3パートアサーション

英語名 Three Part Assertion
読み方 スリー パート アサーション
難易度
所要時間 5〜10分
提唱者 アサーティブコミュニケーション(1970年代の行動療法から発展)
目次

ひとことで言うと
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**「事実(行動の描写)→ 感情(自分への影響)→ 要望(求める変化)」**の3パートで伝えることで、相手を攻撃せず、かつ自分の主張を明確にするコミュニケーション技法。アサーティブネスの基本型として幅広い場面で使える。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
アサーティブ(Assertive)
攻撃的でも受動的でもなく、自分の権利と相手の権利を同時に尊重するコミュニケーション姿勢を指す。
Iメッセージ(I-Message)
「あなたは〜」ではなく「私は〜」を主語にして伝える手法を指す。相手を非難せずに自分の感情を表現できる。
DESC法
Describe・Express・Specify・Consequenceの4ステップで主張するアサーティブの発展形。3パートアサーションはDESCの簡易版にあたる。
パッシブ・アグレッシブ
表面的には従いつつ、裏で抵抗や不満を示す間接的攻撃行動である。アサーティブが不足すると陥りやすい。

3パートアサーションの全体像
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事実→感情→要望の3パートで伝える構造
Part 1: 事実相手の具体的な行動を客観的に描写する「〜のとき」判断・評価を含めないPart 2: 感情自分がどう影響を受けたかを伝える「私は〜と感じた」Iメッセージで表現Part 3: 要望どうしてほしいかを具体的に伝える「〜していただけると」行動レベルで依頼NG例(攻撃的)「あなたはいつも遅刻する。やる気がないんでしょ?」OK例(3パートアサーション)「今週3回始業に間に合わなかった件で、心配しています。原因を一緒に考えたい」
3パートアサーションの実践フロー
1
行動を特定
具体的な事実(日時・回数・場面)を1つ選ぶ
2
影響を言語化
自分への影響を「私は〜」で表現する
3
要望を伝える
具体的な行動レベルで依頼する
相手の反応を聞く
一方的に終わらず、相手の事情や考えを確認する

こんな悩みに効く
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  • 言いたいことがあるのに飲み込んでしまい、後でストレスになる
  • 注意したいが「嫌われたくない」と思って曖昧な表現になる
  • フィードバックが攻撃的になりがちで、相手を傷つけてしまう

基本の使い方
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ステップ1: 事実(行動の描写)を準備する

相手の具体的な行動を、判断や評価を含めずに描写する。

  • 「今週の月・水・金に始業時刻に間に合わなかった」(事実)
  • NG:「あなたはだらしない」(評価)「いつも遅刻する」(一般化)
  • 日時・回数・場面を特定すると反論の余地が減る
ステップ2: 感情(自分への影響)をIメッセージで伝える

その行動が自分にどう影響したかを「私は」を主語にして伝える。

  • 「朝礼の段取りが狂うので、私は焦りを感じています」
  • 「チームの士気に影響が出ないか心配しています」
  • 感情を正直に出すことで「人対人」の対話になる
ステップ3: 要望を具体的に伝える

どうしてほしいかを行動レベルで依頼する。

  • 「明日から始業5分前にはデスクに着くようにしてもらえますか」
  • 曖昧な要望(「気をつけてほしい」)ではなく、行動に落とす
  • 「〜していただけると助かります」と依頼形にすると受け入れやすい
ステップ4: 相手の反応を聞く

3パートを伝えたら、必ず相手に発言の機会を与える。

  • 「何か事情があれば聞かせてもらえますか?」
  • 一方的な通告にしない。対話の扉を開けておく
  • 相手の回答次第で要望の内容を調整する柔軟さを持つ

具体例
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例1:Web制作会社のディレクターがデザイナーに納期遵守を伝える

従業員18名のWeb制作会社。ディレクターがデザイナーに対し、直近3案件で納期を 平均2.5日 オーバーしている件を伝える必要があった。

3パートで伝えた内容:

  • 事実: 「直近のA案件、B案件、C案件で、それぞれ2日、3日、3日ほど納品が遅れました」
  • 感情: 「クライアントへの納期調整で私も余裕がなくなっていて、正直焦りを感じています」
  • 要望: 「納品が遅れそうな場合、2日前の時点で共有してもらえると、クライアントへの事前連絡ができて助かります」

デザイナーは「タスクの見積もりが甘かった。見積もり段階で一緒に確認してほしい」と返答。見積もりの共有ミーティング(15分)を週頭に設けた結果、納期遵守率は 67% → 92% に改善した。

例2:経理部の若手社員が先輩に書類の記入漏れを指摘する

従業員100名のメーカー。経理部の2年目社員が、先輩(勤続8年)が提出する経費精算書の記入漏れが月 4〜5件 あることを伝えたかった。

年次が下のため言い出しにくかったが、3パートで整理して伝えた:

  • 事実: 「先月の経費精算書で、日付と摘要の記入漏れが4件ありました」
  • 感情: 「差し戻しのやりとりで私の月末処理が遅れてしまい、困っています」
  • 要望: 「提出前にチェックリスト(5項目)を確認していただけると助かります」

先輩は「そんなに漏れていたとは知らなかった。チェックリストをもらえれば確認する」と快諾。翌月の記入漏れは ゼロ になった。

年次に関係なく、事実ベースで伝えれば受け入れられやすい。

例3:保育園の主任保育士が保護者にお迎え時間の遵守を伝える

定員80名の認可保育園。特定の保護者が閉園時刻(19時)を月 5〜6回 超過し、職員の残業が発生していた。

主任が3パートで伝えた:

  • 事実: 「今月、19時を過ぎてのお迎えが6回ありました」
  • 感情: 「お子さんが最後の1人になると不安を感じる様子があり、私たちも心配しています」
  • 要望: 「19時に間に合わない日は、16時までにご連絡いただけると、延長保育の手続きがスムーズにできます」

保護者は「仕事の都合で遅れていたが、子どもが不安を感じていたとは知らなかった」と反応。以後、事前連絡が入るようになり、無断超過は月 1回以下 に減少した。

やりがちな失敗パターン
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  1. 事実に評価を混ぜる — 「あなたのいい加減な報告のせいで」は事実ではなく評価。「月曜の報告書に3か所の数値ミスがあった」と客観的に述べる
  2. 感情パートを省略する — 事実と要望だけだと「指示・命令」になる。感情を入れることで「人間同士の対話」に変わる
  3. 要望が曖昧 — 「もうちょっと気をつけて」では何をすればいいかわからない。「提出前にチェックリストを確認する」のように行動レベルで伝える
  4. 相手に発言の機会を与えない — 3パートを伝えて終わりにすると「通告」になる。「何か事情があれば教えてください」と対話の扉を開ける

まとめ
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3パートアサーションは、事実・感情・要望の3つを順に伝えることで、攻撃的にならず自分の主張を明確にする技法だ。ポイントは事実に評価を混ぜないことと、Iメッセージで自分の感情を正直に伝えること。伝えた後は必ず相手の反応を聞き、一方通行にしない。シンプルな型だが、日常のあらゆる「言いにくいこと」に応用できる。