SCR法

英語名 SCR Method (Situation-Complication-Resolution)
読み方 エスシーアール メソッド
難易度
所要時間 15〜30分
提唱者 バーバラ・ミント『考える技術・書く技術』のピラミッド原則から派生
目次

ひとことで言うと
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**状況(Situation)→ 複雑化(Complication)→ 解決(Resolution)**の3部構成で、聴き手が「なぜその結論なのか」を自然に納得できるストーリーを組み立てる技法。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
状況(Situation / シチュエーション)
聴き手と共有できる客観的な事実や背景のこと。「今こうなっています」という出発点を指す。
複雑化(Complication / コンプリケーション)
状況に対して生じた問題・変化・障害である。聴き手の「どうすればいい?」という関心を引き出す。
解決(Resolution / レゾリューション)
複雑化に対する具体的な打ち手や結論を指す。データや根拠とセットで提示する。
トップダウン型
結論を先に述べ、その後に根拠を示すピラミッド構造の伝え方。SCR法はこの構造の導入部に使う手法。

SCR法の全体像
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状況→複雑化→解決の3ステップで聴き手を導く
S:状況聴き手が知っている客観的な事実・背景「今こうなっています」C:複雑化状況に生じた問題・変化・障害「しかしこうなっています」R:解決複雑化への具体的な打ち手「だからこうすべきです」聴き手が「なるほど」と納得する流れ共感 → 危機感 → 解決策 の順で心理的に導くSCR法の3部構成
SCR法の組み立てフロー
1
状況を共有
聴き手が「そうだね」と頷ける事実
2
複雑化を提示
「でも実は…」と問題を浮き彫りに
3
解決策を提案
データ・根拠付きで打ち手を示す
行動を引き出す
聴き手が自然に「やろう」と動く

こんな悩みに効く
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  • 提案書を書いても「で、何が言いたいの?」と言われてしまう
  • データや情報を並べるだけで、説得力のあるストーリーにならない
  • 経営会議で報告しても、意思決定につながらない

基本の使い方
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ステップ1: 状況(Situation)を1〜2文で述べる

聴き手が「そうだよね」と頷ける客観的な事実・背景を簡潔に述べる。

  • 数字を含めると信頼感が増す
  • 聴き手がすでに知っている情報を使う
  • 長くなりすぎないこと(最大2文)

: 「当社のEC売上は前年比120%の12億円で、過去最高を更新しています。」

ステップ2: 複雑化(Complication)で問題を浮き彫りにする

状況に対して**「しかし」「ところが」で転換し、問題・障害・変化を提示する**。

  • 聴き手の「どうすればいい?」を引き出すのが目的
  • データで裏付けると説得力が増す
  • 危機感を持たせるが、煽りすぎない

: 「しかし、顧客獲得コストが前年比180%に上昇し、利益率は8.2%→3.1%に低下しています。」

ステップ3: 解決(Resolution)で具体的な打ち手を示す

複雑化に対する具体的な解決策を、根拠・データとセットで提案する

  • 「だからこうすべきです」と明確に結論を述べる
  • 実行可能なアクションプランを含める
  • 期待される効果を数字で示す

: 「SNS経由の獲得コストはリスティングの1/3です。SNS予算を50%に引き上げれば、利益率を6.5%に回復できます。」

具体例
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例1:飲食チェーンが新メニュー戦略を提案する

S(状況): 「当社の既存店売上は月間平均420万円で、前年同月と同水準を維持しています。」

C(複雑化): 「しかし、原材料費が前年比22%上昇し、主力メニュー15品目のうち8品目で原価率が35%を超えています。このまま価格を据え置くと、来期の営業利益は前年比▲2,400万円の見込みです。」

R(解決): 「原価率25%以下の季節限定メニュー4品を投入し、高原価メニューからの誘導を図ります。テスト店舗3店では限定メニューの注文比率が38%に達し、店舗あたり月間47万円の利益改善が確認されています。」

全店展開すれば年間で約5,600万円の利益改善。数字が揃っていたため、役員会で即日承認された。

例2:SaaS企業がオンボーディング改善を提案する

S(状況): 「新規契約数は月平均85社で、前年比130%と順調に成長しています。」

C(複雑化): 「一方で、契約後90日以内の解約率が**23%に達しています。解約理由の68%**が『使い方がわからなかった』。1社あたりの獲得コスト18万円に対し、LTVが回収できずに離脱するケースが月間約20社発生しています。」

R(解決): 「初期設定ウィザードとステップメールを組み合わせた自動オンボーディングを導入します。パイロットの50社では90日解約率が23%→7%に低下。年間の解約損失を推定4,300万円削減できます。」

開発工数は2人月、初期費用は約300万円。投資回収は2.5ヶ月と試算し、翌スプリントから開発着手が決まった。

例3:地方自治体の観光課が予算申請する

S(状況): 「当市への年間観光客数は32万人で、コロナ前の**85%**まで回復しています。」

C(複雑化): 「ただし、宿泊を伴う観光客は全体の12%にとどまり、1人あたり消費額は日帰り平均3,200円。近隣3市がインバウンド誘致に注力し始め、日帰り客の奪い合いが激化しています。」

R(解決): 「地元酒蔵と温泉を組み合わせた1泊2日の体験プログラムを造成します。モニターツアー参加者50名の1人あたり消費額は18,500円(日帰りの5.8倍)。宿泊比率を12%→20%に引き上げれば、観光消費額は年間約2.8億円増の試算です。」

必要予算は1,500万円。消費額増加分の税収効果を示し、議会で満場一致の承認を得た。

やりがちな失敗パターン
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  1. 状況が長すぎて聴き手が飽きる — 状況パートは1〜2文で十分。背景説明に3分もかけると、聴き手は「で、何が言いたいの?」と感じる。共有済みの前提は省略する
  2. 複雑化が弱く危機感が伝わらない — 「ちょっと気になる点があります」では弱い。具体的な数字で「このままだと○○になる」と示さないと、聴き手は現状維持を選ぶ
  3. 解決策にデータがなく精神論で終わる — 「頑張りましょう」では意思決定者は動かない。期待効果・コスト・実現可能性を数字で示すことで初めて「やろう」と判断できる

まとめ
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SCR法は状況→複雑化→解決のたった3ステップで、聴き手を「共感→危機感→納得」へ自然に導く構成技法。提案書・プレゼン・報告書など、相手に行動を促すあらゆる場面で使える。各パートに具体的な数字を入れることで、説得力は格段に高まる。