3つの円(パッション×スキル×市場)

英語名 Three Circles (Passion × Skill × Market)
読み方 スリー サークルズ
難易度
所要時間 60〜90分
提唱者 ジム・コリンズの「ハリネズミの概念」を個人に応用
目次

ひとことで言うと
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**情熱(Passion)・スキル(Skill)・市場(Market)**の3つの円が重なる領域こそが、自分にとってのキャリアの最適解。「やりたいこと」だけでは食えない、「できること」だけでは続かない、「稼げること」だけでは満たされない。3つが重なるスイートスポットを見つけることで、充実と収入を両立するキャリアが実現する。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
スイートスポット(Sweet Spot)
3つの円が重なるキャリアの最適解のこと。情熱・スキル・市場のすべてが満たされる領域。
ハリネズミの概念(Hedgehog Concept)
ジム・コリンズが提唱した、「情熱」「世界一になれること」「経済的原動力」 の3つが交わる領域に集中すべきという経営概念。3つの円の原型。
情熱テスト(Passion Test)
「お金をもらえなくてもやるか?」「休日でもやってしまうか?」といった問いで本物の情熱を見極める方法である。
市場価値(Market Value)
あるスキルや経験に対して市場が支払う対価の大きさのこと。求人数、年収相場、成長率などで判断する。
ギャップ戦略(Gap Strategy)
3つが完全に重ならない場合に、不足する1つの要素を戦略的に補うアプローチを指す。

3つの円の全体像
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情熱・スキル・市場の3つの円が重なるスイートスポットを見つける
Passion情熱SkillスキルMarket市場好きでできるが食えない→趣味好きで需要あるがスキル不足できて稼げるが情熱がないSweetSpot3つが重なる領域 = キャリアの最適解
3つの円によるキャリア分析フロー
1
情熱の円
心から楽しめることを書き出す
2
スキルの円
他者より上手にできることを整理
3
市場の円
需要と報酬がある領域を調査
重なりを分析
スイートスポットを特定し行動へ

こんな悩みに効く
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  • やりたいことが見つからない、または多すぎて絞れない
  • 得意なことと好きなことが一致しない
  • 今のスキルに市場価値があるのかわからない

基本の使い方
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ステップ1: Passion(情熱)の円を描く

自分が心から楽しいと感じること、時間を忘れて没頭できることを書き出す。

  • 休日でもやってしまうこと
  • お金をもらえなくてもやりたいこと
  • 話し始めると止まらないテーマ
  • 子供の頃から好きだったこと

ポイント: 「やりたいこと」と「やるべきだと思っていること」を区別する。SNSで見た誰かの理想ではなく、自分の内側から湧く情熱を探す。

ステップ2: Skill(スキル)の円を描く

自分が他者より上手にできること、実績のあるスキルを書き出す。

  • 仕事で成果を出してきたスキル
  • 周囲から頼られること、よく相談されること
  • 意識しなくても自然にできること(無自覚な強み)
  • 資格、専門知識、経験年数

ポイント: 自分では「普通」と思っていることが、他者から見ると強みであることが多い。第三者のフィードバックが有効。

ステップ3: Market(市場)の円を描く

今の市場で求められていること、お金が動いている領域を調査する。

  • 求人サイトで需要が多いスキル・職種
  • 成長産業、伸びている市場
  • 自分のスキルセットに対する相場年収
  • 5年後に需要が増えそうな領域

ポイント: 「今」の市場だけでなく「3〜5年後」の市場も考える。今は小さくても急成長する領域は狙い目。

ステップ4: 3つの円の重なりを分析する

3つの円を重ねて、各領域を分析する。

  • 情熱 × スキル(市場なし): 趣味としては楽しいが、食べていけない → 副業やボランティアに
  • スキル × 市場(情熱なし): 稼げるが続かない → 短期的には活用、長期的には情熱を育てる
  • 情熱 × 市場(スキルなし): やりたくて需要もあるがスキルが足りない → 学習計画を立てて投資する
  • 3つが重なる領域: キャリアの最適解。ここに集中する

ポイント: 3つが完璧に重なることは稀。「2つが重なっていて、残り1つを伸ばせる」領域が現実的なキャリア戦略になる。

具体例
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例1:営業マネージャー・山田さん(36歳)がセールスイネーブルメントの道を見つける

Passion(情熱): 人の成長を支援すること、教えること、組織づくり、テクノロジーへの興味

Skill(スキル): 法人営業10年の経験、チームマネジメント、SaaS業界の知識、顧客折衝力

Market(市場): SaaS業界のセールスイネーブルメント需要が急増中、営業DXのコンサルニーズも拡大

分析結果:

