コンジョイント分析

英語名 Conjoint Analysis
読み方 コンジョイント アナリシス
難易度
所要時間 1〜2週間(調査設計〜分析)
提唱者 ポール・グリーン、V・スリニヴァサン(1970年代にマーケティングに応用)
目次

ひとことで言うと
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商品やサービスの各属性(機能、価格、デザインなど)がどれくらいの価値を持つかを、消費者の選択行動から統計的に算出する手法。「お客さんは価格と機能のどちらを重視しているか?」を数値で答えてくれる。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
属性(Attribute)
商品・サービスを構成する評価の軸のこと。価格・機能・デザイン・ブランドなど。コンジョイント分析では4〜6属性が適正で、多すぎると回答者の負荷が高まる。
水準(Level)
各属性の具体的な選択肢を指す。「価格」属性なら「980円 / 1,980円 / 2,980円」の3水準のように設定する。
部分効用値(Part-Worth Utility)
各水準が消費者の選好にどれだけ寄与するかを数値化したもの。値が大きいほど選ばれやすい。属性ごとの重要度も算出できる。
CBC(Choice-Based Conjoint)
複数の商品案から「どれを買うか」を繰り返し選ぶ最も一般的な調査方式である。実際の購買行動に近い形で重要度を推定できる。

コンジョイント分析の全体像
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コンジョイント分析:属性定義→調査→効用算出→最適設計の4ステップ
1. 属性と水準を定義属性4〜6個 × 水準2〜4個価格・機能・デザイン…実現可能な水準のみ設定2. CBC調査を実施「どれを買う?」を12〜20問回答者200〜300人以上選択行動から間接的に測定3. 部分効用値を算出各水準の貢献度を数値化属性の相対的重要度も判明価格38% 機能28% 修了証20%…4. 最適商品を設計市場シミュレーションセグメント別の最適解利益最大の組み合わせを特定「全部大事」の先へ直接質問では得られない、選択行動に基づく重要度を数値化
コンジョイント分析の進め方フロー
1
属性・水準定義
4〜6属性×2〜4水準
2
CBC調査実施
200人以上に選択型アンケート
3
効用値算出
属性重要度と水準の寄与度
最適商品設計
利益最大の組み合わせを特定

こんな悩みに効く
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  • 新商品の機能・価格・デザインの最適な組み合わせがわからない
  • 「お客さんは何を重視しているか」を直接聞いても「全部大事」と言われて困る
  • 値上げしたいが、どこまでなら許容されるか数値的な根拠がほしい

基本の使い方
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ステップ1: 属性と水準を定義する

分析対象の商品・サービスを構成する**属性(Attribute)と、各属性の水準(Level)**を決める。

例:スマートフォンの新モデル

属性水準1水準2水準3
価格59,800円79,800円99,800円
カメラ画質標準(48MP)高画質(108MP)超高画質(200MP)
バッテリー1日持つ1.5日持つ2日持つ
ブランドブランドAブランドBブランドC

ポイント:

  • 属性は4〜6個が限度(多すぎると回答者の負荷が高い)
  • 水準は各属性2〜4個が目安
  • 実際に実現可能な水準を設定する(非現実的な選択肢は結果の信頼性を下げる)
ステップ2: 調査票を設計してアンケートを実施する

属性の組み合わせから**プロファイル(商品案)**を作り、回答者に評価してもらう。

主な調査方式:

方式特徴推奨場面
CBC(選択型)複数の商品案から「どれを買うか」を繰り返し選ぶ最も一般的。購買行動に近い
評価型各商品案に点数をつける少人数でも実施可能
ACBC(適応型CBC)回答に応じて質問が変化より正確だが設計が複雑

CBCの場合、1問で3〜4個のプロファイルを提示し、12〜20問程度を回答してもらう。回答者数は200〜300人以上が望ましい。

ステップ3: 部分効用値と重要度を算出する

回答データを統計的に分析し、各属性・水準の**部分効用値(Part-Worth Utility)**を算出する。

部分効用値とは:

  • 各水準が「選ばれやすさ」にどれだけ寄与するかを数値化したもの
  • 値が大きいほど、その水準が選ばれやすい

属性の相対的重要度も算出できる:

  • 重要度 = その属性の部分効用値のレンジ ÷ 全属性のレンジ合計
  • 例:価格の重要度40%、カメラ25%、バッテリー20%、ブランド15%

ツール: Sawtooth Software、R(conjoint パッケージ)、Python(statsmodels)など。

ステップ4: シミュレーションで最適な商品を設計する

部分効用値を使って市場シミュレーションを行い、最適な商品を設計する。

  • 「価格79,800円 × 高画質カメラ × 1.5日バッテリー」が最も選好度が高い
  • 価格を59,800円に下げると選好度が+15%だが利益率が下がる
  • 競合商品を入れた場合のシェアシミュレーションも可能

セグメント別分析: 回答者の属性(年齢、性別など)で分割分析すると、ターゲット別の最適商品も見える。

具体例
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例1:オンライン学習サービスが400人のCBC調査で最適プランを設計する

