1-3-1ルール

英語名 1-3-1 Rule
読み方 ワン スリー ワン ルール
難易度
所要時間 10〜15分
提唱者 コンサルティング業界の報告スタイルから発展した実務慣行
目次

ひとことで言うと
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上司や意思決定者に相談するとき、1つの問題・3つの選択肢・1つの推薦をセットで持っていく報告フレームワーク。「どうしましょう?」ではなく「こうすべきだと思います」と伝えることで、意思決定のスピードが劇的に上がる。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
1(One Problem)
報告する問題を1つに絞ること。複数の問題を一度に持ち込むと、議論が散漫になる。
3(Three Options)
問題に対する3つの選択肢を提示すること。1つでは選べず、5つでは多すぎる。3つが最も判断しやすい。
1(One Recommendation)
3つの中から自分が推薦する1つを明示すること。推薦理由を添えることで、報告者の当事者意識が伝わる。
意思決定コスト
判断に必要な情報収集・比較検討・リスク評価にかかる時間と労力を指す。1-3-1ルールはこのコストを報告者側が引き受ける仕組みである。

1-3-1ルールの全体像
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1つの問題→3つの選択肢→1つの推薦で意思決定を加速する
1:問題解決すべき問題を1つに絞る選択肢A概要・メリット・デメリットコスト・期間を明記例: 現状維持選択肢B ★推薦概要・メリット・デメリットコスト・期間を明記例: 段階的に改善選択肢C概要・メリット・デメリットコスト・期間を明記例: 全面刷新1:推薦「Bを推薦します。理由は○○です」
1-3-1ルールの報告フロー
1
問題を特定
解決すべき問題を1つに絞る
2
選択肢を3つ出す
メリット・デメリット・コストを整理
3
推薦を1つ選ぶ
自分の判断と理由を明示する
即断即決
上司はYes/No/修正で即判断できる

こんな悩みに効く
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  • 「で、どうしたいの?」と上司に毎回聞き返される
  • 相談に行くと「選択肢は?」と言われて準備不足を痛感する
  • 報告・相談に時間がかかりすぎて、上司の予定が取れない

基本の使い方
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ステップ1: 問題を1つに絞る

報告したい問題を1つだけに絞る。

  • 「Aの件とBの件と…」と複数持ち込まない
  • 問題を1文で言い切れるレベルまで明確にする
  • 「〇〇が△△になっている」と事実ベースで述べる

: 「採用サイトのエントリー完了率が先月比40%低下しています。」

ステップ2: 選択肢を3つ用意する

それぞれの選択肢に概要・メリット・デメリット・コスト・期間を添える。

  • 選択肢A: 現状維持 or 最小限の対応(ベースライン)
  • 選択肢B: バランス型の改善策(多くの場合ここが推薦になる)
  • 選択肢C: 大胆な変革案(リスクは高いがリターンも大きい)

3つの選択肢がバラバラの方向を向いていること。似た選択肢を3つ並べても意味がない。

ステップ3: 推薦を1つ選び、理由を述べる

私はBを推薦します。理由は○○です」と明確に述べる。

  • 推薦理由は2〜3文で簡潔に
  • データや根拠があれば添える
  • 「自分ならこうする」という当事者意識を示す

上司は「承認」「別の選択肢を選ぶ」「追加情報を求める」のいずれかで即判断できる。

具体例
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例1:マーケティング担当がキャンペーン予算の再配分を相談する

問題(1): 「夏季キャンペーンの残り予算300万円のうち、リスティング広告のCPAが12,000円に高騰し、目標の8,000円を大幅に超えています。」

選択肢(3):