  • 情熱×スキル: 営業チームの育成(楽しくてできる)→ 趣味レベルでは終わらない
  • スキル×市場: SaaS営業マネージャー(需要はあるが、管理業務に情熱がない)
  • 情熱×市場: HRテック、EdTech(興味はあるがスキルがない)
  • 3つの重なり: SaaS企業のセールスイネーブルメント(営業育成の仕組み作り)

アクションプラン:

  1. 現職でセールスイネーブルメントの仕組み構築を自ら提案
  2. セールスイネーブルメントの資格・コミュニティに参加
  3. 2年以内にセールスイネーブルメント専任ポジションに移行

結果: 「なんとなく営業マネージャーを続ける」から「セールスイネーブルメントのプロフェッショナル」という明確なキャリア方向が定まった。

例2:Webデザイナー・鈴木さん(29歳)が「情熱×市場」のギャップをスキルで埋める

Passion(情熱): アクセシビリティ(障害者がWebを使いやすくすること)。自身の祖母が視覚障害を持ち、Webが使えない経験がきっかけ。

Skill(スキル): Webデザイン5年、Figma・CSS・HTMLの実装力、ユーザーリサーチの経験

Market(市場): 障害者差別解消法の改正でアクセシビリティ対応の需要が急増。対応できる人材は圧倒的に不足。

分析結果:

  • 情熱 × 市場は重なっている。不足はスキル(アクセシビリティの専門知識)
  • ギャップ戦略: WCAG(アクセシビリティガイドライン)の専門知識を6ヶ月で習得

アクションプラン:

  1. WCAG 2.2を体系的に学習し、社内の既存サイトの監査を実施
  2. アクセシビリティ関連の勉強会に月2回参加
  3. ブログでアクセシビリティの実践知を発信

結果: 6ヶ月後、社内でアクセシビリティの第一人者に。外部からのコンサル依頼が入り始め、1年後にはアクセシビリティ専門のフリーランスとして独立。月収は会社員時代の1.4倍に。 「情熱のある領域のスキルギャップを埋めるのが最も効率が良い」を体現。

例3:会計士・田中さん(40歳)が「スキル×市場」に情熱を加えてキャリアを再設計する

Passion(情熱): 正直なところ、会計の仕事自体にはそこまでの情熱はない。でも「スタートアップを応援すること」「経営者と一緒に事業を作ること」にはワクワクする。

Skill(スキル): 公認会計士資格、監査法人15年の経験、IPO支援の実績、財務モデリング

Market(市場): スタートアップのCFO・財務顧問の需要が拡大中。しかし会計知識だけでなく「事業理解」も求められる。

分析結果:

  • スキル×市場は盤石。不足は「スタートアップの事業理解」と「情熱との接続」
  • 情熱の再発見: 「会計」そのものではなく「経営者を支援すること」が情熱

アクションプラン:

  1. スタートアップ2社で週1日の財務顧問を開始(副業として)
  2. スタートアップのピッチイベントに月1回参加し、事業理解を深める
  3. 1年以内にスタートアップのCFOポジションへの転身を検討

結果: 副業で2社のスタートアップを支援する中で、「経営者の右腕として数字で事業を支える」ことに強い充実感を実感。1年半後、シリーズBのスタートアップにCFOとして参画。年収は監査法人時代より20%ダウンだが、「毎日が楽しい」と断言。

やりがちな失敗パターン
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  1. 情熱だけで突っ走る — 「好きを仕事に」は素晴らしいが、市場性を無視すると食べていけない。情熱を軸にしつつ、市場が存在する形を探す
  2. 市場価値だけで選ぶ — 年収が高い職種に飛びついても、情熱がなければ3年で燃え尽きる。短期的な年収アップより長期的なキャリア満足度を重視する
  3. 現在のスキルだけで判断する — 「今できること」に固執すると、可能性が狭まる。「1〜2年で身につけられるスキル」も含めて考える
  4. 3つの円を一度描いて終わりにする — 市場も情熱もスキルも時間とともに変わる。少なくとも年1回は3つの円を描き直し、キャリアの方向性を再確認する

まとめ
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3つの円は、情熱・スキル・市場の重なりからキャリアの最適解を見つけるフレームワーク。1つの円だけでキャリアを選ぶと、どこかで行き詰まる。3つが重なるスイートスポットを見つけ、足りない要素を戦略的に補うことで、「やりたくて、できて、稼げる」キャリアが実現する。