コホートリテンション曲線

英語名 Cohort Retention Curve
読み方 コホート リテンション カーブ
難易度
所要時間 1〜2時間
目次

ひとことで言うと
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同じ時期に獲得したユーザー群(コホート)ごとに、時間経過に伴う継続率の推移を曲線で描き、「いつ・どのコホートで離脱が起きているか」を可視化する分析手法。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
コホート(Cohort)
同じ条件で区切ったユーザー群のこと。多くの場合「登録月」「初回購入月」など時期で区切る。1月登録コホート、2月登録コホートのように使う。
リテンション率(Retention Rate)
ある時点でまだサービスを利用しているユーザーの割合。「Day 7 リテンション 30%」は初日から7日後に30%が残っていることを意味する。
リテンションカーブ
横軸に経過時間、縦軸にリテンション率をとった曲線グラフ。カーブが平坦化する地点(フラットニングポイント)がプロダクトのコアユーザー層を示す。
チャーン(Churn)
サービスを離脱・解約すること。リテンション率の裏返しにあたる指標である。

コホートリテンション曲線の全体像
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コホートリテンション曲線:コホート別の継続率推移を可視化する
100%75%50%25%0%リテンション率M0M1M2M3M4M5M6経過月数改善前コホート改善後コホートフラットニングポイントカーブが平坦化=コアユーザー層
コホートリテンション分析の進め方フロー
1
コホート定義
登録月や初回行動でユーザーを区分する
2
リテンション計算
各コホートの経過期間別継続率を算出
3
カーブ比較
コホート間の差分と離脱急落点を分析
施策反映
離脱が多いタイミングに集中して施策を打つ

こんな悩みに効く
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  • サブスクの解約率が高いが、いつ離脱しているかがわからない
  • 新機能をリリースしたが継続率に効いているか判断できない
  • 獲得チャネルごとにユーザーの質が違う気がするが定量化できていない

基本の使い方
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コホートを定義してリテンション表を作る

ユーザーを「いつ獲得したか」で月別コホートに分け、各コホートの経過月数ごとの継続率を表にする。

M0M1M2M3M4M5
1月コホート100%42%30%25%22%21%
2月コホート100%45%34%28%26%
3月コホート100%50%38%
  • 「継続」の定義を明確にする(ログイン?購入?特定機能の利用?)
  • Day 1/7/30やWeek 1/2/4など、プロダクトに合った粒度を選ぶ
カーブを描いてパターンを読む

リテンション表をグラフ化し、曲線の形状から特徴を読み取る。

  • 急降下→安定型: 初期離脱が多いが、残ったユーザーは定着する。オンボーディング改善が有効
  • 緩やかに減少型: ジワジワ離脱が続く。機能のマンネリ化が原因であることが多い
  • フラットニングポイント: カーブが平坦化する地点が「コアユーザー層」の境界線
コホート間の差分から施策効果を読む

改善施策の前後でコホートを比較し、リテンションカーブが改善しているかを確認する。

  • 同じ経過月数のリテンション率を比較する(例: M3時点で25% → 28%)
  • 獲得チャネル別・プラン別にコホートを切ると、ユーザーの質の違いが見える
  • 季節要因で変動するため、前年同月コホートとの比較も有効

具体例
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例1:料理レシピアプリがDay 7リテンションを改善する

MAU 150万人の料理レシピアプリ。新規ユーザーのDay 7リテンションが 18% と低かった。

月別コホートのリテンションカーブを描くと、Day 1→Day 2の落差が 100% → 35% と最も大きい。初日に「お気に入りレシピ登録」を3件以上行ったユーザーのDay 7リテンションは 52%、0件のユーザーは 11% だった。

オンボーディングで「今週の献立を3つ選んでください」というステップを追加。お気に入り3件以上の割合が 22% → 61% に上がり、3月コホートのDay 7リテンションは 31% に改善した。前月コホートとの差 +13pt が施策効果。

例2:BtoB SaaSが獲得チャネル別にリテンションを比較する

クラウド会計ソフト(契約企業2,500社)。全体の月次チャーン率は 3.5% だが、チャネル別コホートでリテンションカーブに大きな差があった。

チャネルM3リテンションM6リテンションM12リテンション
紹介・口コミ92%88%82%
コンテンツマーケ85%76%68%
リスティング広告72%58%41%

リスティング広告経由のM12リテンションは 41% と、紹介経由の半分。広告経由ユーザーは「とりあえず試してみた」層が多く、プロダクトの価値を実感する前に離脱していた。

広告経由ユーザー専用のオンボーディングフローを追加し、初月に「銀行口座連携→自動仕訳体験」まで導くようにした結果、リスティング広告コホートのM6リテンションが58%から 69% に改善。CAC回収期間も14ヶ月から 10ヶ月 に短縮した。

例3:地域密着型ジムが会員の季節離脱パターンを分析する

会員数1,200名の地域ジム。毎年6月と12月に退会が集中するが、原因が掴めていなかった。

月別コホートのリテンションカーブを並べると、1月コホート(新年の目標で入会)のM5(6月)時点の離脱率が 45% と突出。他のコホートのM5離脱率は 15〜22% だった。

1月コホートは「正月太り解消」モチベーションで入会するが、5月頃にモチベーションが切れて離脱するパターン。入会後4ヶ月目に「中間目標達成イベント」と「トレーナーとの面談」を設定し、1月コホートのM5リテンションを55%から 68% に改善。年間の退会者数は約80名減少し、月額会費換算で年間 約580万円 の売上維持効果が出た。

やりがちな失敗パターン
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  1. 全ユーザーの平均継続率だけを見る — コホートを切らずに全体平均だけ追うと、「新規が増えているから継続率が下がって見える」といった混合効果(シンプソンのパラドックス)に騙される
  2. 「継続」の定義が曖昧 — ログインだけで継続とするか、特定のアクションを条件にするかで数字が大きく変わる。定義を固定してからコホート比較する
  3. 短期のリテンションだけ見る — Day 7が良くてもM6で崩れることがある。プロダクトの課金サイクルに合わせた期間まで追う
  4. 改善前後を同じコホートで比較してしまう — 施策を途中で適用したコホートでは効果が正しく測れない。施策適用前のコホートと適用後のコホートを別々に比較する

まとめ
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コホートリテンション曲線は、ユーザーの継続率を「いつ獲得したか」別に追うことで、離脱のタイミングと原因を特定する分析手法。全体平均ではなくコホートごとに見るからこそ、施策の効果が正しく測れる。リテンションカーブが改善していればプロダクトが良くなっている証拠であり、悪化していれば早急に手を打つべきシグナルになる。