ひとことで言うと#
キャリアの成長を「はしご(ラダー)」のように上に登るだけでなく、「格子(ラティス)」のように横や斜めにも動けるものとして設計する考え方。昇進だけが成長ではないという前提に立ち、多様なキャリアパスを認める。
押さえておきたい用語#
- キャリアラダー(Career Ladder)
- 役職を1段ずつ昇っていく従来型の直線的なキャリアモデルのこと。上か下しかない。
- キャリアラティス(Career Lattice)
- 上下だけでなく横移動や斜め移動も含む格子状のキャリアモデルを指す。柔軟性が高い。
- ラテラルムーブ(Lateral Move)
- 同じ職位レベルのまま異なる部署や職種に横移動すること。スキルの幅を広げる手段。
- ダイアゴナルムーブ
- 部署を変えながら少し上の職位に移動する斜めの異動。専門性と視野の両方を同時に広げられる。
キャリアラティスモデルの全体像#
こんな悩みに効く#
- 管理職になりたくないが、このままだとキャリアが行き詰まる
- 専門性を深めたいが、社内に昇進以外のキャリアパスがない
- 社内異動を「左遷」と捉えてしまい、横移動に踏み出せない
基本の使い方#
具体例#
SIer勤務8年のSE(32歳)。技術力は高いが「このまま課長になっても技術の現場から離れるだけ」と悩んでいた。
ラティスモデルで選択肢を整理。上(課長)、横(営業企画)、斜め(新規事業の技術リード)の3方向を比較した結果、営業企画への横移動を選択。
技術の知見を活かした提案活動で、初年度から受注率を 38% → 52% に改善。2年後に「技術が分かる営業マネージャー」として新設ポジションに昇進。結果的にラダー型では到達できなかったユニークな役職に就いた。
従業員1,200名の製造業。中堅社員の離職率が 年12% と高く、主な退職理由は「成長の停滞感」だった。
昇進ポストは限られており、ラダー型では全員に成長機会を提供できない。人事部がラティスモデルを導入し、横移動(部署間ローテーション)と斜め移動(部門横断プロジェクトでの抜擢)を公式なキャリアパスとして定義した。
制度導入から 18ヶ月 で横移動を経験した社員は 87名。中堅層の離職率は 12% → 7% に改善し、社内アンケートの「成長実感」スコアは 3.1 → 4.0(5点満点)に向上。
保育士歴10年(34歳)。現場の保育スキルは高いが、園長への昇進は順番待ちで 10年以上 かかる見込みだった。
ラティスモデルで斜めの選択肢を探索。法人本部の「保育プログラム開発」ポジションに横移動し、全園共通のカリキュラム設計を2年間担当した。
本部での経験で経営視点とプログラム設計力を身につけた後、新設園の園長として抜擢。従来のラダー型では15年かかるところを、斜めルートで 5年 で園長に到達した。
やりがちな失敗パターン#
- 横移動を「回り道」と見なす — 横移動で得た多様な経験は、将来の昇進やキャリアチェンジで強力な武器になる。短期的には遠回りに見えても長期で効く。
- すべての方向に同時に動こうとする — 1回の移動は1方向に集中する。複数方向を追うと中途半端になる。
- 組織の制度に縛られる — 公式な異動制度がなくても、社内プロジェクトへの参加や兼務で実質的な横移動は可能。制度がないなら自分で作る。
- スキルギャップを無視して移動する — 横移動先で必要なスキルを事前に把握し、最低限の準備をしてから動く。丸腰で飛び込むと信頼を失う。
まとめ#
キャリアは「はしご」のように上に登るだけのものではない。横移動で視野を広げ、斜め移動で専門性とマネジメントを両立し、時には意図的に一段下がって新しい領域に挑戦する。ラティスモデルの視点を持つことで、昇進以外の成長機会が見えてくる。