ひとことで言うと#
同じ時期に獲得したユーザー群(コホート)ごとに、時間経過に伴う継続率の推移を曲線で描き、「いつ・どのコホートで離脱が起きているか」を可視化する分析手法。
押さえておきたい用語#
- コホート(Cohort)
- 同じ条件で区切ったユーザー群のこと。多くの場合「登録月」「初回購入月」など時期で区切る。1月登録コホート、2月登録コホートのように使う。
- リテンション率(Retention Rate)
- ある時点でまだサービスを利用しているユーザーの割合。「Day 7 リテンション 30%」は初日から7日後に30%が残っていることを意味する。
- リテンションカーブ
- 横軸に経過時間、縦軸にリテンション率をとった曲線グラフ。カーブが平坦化する地点(フラットニングポイント)がプロダクトのコアユーザー層を示す。
- チャーン(Churn)
- サービスを離脱・解約すること。リテンション率の裏返しにあたる指標である。
コホートリテンション曲線の全体像#
こんな悩みに効く#
- サブスクの解約率が高いが、いつ離脱しているかがわからない
- 新機能をリリースしたが継続率に効いているか判断できない
- 獲得チャネルごとにユーザーの質が違う気がするが定量化できていない
基本の使い方#
ユーザーを「いつ獲得したか」で月別コホートに分け、各コホートの経過月数ごとの継続率を表にする。
| M0 | M1 | M2 | M3 | M4 | M5 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1月コホート | 100% | 42% | 30% | 25% | 22% | 21% |
| 2月コホート | 100% | 45% | 34% | 28% | 26% | — |
| 3月コホート | 100% | 50% | 38% | — | — | — |
- 「継続」の定義を明確にする(ログイン?購入?特定機能の利用?)
- Day 1/7/30やWeek 1/2/4など、プロダクトに合った粒度を選ぶ
リテンション表をグラフ化し、曲線の形状から特徴を読み取る。
- 急降下→安定型: 初期離脱が多いが、残ったユーザーは定着する。オンボーディング改善が有効
- 緩やかに減少型: ジワジワ離脱が続く。機能のマンネリ化が原因であることが多い
- フラットニングポイント: カーブが平坦化する地点が「コアユーザー層」の境界線
改善施策の前後でコホートを比較し、リテンションカーブが改善しているかを確認する。
- 同じ経過月数のリテンション率を比較する(例: M3時点で25% → 28%)
- 獲得チャネル別・プラン別にコホートを切ると、ユーザーの質の違いが見える
- 季節要因で変動するため、前年同月コホートとの比較も有効
具体例#
MAU 150万人の料理レシピアプリ。新規ユーザーのDay 7リテンションが 18% と低かった。
月別コホートのリテンションカーブを描くと、Day 1→Day 2の落差が 100% → 35% と最も大きい。初日に「お気に入りレシピ登録」を3件以上行ったユーザーのDay 7リテンションは 52%、0件のユーザーは 11% だった。
オンボーディングで「今週の献立を3つ選んでください」というステップを追加。お気に入り3件以上の割合が 22% → 61% に上がり、3月コホートのDay 7リテンションは 31% に改善した。前月コホートとの差 +13pt が施策効果。
クラウド会計ソフト(契約企業2,500社)。全体の月次チャーン率は 3.5% だが、チャネル別コホートでリテンションカーブに大きな差があった。
| チャネル | M3リテンション | M6リテンション | M12リテンション |
|---|---|---|---|
| 紹介・口コミ | 92% | 88% | 82% |
| コンテンツマーケ | 85% | 76% | 68% |
| リスティング広告 | 72% | 58% | 41% |
リスティング広告経由のM12リテンションは 41% と、紹介経由の半分。広告経由ユーザーは「とりあえず試してみた」層が多く、プロダクトの価値を実感する前に離脱していた。
広告経由ユーザー専用のオンボーディングフローを追加し、初月に「銀行口座連携→自動仕訳体験」まで導くようにした結果、リスティング広告コホートのM6リテンションが58%から 69% に改善。CAC回収期間も14ヶ月から 10ヶ月 に短縮した。
会員数1,200名の地域ジム。毎年6月と12月に退会が集中するが、原因が掴めていなかった。
月別コホートのリテンションカーブを並べると、1月コホート(新年の目標で入会)のM5(6月)時点の離脱率が 45% と突出。他のコホートのM5離脱率は 15〜22% だった。
1月コホートは「正月太り解消」モチベーションで入会するが、5月頃にモチベーションが切れて離脱するパターン。入会後4ヶ月目に「中間目標達成イベント」と「トレーナーとの面談」を設定し、1月コホートのM5リテンションを55%から 68% に改善。年間の退会者数は約80名減少し、月額会費換算で年間 約580万円 の売上維持効果が出た。
やりがちな失敗パターン#
- 全ユーザーの平均継続率だけを見る — コホートを切らずに全体平均だけ追うと、「新規が増えているから継続率が下がって見える」といった混合効果(シンプソンのパラドックス)に騙される
- 「継続」の定義が曖昧 — ログインだけで継続とするか、特定のアクションを条件にするかで数字が大きく変わる。定義を固定してからコホート比較する
- 短期のリテンションだけ見る — Day 7が良くてもM6で崩れることがある。プロダクトの課金サイクルに合わせた期間まで追う
- 改善前後を同じコホートで比較してしまう — 施策を途中で適用したコホートでは効果が正しく測れない。施策適用前のコホートと適用後のコホートを別々に比較する
まとめ#
コホートリテンション曲線は、ユーザーの継続率を「いつ獲得したか」別に追うことで、離脱のタイミングと原因を特定する分析手法。全体平均ではなくコホートごとに見るからこそ、施策の効果が正しく測れる。リテンションカーブが改善していればプロダクトが良くなっている証拠であり、悪化していれば早急に手を打つべきシグナルになる。