ペチャクチャ

英語名 PechaKucha 20x20
読み方 ペチャクチャ トゥエンティ バイ トゥエンティ
難易度
所要時間 6分40秒(本番)+ 準備2〜5時間
提唱者 アストリッド・クレイン、マーク・ダイサム(2003年・東京)
目次

ひとことで言うと
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20枚のスライド × 各20秒の自動送り = 合計6分40秒で完結するプレゼン形式。スライドは自動で切り替わるため、話し手は時間を意識せずテンポよく話を進められる。「ダラダラ話しすぎる」問題を構造的に解決する、東京生まれのプレゼン手法。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
20×20(トゥエンティ バイ トゥエンティ)
ペチャクチャの基本フォーマット。20枚のスライドを各20秒で自動送りすること。合計6分40秒で完結する。
オートアドバンス(自動送り)
スライドが設定秒数で自動的に次へ切り替わる設定のこと。話し手がスライド操作する必要がなく、テンポを強制的に維持できる。
ライトニングトーク(LT)
5〜10分程度の短時間プレゼンテーションを指す。ペチャクチャはLTの代表的フォーマットの1つ。
ビジュアルアンカー
スライドの写真やイラストが話の記憶を定着させる視覚的な手がかりのこと。20秒制限下では文字よりビジュアルが効果的。

ペチャクチャの全体像
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ペチャクチャ20×20:20枚のスライドで6分40秒の物語を構成する
導入(1〜3枚)つかみ・問題提起聞き手の興味を引く60秒本論(4〜16枚)メインコンテンツ1スライド=1メッセージ4分20秒結論(17〜20枚)まとめ・メッセージ行動喚起で締める80秒合計6分40秒の時間配分15%65%(核心部分)20%1スライド20秒 ≒ 日本語80〜100文字 / キーワード暗記で自然に話すペチャクチャの鉄則制約は不自由ではなく、メッセージを研ぎ澄ます道具リハーサル最低3回 / 本番と同条件で練習
ペチャクチャの準備フロー
1
メッセージを1つに
6分40秒で伝える核を決める
2
20枚を構成
導入3枚・本論13枚・結論4枚
3
原稿を作成
1枚80〜100文字のスクリプト
リハーサル3回以上
自動送りで通し練習

こんな悩みに効く
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  • プレゼンがいつも時間オーバーになる
  • 情報を詰め込みすぎて、聞き手が疲れてしまう
  • テンポのいいプレゼンに挑戦したいが、方法がわからない

基本の使い方
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ステップ1: メッセージを1つに絞る

6分40秒で伝えられる内容は限られているので、核となるメッセージを1つ決める

  • 「この6分40秒で聞き手に何を持ち帰ってもらいたいか?」を明確にする
  • サブトピックは3〜4つが上限
  • 「あれもこれも」は禁物。捨てる勇気が必要

ポイント: 制約があるからこそ、本当に伝えたいことが研ぎ澄まされる。

ステップ2: 20枚のスライドを構成する

20枚を起承転結やストーリーの流れに沿って割り当てる。

  • 導入(1〜3枚): つかみ・問題提起
  • 本論(4〜16枚): メインの内容
  • 結論(17〜20枚): まとめ・メッセージ
  • 1スライド = 1メッセージ。テキストは最小限

ポイント: 20秒で語れる量を逆算してスライドを設計する。

ステップ3: 1スライド20秒の原稿を作る

各スライドに対して20秒で話せる分量のスクリプトを書く。

  • 20秒 ≒ 日本語で約80〜100文字
  • 文章を書いてから声に出して時間を計る
  • 余裕を持たせて15〜18秒分で設計すると安心

ポイント: 原稿を丸暗記するのではなく、キーワードだけ覚えて自然に話す。

ステップ4: リハーサルを繰り返す

自動送りの制約のもとで最低3回はリハーサルする。

  • スライドを自動再生(20秒間隔)にして通し練習する
  • 時間内に収まらないスライドは内容を削る
  • スライドの切り替わりに合わせて自然に話を移行する練習をする

ポイント: リハーサルなしでは確実に失敗する。本番と同じ条件で練習することが最重要。

具体例
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例1:IT企業の社内LT大会でAI議事録ツールを紹介する

状況: 従業員150名のIT企業。エンジニアの田中さんが月例LT大会で、自主導入したAI議事録ツールの成果を共有する。

20枚の構成:

