ひとことで言うと#
キャリアには年齢や経験に応じた「発達課題」がある。探索期・確立期・維持期・下降期といった段階ごとに取り組むべきテーマを理解し、今の自分に合った行動を選ぶための枠組み。
押さえておきたい用語#
- 探索期(Exploration)
- キャリアの方向性を模索する段階。自己分析と職業体験を通じて自分に合う仕事を探す時期にあたる。
- 確立期(Establishment)
- 選んだ領域で実績を積み、専門性とポジションを固める段階のこと。最もエネルギーを使う時期。
- 維持期(Maintenance)
- 築いた地位やスキルを維持しつつ、次世代の育成や新たな挑戦に向かう段階を指す。
- 下降期(Disengagement)
- 第一線から徐々に退き、知識の継承や引退後の人生設計に重心を移す段階。
- 発達課題
- 各段階で達成すべき心理的・社会的なテーマ。未達成だと次の段階への移行が困難になる。
キャリア発達段階モデルの全体像#
こんな悩みに効く#
- 同年代と比べて自分のキャリアが遅れている気がする
- 40代になって急にモチベーションが下がった理由が分からない
- 年齢に応じて何に注力すべきか、指針が欲しい
基本の使い方#
具体例#
新卒で入った商社を1年半で退職した24歳。「やりたいことが分からない」と悩んでいた。
キャリア発達段階モデルで自分は「探索期」にいると理解。この段階の課題は「方向性を見つけること」であり、1社目を辞めたことは失敗ではなく探索のプロセスと位置づけた。
3ヶ月で5つの業界の人に情報インタビューを実施し、3つの短期インターンを体験。最終的にIT企業のカスタマーサクセス職に転職。「1社目は探索のデータ収集だった」と振り返れるようになり、2社目では入社 8ヶ月 でチーム内MVPを獲得した。
消費財メーカーのマーケティング部門に10年勤務する35歳。「このまま同じことを続けていいのか」と漠然とした不安を抱えていた。
発達段階モデルでは、30代半ばは確立期の後半。この段階の課題は「専門性を武器に影響力を拡大すること」。本人は「専門性はあるが社外に知られていない」ことがボトルネックだと気づいた。
業界メディアへの寄稿を月1回開始し、年間 12本 の記事を公開。寄稿をきっかけにカンファレンス登壇の依頼が 3件 入り、社内での評価も「部門のエース」から「業界に顔が利く人材」に変わった。年収は2年で 680万円 → 820万円 に上昇。
製造業の営業部長(53歳)。30年間数字を追い続けてきたが、後輩に抜かれ始め「自分の役割は終わった」と感じていた。
発達段階モデルで自身が維持期にいると認識。この段階の課題は「次世代への継承」と「新たな挑戦」。数字を追うことから、部下の育成に重心をシフトした。
具体的には、若手営業 8名 に対して月1回の1on1を開始し、自身の 30年分の顧客対応ノウハウ を体系化した社内ナレッジベースを構築。部門全体の新規顧客獲得数が前年比 22% 増加し、本人も「数字を出す人」から「数字を出せる人を育てる人」へと役割を転換できた。
やりがちな失敗パターン#
- 年齢で段階を固定的に判断する — 30代で2度目の探索期に入る人もいれば、20代で確立期に入る人もいる。実際のキャリア経験で判断する。
- 前の段階の課題を未消化のまま次に進む — 探索が不十分なまま確立期に入ると「本当にこれでよかったのか」と悩み続ける。必要なら遡って取り組む。
- 維持期を「停滞」と捉える — 維持期は守りの時期ではなく、影響力を活かして新しい価値を生む段階。受動的になると本当の停滞が始まる。
- 下降期をネガティブに捉える — 第一線を退くことは終わりではなく、知識の継承やメンタリングという形で組織に貢献し続ける新しい始まり。
まとめ#
キャリアには春夏秋冬のような段階がある。自分が今どの季節にいるかを知ることで、焦りや停滞感の正体が見えてくる。各段階の発達課題に正面から向き合い、次の段階への移行をなだらかにすることが、長いキャリアを健やかに歩む鍵になる。