状況: オンライン学習サービスを新規ローンチするにあたり、最適なプラン設計をしたい。

属性と水準:

属性水準1水準2水準3
月額料金980円1,980円2,980円
コンテンツ量100講座300講座500講座
学習形式動画のみ動画+演習問題動画+演習+1on1メンタリング
修了証なしデジタル修了証業界認定資格

CBC調査結果(回答者400人):

属性の重要度:

  • 月額料金: 38%(最重要)
  • 学習形式: 28%
  • 修了証: 20%
  • コンテンツ量: 14%

最適プランのシミュレーション:

  • ベストプラン: 1,980円 × 300講座 × 動画+演習問題 × デジタル修了証 → 選好度スコア最高
  • 意外な発見: コンテンツ量は100→300で効用が大きく上がるが、300→500ではほぼ変わらない(ここに投資しても効果薄)
  • 「業界認定資格」は効用が高いが、実現コストも高い → フェーズ2で検討

セグメント別の違い:

  • 20代: 料金感度が非常に高い。月額980円プランが圧倒的支持
  • 30代管理職: 1on1メンタリングの効用が他セグメントの2倍。高単価プランの需要あり

初年度ARPU想定比18%増。「管理職は1on1メンタリングに2倍の価値を感じている」という発見が、高単価プラン投入の決め手になった。

例2:BtoB SaaS企業が料金プラン改定の価格感度を数値化する

状況: 法人向けプロジェクト管理SaaS(月額利用企業800社)。料金プランの改定を検討中だが、どの機能にいくらの価値を感じているか定量データがない。

属性と水準:

属性水準1水準2水準3
月額料金(1ユーザー)800円1,200円1,800円
ストレージ10GB50GB無制限
外部連携Slack連携のみ5ツール連携API無制限
サポートメールのみチャット+メール専任CS付き

CBC調査結果(回答者250社の担当者):

  • 月額料金の重要度: 32%
  • 外部連携の重要度: 30%
  • サポートの重要度: 25%
  • ストレージの重要度: 13%

発見:

  • 外部連携の重要度が料金とほぼ同等 → API無制限は高単価プランの強力な差別化要因
  • ストレージは10GB→50GBで効用が上がるが、50GB→無制限は微増 → 過剰投資を回避
  • 専任CSの効用は従業員100名以上の企業で突出して高い

外部連携の重要度が料金とほぼ同等という発見がなければ、「全プランにAPI無制限をつける」という過剰投資をしていたかもしれない。属性の価値を数字で分解できるのがコンジョイント分析の強みだ。

例3:地方の旅館が宿泊プランの最適な組み合わせを発見する

状況: 客室数20室の温泉旅館。稼働率65%を改善したいが、「料理をグレードアップするか」「貸切風呂をつけるか」「価格を下げるか」で意見が分かれている。

属性と水準:

属性水準1水準2水準3
1泊2食料金15,000円20,000円25,000円
夕食内容和食コース和食+地酒飲み放題選べる創作コース
温泉大浴場のみ大浴場+貸切風呂1回客室露天風呂付き
チェックイン15:00〜14:00〜(早め)13:00〜+カフェ利用

CBC調査結果(旅行サイトユーザー300人):

  • 料金: 35%
  • 温泉: 30%
  • 夕食: 25%
  • チェックイン: 10%

発見:

  • 温泉の重要度が想定より高い → 貸切風呂は強力な差別化要因(大浴場のみ→貸切追加で効用が大幅上昇)
  • 夕食は「選べる創作コース」が20代に人気だが、50代は「和食+地酒」が圧倒的
  • チェックイン時間の重要度は低い → ここへの投資は費用対効果が低い

最適プラン: 20,000円/和食+地酒飲み放題/貸切風呂1回/15:00チェックイン

稼働率65%→78%、客単価15%増、年間売上**+約1,800万円**。「全部やる」ではなく「温泉と夕食に絞る」判断をデータが裏付けた。

やりがちな失敗パターン
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  1. 属性を欲張りすぎる — 属性が7個以上になると回答者の負荷が高すぎて信頼性が下がる。本当に検証したい属性を4〜6個に絞るのが鉄則
  2. 直接「何が大事ですか?」と聞いてしまう — 直接質問すると「全部大事」「安い方がいい」と当たり前の回答が返る。コンジョイント分析は選択行動から間接的に重要度を推定するのが強み。直接質問との併用は避ける
  3. 分析結果を鵜呑みにする — 統計的に最適な組み合わせが、技術的・コスト的に実現可能とは限らない。実現可能性とのすり合わせを必ず行う
  4. セグメント分析を省略する — 全体平均の最適解が、すべてのターゲットに最適とは限らない。年齢層・利用頻度・企業規模などでセグメント分割して分析し、ターゲット別の最適解も確認する

まとめ
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コンジョイント分析は、商品・サービスの各属性の価値を消費者の選択行動から定量的に算出する手法。「何が重視されているか」を直接質問ではなく統計的に明らかにできるのが最大の強み。新商品の設計、価格設定、ターゲティングなど、マーケティングの中核的な意思決定を科学的に支えてくれる。