテゴリ・滞留時間・その後の購入有無をプロパティに設定した。

2週間のデータで分析した結果、惣菜コーナーでの滞留率は45%と高いのに購入率は12%。シーケンス分析で「惣菜コーナー → レジ」の間に68%のユーザーが「飲料コーナーに立ち寄る」ことがわかり、惣菜の隣に飲料を配置する売場変更を実施。惣菜の購入率が12% → 19%、飲料のついで買いが**+340個/日増加し、客単価が+85円**上昇した。

やりがちな失敗パターン
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  1. タクソノミーなしでイベントを追加し続ける — 開発者がそれぞれの命名で実装すると、add_cartcart_addaddToCartが混在する。分析時にデータを統合できず、蓄積した数ヶ月分のログが使えないという事態に陥る。最初にトラッキングプランを作る手間を惜しまない
  2. イベントを入れすぎてノイズだらけになる — 「とりあえず全部取っておこう」と100種類以上のイベントを入れると、分析の焦点がぼやける。まずは10〜20個のコアイベントに絞り、仮説に基づいて段階的に追加する
  3. 「何が起きたか」の分析で止まる — イベントデータは「事実」を教えてくれるが「理由」は教えてくれない。「離脱率が高い」とわかっても「なぜ離脱するのか」は、ユーザーインタビューやA/Bテストで別途検証する必要がある

まとめ
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イベント分析は、ユーザーの行動を構造化されたイベントログとして記録し、頻度・シーケンス・ファネル・セグメントの4つの視点で分析する手法。すべての土台はイベントタクソノミーの設計にあり、ここを怠ると後からデータを活用できない。分析で見つけた課題は「なぜ」を検証するところまでセットで進めることで、プロダクト改善の確度が格段に上がる。