  • スライド1-2: 「毎日の議事録作成、面倒じゃないですか?」(問題提起 + 社内アンケート結果:83%が「面倒」と回答)
  • スライド3-5: 「先月、AI議事録ツールXを導入しました」(ツール概要 + 画面キャプチャ + 費用:月額5,000円/チーム)
  • スライド6-12: 「実際に使ってみた結果…」(Before:議事録作成に平均45分 → After:確認・修正に10分 / チームの反応 / 精度検証データ)
  • スライド13-17: 「こんな使い方もできます」(英語会議の自動翻訳 / タスク自動抽出 / ナレッジベース化)
  • スライド18-20: 「議事録にかける時間を、もっとクリエイティブな仕事に使いませんか?」(ROI:月35時間×12名=420時間削減 / 導入QRコード)
指標導入前導入1ヶ月後
議事録作成時間平均45分/回平均10分/回(78%削減)
議事録の共有率62%98%
「聞いていない」問題月8件月1件

6分40秒で「課題→解決→数字→行動」を伝えきり、翌月に他の5チームが同ツールを導入。制約がメッセージを研ぎ澄ました好例。

例2:デザインスクールの卒業制作プレゼンで使う

状況: UI/UXデザインスクールの卒業発表会。受講生の鈴木さん(28歳・元営業職)が、6ヶ月間の成果をペチャクチャ形式で50名の聴衆に発表する。

20枚の設計:

  • スライド1: 半年前の自分(スーツ姿)と今の自分(Figma操作中)の対比写真
  • スライド2-4: 元営業職がデザインに出会った経緯。「営業資料が読まれない」→「デザインの力で変えたい」
  • スライド5-8: 課題設定。地元の和菓子店(創業68年)のECサイトUX改善
  • スライド9-14: デザインプロセス。ユーザーインタビュー8名 → ペルソナ → ワイヤーフレーム → プロトタイプ → ユーザーテスト3回
  • スライド15-18: Before/After。カート到達率32%→57%、平均滞在時間1.2分→3.8分
  • スライド19-20: 「デザインは誰かの"わかりにくい"を"わかる"に変える仕事です」

20枚すべてにビジュアルを使い、テキストはキーワードのみ。6分40秒で「なぜデザインか→何をしたか→どう変わったか」の物語が完結し、審査員賞を受賞。

例3:地方の観光協会がカンファレンスで街の魅力を発信する

状況: 人口3万人の地方温泉街。観光協会の山本さんが、東京で開催された地域活性化カンファレンス(来場者400名)でペチャクチャ形式のピッチに登壇。

20枚のストーリー:

  • スライド1-3: 温泉街の全景 →「10年前、商店街の空き店舗率は42%でした」→ 閉じたシャッターの写真
  • スライド4-7: 転機。若手3人が「温泉×リモートワーク」の実験開始。Wi-Fi完備の足湯コワーキングを1軒オープン
  • スライド8-13: 変化のプロセス。IT企業のワーケーション誘致 → SNSで話題に → メディア取材42件 → 移住問い合わせ月3件→月28件
  • スライド14-17: 数字。空き店舗率42%→18%、年間宿泊者数2.1万人→4.8万人、新規出店17店舗
  • スライド18-20: 「人口3万人の街でも、1つのアイデアで流れは変わる」+ 視察ツアー案内

写真主体の20枚が「衰退→挑戦→復活」の物語を語り、プレゼン後に12自治体から視察依頼。ペチャクチャの制約が「語りすぎない美しさ」を生み、聴衆の想像力を刺激した。

やりがちな失敗パターン
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  1. 1枚に詰め込みすぎる — 20秒しかないのにスライドに文字がびっしり。聞き手は読むか聞くかの二者択一になり、どちらも頭に入らない。1スライド1メッセージを徹底する
  2. リハーサル不足 — 「なんとかなるだろう」で臨むと、スライドが勝手に進んで話が追いつかないパニックに陥る。自動送りのプレゼンは通常の3倍リハーサルが必要
  3. 20秒を均等に使おうとする — すべてのスライドで同じ密度にする必要はない。「間」を取るスライドや、写真だけで語るスライドがあってもいい
  4. 通常プレゼンの圧縮版にしてしまう — 30分のプレゼンを無理やり6分40秒に縮めると情報過多で崩壊する。最初から「6分40秒で伝える1つのメッセージ」を設計する

まとめ
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ペチャクチャは「20枚×20秒」という明快な制約で、プレゼンの冗長さを構造的に排除する手法。制約は不自由ではなく、メッセージを研ぎ澄ます道具。次のLTや社内共有会で、ぜひ6分40秒のチャレンジをしてみよう。