  • A: 現状維持 — リスティング継続。メリット: 運用の手間なし。デメリット: CPA高騰のまま残り予算を消化し、獲得件数は目標の**60%**にとどまる見込み
  • B: SNS広告にシフト — 残り予算の70%(210万円)をSNS広告に移行。SNSのCPAは現在4,500円。メリット: 獲得件数を目標の**95%**まで回復可能。デメリット: クリエイティブ制作に1週間必要
  • C: インフルエンサー施策に全振り — 残り300万円をインフルエンサー5名に投下。メリット: バズれば目標の**150%**も狙える。デメリット: 成果の不確実性が高く、最悪ゼロもあり得る

推薦(1): 「Bを推薦します。SNS広告のCPAは過去3ヶ月で安定しており、95%の目標達成が見込めます。クリエイティブは既存素材の転用で3日に短縮可能です。」

部長は5分で承認。「いい相談の仕方だね」とフィードバックまでもらえた。

例2:エンジニアがテスト自動化ツールの選定を報告する

問題(1): 「手動テストに月80時間(2人分)を費やしており、リリースサイクルのボトルネックになっています。」

選択肢(3):

  • A: Selenium(OSS) — 初期費用0円、構築に3週間。メリット: コスト最小。デメリット: メンテナンスコストが高く、チームに経験者がいない
  • B: Playwright + CI連携 — 初期費用0円、構築に2週間。メリット: モダンなAPIで学習コストが低く、CI/CDとの統合が容易。デメリット: E2Eテストのフレーキー率の管理が必要
  • C: Autify(SaaS) — 月額15万円、導入に3日。メリット: ノーコードで非エンジニアも作成可能。デメリット: 年間180万円のランニングコスト

推薦(1): 「Bを推薦します。月80時間の手動テストを月15時間に削減でき、年間コスト削減効果は人件費換算で約390万円。OSSなのでランニングコストもゼロです。」

CTOは「Bで進めて。2週間後にデモを見せて」と即決。選択肢が揃っていたから判断が速かった。

例3:旅館の若女将が客室リノベーションを経営者に提案する

問題(1): 「和室10部屋のうち、築30年以上の5部屋の稼働率が**38%で、全体の平均72%**を大きく下回っています。」

選択肢(3):

  • A: 現状維持+値下げ — 対象5部屋の宿泊料を20%値下げ。メリット: 投資ゼロ。デメリット: 値下げしても稼働率は50%程度と試算。年間売上は**▲180万円**
  • B: 2部屋をモダン和室にリノベーション — 投資800万円。メリット: リノベ済み他旅館の事例では稼働率85%以上、単価も15%アップ。デメリット: 工事期間2ヶ月間は2部屋が使えない
  • C: 5部屋すべてをリノベーション — 投資2,200万円。メリット: 旅館全体のブランド刷新。デメリット: 投資回収に4年以上、資金繰りへの影響大

推薦(1): 「Bを推薦します。まず2部屋で効果を検証し、稼働率80%以上を確認できたら残り3部屋に展開する段階的なアプローチです。投資回収は14ヶ月の見込みです。」

先代の経営者は「全部やるか、やらないか」の二択で迷っていたが、段階的アプローチという第三の道を示したことで前に進めた。

やりがちな失敗パターン
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  1. 推薦なしで「どれがいいですか?」と聞く — 選択肢を並べるだけでは丸投げと同じ。「私はBを推薦します」と言い切ることで、報告者の当事者意識と判断力が伝わる
  2. 選択肢が似すぎている — 「500万円案」「520万円案」「550万円案」では比較にならない。「現状維持」「中間策」「大胆策」のように振れ幅を持たせる
  3. 問題を複数持ち込む — 「AとBとCの件ですが…」と一度に3つ持ち込むと、どれも中途半端になる。1回の相談で1つの問題に絞り、優先度の高いものから順に片付ける

まとめ
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1-3-1ルールは1つの問題・3つの選択肢・1つの推薦で報告することで、上司の意思決定コストを劇的に下げるフレームワーク。「どうしましょう?」を「こうすべきだと思います」に変えるだけで、報告者の評価も上がり、組織の意思決定スピードも加速する。準備に10〜15分かけるだけで、相談の質が根本から変わる。